第21話・リョウタの作戦
フウカの先導で、合流地点に続々と受験生が集合する。背後からは精鋭部隊が。彼らは合流地点には止まらず、別の道へと消えていった。また分かれ道か……と肩を落としていた受験生に、リョウタが声を大にする。
「はい、ちゅーもく。俺は源リョウタ。そこにいるソウジ様の配下だ。よろしくね」
いったい何を始める気なのかと、皆の視線がリョウタに集中する。
「最悪なことに、今日は4日目になるから、出来るだけ質問はナシで頼むよ。あー、なんでわかるのかって? 俺って引きこもりなんだよね。家にいる時間のほうが長いから、多分みんなよりも体内時計がしっかりしてんだわ。とまあ、日付に関してはこれで終わりにしといて……」
4日目と聞いて絶望する受験生。それもそのはず、合流できたのはいいが、この場所が中間地点なのか、それともそれより前なのか先なのかが分からないからだ。かくして、リョウタも同じ心境にあった。質問で時間を取られたくない。これが本音だろう。
「蘭総司令官はとてつもなーくダルい試験を用意してくれた。班全員での合格が必須条件だと告げたのは、俺たちの基本的素質を確かめるためってわけ。辞退した隊長の言葉、覚えてる?」
「チームワークと信頼関係」
ハルイチの答えににんまりする。
「せいかーい。初めっから答えは出てたわけよ。人間と混血者のわだかまり、これを利用したのが第二試験……。そもそも、地図のない洞窟を、しかも難関が用意されている一本道を小隊だけで突破するのは不可能だ。ましてや、妖は消えたみたいだけど、この洞窟にはグリードがいる。ナオトが始末してくれたけど、まだどこかに潜んでるかも」
響めきが起こった。意識を失っていた受験生はグリードを見ていないし、霧の時点で幻覚を見た彼らもまた妖の姿を見ていない。緊張が高まる。
「そんでもって、今いる場所。これは俺の推測だけど、西猛からここまでの距離を考慮すると、おそらく神霊湖の真下だ。そこから浸透した水が地下にも湖を作っている。最後に、これが一番厄介なんだけど……」
リョウタが穴に向いた。
「蘭総司令官が言っていた、難関。第一難関は幻覚を見せる霧。それだけだった。だけど、ここから先の通路。この先にいくつ合流地点があるのか、それともないのか……。俺は後者だと思う。多分ないね。中は迷路だと思った方がいい」
そこで、リョウタがたてた作戦はこうだ。
一班だけ混血者の小隊を作り、あとは綺麗に混血者と人間の数を分けて、班がバラバラになって行動し、正解を見つけること。
「班での合格が条件だから、バラバラになるのは不安かもしれない。でもさ、考えてみて。混血者が半獣化・半妖化できる時間は限られているし、人間も体力に限界がある。混血者が体力を温存するには人間の先導が必要だし、何かあった時に対処できるのは混血者しかいない。お互いにカバーし合っていかないと、だろ?」
イオリが手を挙げる。
「賛成。っつーか、この場所を見つけられたのだって、言い方は悪いけど、俺とか人間が幻覚にかかったおかげだろ? 少しは足止めできたんだ。この調子でゴールを目指そうぜ」
ぽつり、ぽつりと賛同の声が上がる。まだ渋っている者もいるが、後は流れに身を任せるだろうとリョウタは判断した。
「まずは混血者の班。ソウジ、ライマル、ハルイチ、ナオト。この4人は一番端の穴からスタートして、各班に伝達を頼むね。そんじゃあ、他の混血者は先に穴の前に行って。その後ろに、人間は適当に並んで。全員が分かれたら始める」
ちなみにだけど――。リョウタの声に全員の足が止まる。
「同じ班員のところには行かないでくれよ。……意味、わかるよな?」
1人が挫ければ、やる気のある仲間の気持ちまでブレてしまう。他人同士の方がいい。リョウタは目力だけでそう訴えた。
こうして、10個の穴に分かれて再スタートを切った受験生たち。先々ではいくつものトラップが設けられている。
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その頃、ユズキたちはというと。
ゴール地点に精鋭部隊が来たため、東昇から脱出をしていた。彼らは北闇へ戻る。
「ナオト、無事で良かったわね」
「ああ。それにしても、試験を続行するとはな」
「毒霧が消えたんですもの。グリードに関しては、精鋭部隊だけでなんとなるわ」
「ハンターと似た生き物だ。そこは心配していない。なぜテンリはこのチャンスを自ら逃したのか……。なにか裏がありそうで心配だ」
「もしかすると、チョウゴがどこかで監視していて、威支がいることをテンリに忠告したのかもしれない。今回は見送っただけで彼は絶対に来るわ」
などと話しながら、鍛錬場へ姿を消したのだった。




