第2話・開幕
※注意事項
このページには挿絵があります。ただのトーナメント表ですが、念のためにお伝えしておきます。
格闘技場は、一般席と特等席で区切られている。一般席の定員はオーバーしており、通路に立って開始を待ちわびている者もいる。そのほとんどが不合格になった受験生だ。
人害認定の4種と戦うことはあっても、今の時代、混血者同士が戦うなんてことはない。そのため、この機会を逃すまいとしているのだ。社会勉強のようなものだろう。
最上階には王家と国帝、各国の総司令官の姿がある。彼らはここから観戦する。
そんな特別ルームに、大人に紛れて子どもが1人いる。満月と、今にも消えてしまいそうな薄い雲を柄とした着物に、頭には月光花の髪飾り。漆黒の髪は頭部でお団子に束ねられている。
彼女がマイクを握った。
「大変長らくお待たせいたしました。司会進行を勤めさせて頂きます、天野ツキヒメです」
彼女の声が格闘技場全体へ広がると、がやがやと騒がしかった民衆が静かになった。モニターに映るツキヒメの整った顔。彼女の黒目は会場を見渡すようにゆっくりと左右に動いている。
天野ツキヒメと聞いただけで思い起こす、月夜の民惨殺事件。悲しみと、好奇心とが混じった複雑な視線が彼女に注ぐ。
各国の国帝は感心の声を漏らした。真っ直ぐに伸びた背筋、堂々とした声。国と民を失っても彼女は天野家の人間だ。人々の視線など、生まれ持った屈強な精神で跳ね返している。
「まず始めに、本日の試験のために、遠路からご足労いただき誠にありがとうございます。オウガ様、そして各国の国帝からの挨拶は省略とさせて頂きます。では、早速始めていきましょう」
モニターにトーナメント表が公開される。第一試合の組み合わせを知ると瞬く間に騒がしくなった。
「一試合目から旧家同士かよ。こりゃ見物だな」
「五桐ハルイチといえば、任務遂行率100%で有名だ。俺は東昇の勝利に賭ける」
「北闇だって有名じゃない。確か、現長の先代たちは」「やめろ、その話しはタブーだ。王家も来てんだぞ……」
「そ、そうね。ごめんなさい。赤坂班は2人いないようだけど、どうしたのかしら」
「第二試験でグリードの襲撃にあったそうだ。噂によると、背中に大怪我を負ったらしい。もう1人は、その子を介抱しているだとかなんとか……」
「おい、出てきたぞ!!」
控え室から対戦者の2人が登場すると、ドッと会場が沸いた。トーナメント表は半獣人と半妖人の試合を何試合か示している。その第一走者となるのがソウジとハルイチだ。
試験官には青島が任命されている。両者が向き合ったところで注意事項を告げた。
「これはあくまでも試験だ。状況次第では私が止めに入り、勝敗を判断する。いいな?」
「「了解」」
青島が片手を上げると、ツキヒメが合図を出した。
「これより、第一試合を行います」
熱狂する観戦者と、互いに誇り抱く受験生。両者とも、今後を担う若い精鋭だ。
青島の太い腕が縦に空気を裂く。
「始めっ!!」
今ここに、第三試験の幕が開けた。




