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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・2)
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第23話・イオリvs変異体・1

 2番通路――。


 この通路では、ネネとイオリが人間を率いている。運の悪いことに臆病者が集まってしまったようで、2人は先頭を歩いていた。


 6番通路と同じように入り組んだ迷路のような道だ。分かれ道で立ち止まる。




「一刻も早く北闇に戻りたいのに、鬱陶しい道ですわね」

「タモン様に会いたいだけだろ」

「当然ですわ」

「じゃあ、どうぞ。どこに行くか決めろよ」

「どうして私に任せるのですか?」

「俺が選んで不正解だったら文句言われそうだからだ」




 ネネの性格は、ナオトと東昇へ出向いた時に把握済みである。この人はタモンが絡むと面倒だ。それでいて、後ろを着いてくる受験生。たった1人を除いてそわそわと落ち着きがない。


 ネネが調査している間に、イオリは、唯一まともな会話ができそうな受験生に声をかけた。




「俺は青島班の豆乃イオリだ。あっちはネネさん。お前は?」

「金剛班の峯岸(みねぎし)モモカ。よろしくね」




 黒と白を基調とした西猛の上着。彼女は裁縫が好きなのか、袖や襟、裾にフリルを縫い可愛らしい物に変えている。さらに、顔。イツキはフウカを思い出していた。


 フウカも化粧はしているけど、今時の女の子といった感じだ。けれど、モモカの場合はフウカよりも目元のラインが濃く、目尻には可愛らしいコウモリの絵が描かれている。


 これだけでも印象的なのに、ズボンではなくフリルのスカートに、下からコウモリと蜘蛛の巣柄の長いタイツを履いている。戦闘服というよりかは一つのファッションに近い服装だ。黒いブーツに違和感がない。


 被っているボンネットを整えながら、モモカは上目遣いにイオリを見上げた。




「勇敢な殿方が一緒だなんて、あたしはラッキーだわ。運命かも」




 少女みたいな高い声に甘さが漂う。




「う、運命って……。ないない。っつーか、別に勇敢じゃねーし」

「そんなことないよ。あたし、イオリ様のことならなんでも知ってるもん」

「へ? イオリ様……? ってか、どこかで会ったっけ?」




 戻って来たネネは、何やら面白そうだと会話を見守る。




「あたしって、こんな格好でしょ? だからどの国に行っても注目の的だし、人によっては平気でバカにしてくるの。だけど、イオリ様はそんなあたしを救ってくれた。人の趣味を笑うなって、追い返してくれたわ」




 ポカーンと口を半分広げながら、イオリは記憶を掘り返した。ナオトとヒロトのことがあって、人を見た目で判断する人間を嫌いになったのは確かだ。しかし、覚えていない。


 困ってしまったイオリにモモカは慌てて言葉を紡いだ。




「無理に思い出さなくたっていいの! あたし、それでも嬉しい」

「なんで?」

「この服装が印象に残っていないんでしょ? 周りとは違うんだってわかったから十分だわ」




 笑って見せた彼女に眉を寄せた。これが本音ではないと思ったからだ。なにせ、見ているだけでもどかしい間柄の身内をイオリは知っている。青島班に所属したときから、ツキヒメがどんな思いでいるか、彼は肌で感じてきたのだ。




「どうして女って強がるのかなー……。ま、男も強がるけどさ」




 頭を掻いて視線を壁に向ける。




「俺だったら、覚えてくれてた方が嬉しいし、もっとこうテンションがあがるっていうか……。まあ、悪いのは俺なんだけど、素直に忘れるなよボケくらい言ってもいいと思うぜ」




 モモカの身体が棒のように硬くなる。


 会話が終わったところでネネは歩き始めた。イオリが側に行く。




「この道でいいのか?」

「ちょっと、あんな話しを聞かされて私に試験の話しをさせるのですか?」

「なにがだよ」

「ただの客人から昇格ですわ。もっとガサツな子だと思っていたけれど、見た目よりも良い男ね。タモン様には劣りますが」

「最後が余計だっつーの」




 女ってわからない生き物だ――。そう口にしようとした瞬間に、イオリの足が止まる。そして、片腕を横に広げて後方に止まるよう指示を出した。


 通路のど真ん中にうずくまる生き物を、イオリもネネも見た事がある。




「変異体だ」「変異体だわ」




 異常に長い手足に、膨れた腹。飛び出た眼球で受験生を見つめ、潰れた鼻でイビキのような音を立てながら呼吸する変異体。


 誰よりも先へ出たイオリが半獣化すると、右半分の身体が変化した。黄色い毛と黒い斑点が受験生の視線を集める。感激しているのはモモカだけだ。


 イオリは、ネネにも下がるよう言った。




「私は守られるような女じゃありません」

「傷だらけでタモン様に会わせるわけにはいかねーだろ。後ろを頼む」

「まったく、王子様にでもなるつもりですか? 背伸びをしたって身長は伸びませんわ」

「いくら胸を強調したって、胸好きじゃねえ男もいるんだぜ。覚えとけ」

「嫌味な子ね」

「どの口が言ってやがんだ」




 四肢を壁に当て、浮いたような形でイオリと向き合う変異体。手足からはどろどろと粘液が出ている。


 この変異体、何かが違う。イオリが目を細めた。飛び出た眼球に宿る、ぎらぎらとした殺意。イオリが感じているのはグリードを目の前にした時のと同じ物だ。


 変異体が口を開いた。頬が避け、下あごがだらりと垂れる。そして、




「ギヤアアアアアアア!!!!」




 鳴いた。


 引き返そうと勝手に走り出す受験生。獲物が動いたのを見て変異体が行動に出る。イオリの足の間から長い手を伸ばして1人を捕獲。自身の方へ引きずると、受験生の身体がイオリの足に当たり、足を払われたみたいにひっくり返る。


 イオリの反応が鈍いわけでない。変異体のスピードが速いのだ。




「ひぃいっ、やめろ! 離せ、この化け物!!」




 桜姫を振り回して手から逃れようとする受験生。変異体は、彼を口に押し込んだ。もちろん、下あごが外れているからといって入るはずもない。けれど、それでも、力尽くで押し込む。




「ぎっ、あっ、がっ、だずげでっ……あっあああっあああああ!!」




 反った背中はバキッと骨が折れ、その瞬間に内臓が飛び散った。綺麗に折りたたまれた身体を口の中へねじ込むと、通路に様々な組織がぼたぼたと落ちる。


 ネネが叫んだ。




「全員、後退!!!!」

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