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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・2)
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上級試験編・青年期編・2――最終話

【執務室】


 第三試験のトーナメント表。薄っぺらい紙に視線を落としながら、タモンはニチ班から受けた報告にショックを隠しきれないでいた。


 内通者が子どもであるという事実は、正直なところ、頭の隅にある程度で可能性は低いと考えていたのだ。


 トーナメント表にある、赤坂班・黄瀬班・青島班に配属された新人の名前。カナデとイオリを除いた、8名の中に犯人はいる。


 かくして、呼び出された各班の隊長も心境はタモンと同じであった。




「信じられませんわ……」




 黄瀬の瞳に涙が滲む。皆、愛すべき可愛い部下だ。




「どうか間違いであってほしい。そう願うばかりです」




 タモンが腕を組む。




「北闇の受験生で幻覚にかかっていないのは、この8名だけだ」

「フウカとケンタは幻覚を見たと、そう言ってました」

「ニチ班が確認していない者を除外することはできん。黄瀬、お前の気持ちはわかるが、ここは堪えろ」

「ですがっ」




 青島が遮る。




「我々が冷静にならなければ、被害は拡大する」

「ゲンさん……」

「内通者が密告しているのは走流野家に関するものだ。内通者を発見出来なかった、つまりはまだ命を狙われ続けるということ。もう、北闇にはいれまい……」

「青島の言う通りだ」




 立ち上がり、窓の外にある景色を眺めるタモン。




「本来ならば、試験を総合的に評価し、昇格するか否かが決定される。だが、青島班に関しては、第三試験を突破した時点で昇格を言い渡すつもりだ。ナオトと交わした約束を果たす」

「母親の捜索、ですか?」

「そうだ。ほとんどの時間を外で過ごすことになる。この件については威支と話し合い、決定事項となった。反論はないな?」

「はい」




 頭では理解しているつもりの赤坂。しかし、心がそれを許さない。なぜなら、彼は、




「反対です。もともと、ナオトは俺が護衛してきたんです。一番可愛い時期を、成長を、この目で見てきた……。任務に私情を挟んではいけないことくらい分かっていますが、気持ちはセメルさんと同じです。家族と離されるような気分ですよ」

「あの子だってそうだろう。ここにはナオトにとって大切な仲間が大勢いる。しかし、仲間の家族にとっても、我が子の命は大切なのだ。少し遠回しな言い方になったが、タモン様が決定せざるを得ない状況に立たされたことを汲んでやれ」

「――っ……、外野は黙ってろ……」




 扉がノックされる。顔を覗かせた人物は、険悪な雰囲気に扉を閉めた。




「大丈夫だ、入れ」




 トーナメント表を直しながらタモンが声をかけた。入室したのはフウカだ。休む時間はあったのに十分な休息をとっていないようで、化粧はボロボロである。


 隊長よりも前に出て、彼女は視線を他所に向けながら口を開いた。




「第三試験のことで、相談があるんだっぴ」

「言ってみろ」




 黄瀬隊長をチラリと見て、言葉を紡ぐ。




「ケンタの……不正を報告しに来ました」




 赤坂が目を細める。




「第一試験でわざと怪我したんだって、幻覚に苦しめられながらそう言ったんだっぴ。あと、もう一つ……」

「まだあるの?」




 黄瀬の表情に緊張が走る。




「ナオトとヒロトのせいにするなら大丈夫だと思ったみたい。誰も疑わないだろうって。だから、第三試験には参加させない方がいいかなって」




 黄瀬がフウカの肩を強く掴んだ。唇がわなわなと震えている。




「ケンタを連れてきてちょうだい」

「黄瀬隊長……、でも……」

「行きなさい。私はご両親を呼んで会議室の準備をするわ」




 フウカが出て行くと、それぞれが慌ただしく動き始めた。会議室で行われる事実確認にはタモンと空総司令官も参加する。青島と赤坂は会議室の外で見張りをする。


 こうして、ケンタの不正が暴かれたことにより、彼は受験資格の剥奪を言い渡された。言葉を失う両親と、血の気が引いていくケンタ。誰よりも傷ついているのはミハルだろう。




「自分で負った傷を仲間のせいにするだなんて……。あなた、何を考えているの?」

「あの双子なら、起こしかねない事件だと思ったんだ!!」




 机を叩いて母親が怒鳴る。




「なんてことを言うのよ!! 他所様に迷惑をかけるだなんてっ」

「母さんも父さんも言ってたじゃないか!! 呪われた双子はいずれ人を殺める。化け物が兵隊にいるんじゃあ、北闇の将来は見えたも同然だって!! みんなそう思ってるんだろ!?」




 ミハルの目が据わる。ひしひしと伝わってくる怒りに、母親とケンタは口を閉じた。




「あの子たちは呪われてなどいない。まだ分からないの? この大馬鹿者」

「ミ、ミハルさん……?」

「新人の中でも、特に走流野ナオトは誰よりも死線をくぐり抜けてきたわ。そうして人々を守り、ハンターに関する新情報を得た。この情報は多くの闇影隊を救ったの。どこが呪われているのかしら?」

「私たちは、息子を洗脳したわけじゃ……」

「子どもは親の背を見て育つ。社会に適応するための基礎は家庭で学ぶ。根本的な人格を形成するのは、あなた方なんです。あなた方の発言と行動を、子どもはしっかりと見ている。今回、それが証明された」




 ケンタの受験票を破る。




「よって、黄瀬班隊長として命じます。次回の上級試験の試験資格も剥奪させてもらいます。最後に……」




 黄瀬の脳裏に、これまでケンタと歩んできた道のりが走馬灯のように映し出される。




「今日をもって、黄瀬班の除隊を命じます。あなたは、単独で当主様から任務を受けて下さい。これでもう、あなた方の言う呪われた双子とは関わりをもてなくなります。安心して任務に励みなさい。話しは以上です」




 ケンタの顔を見ていられなくなり、ミハルは席を立った。扉を前に立ち止まると、取ってを握りながらケンタに言う。




「今まで楽しかったわ。レンとフウカのために色んな役目を担ってくれてありがとう。本当に、残念だわ」




 会議室からケンタの泣き叫ぶ声が聞こえてくる。ミハルは一度呼吸を整えて、苦笑いを浮かべながら赤坂と青島に向いた。




「私って、ダメね」




 目の端に涙が滲む。




「彼はきっと更生してくれるよ。ま、試験が終わったら飲みに行こっか。何時間でも付き合うよ」

「私も是非参加させてもらう。色々語り合おうではないか」

「キョウスケ、ゲンさん……」




 数時間後、レンとフウカにケンタの除隊が告げられた。代わりに、試験終了後にはもともと黄瀬班に配属される予定であったリョウタが加わる。


 リョウタにいたっては、同じ配下であるレンがいるため、特に申し分はなかった。


 こうして始まる第三試験。様々な思いがぶつかり合う。

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