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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・2)
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【逸話】ヒロトの願い

 これは、赤坂班が結成されて間もない頃の話しである。


 赤坂班に配属された班員だけが執務室に呼び出された。ヒロト・ソウジ・ユマ・カナデ・ダイチが揃う。リョウタは自室に引きこもっているため来ていない。


 タモンが立ち上がると、ヒロトは隣へ移動した。




「俺から頼みがあって集めてもらった。今からする話しは他言しないでくれ」




 ヒロトは走流野家に関する情報について、自分が知る範囲を全て話した。母親が行方不明になった理由、ナオトがあんな性格になってしまった理由、ヒロトが守り続ける理由が繋がっていく。


 この時、カナデ以外の混血者は血の気が引いていくのを感じていた。ソウジが固く閉じていた口を無理矢理開く。




「お前が嘘をつくような人間だとは思っていない。だが、問わずにはいられん。その話は真実なのか?」

「ああ。ナオトは特別だ。俺たち家族とは何かが違う。生まれた時の状況もそうだけど、それだけじゃなくて、なんつーか……」

「原因はわからない、そういうことだな?」

「すまねえが、そうだ」




 ダイチが俯く。




「俺らはよ、何も知らねえでナオトを追い込んじまったのか。弱虫だとか、泣き虫だとか、俺はそんなこと言ってねえけど、黙って見ていたのは確かだからよ。……そりゃ前髪を伸ばし続けるよな」

「前髪? そんな話しをヒロトはしていない」




 ユマがぴしゃりと言い切る。




「わからねぇのか、ユマ。人の視線、俺らの視線、皆がナオトを見てる。別に英雄を見てるわけじゃねぇんだぞ? ナオトが感じているのは、混血者である俺らが人間に向けられる視線と同じものだ」

「――っ、そうか……そうだな……」




 ここで、タモンがヒロトに代わって内容を告げる。




「説明があったように、ヒロトとナオトは重度に狙われている。俺がこいつの頼み事を聞き入れたのは、可能性の一つとして、狙いを定めていた本当の人物がナオトである可能性が浮上したからだ。なにせ、こいつらは双子だからな。ヒロトだけを浚う理由が見当たらない。そして、もう一つ……」




 タモンの視線がヒロトに向く。




「こいつは言霊を開花させている。水の性質で氷への性質突破も済ませてあるそうだ」

「じゃなきゃ、ナオトを守れない。俺は本気だ」




 しばらく沈黙した。ユマとダイチはソウジの判断を待っている状態にある。


 一方で、ソウジは過去を思い起こしていた。自分がナオトにした仕打ちに後悔する。ダイチの言葉が重くのし掛かる。




「……あいつは、許してくれるだろうか」




 ヒロトは眉を下げて笑った。




「すんなりとはいかねぇだろうな。だって、あれはイジメだ。俺ですらあいつの苦しみは理解できねぇ」

「…………」

「それでも、俺はお前に頼みたい。頼む……」




 腰をくの字に曲げて深く頭を下げる。




「俺の弟を一緒に守ってくれ……。敵が多すぎて参ってんだ」

「ナオトには本当に悪いことをしたと思っている。だが、少し考えさせてくれ。イジメと配下の命はまた別問題だ」

「ありがとう」







 執務室を後にして、ソウジはヒロトを自宅へ招いた。そして、自室に入ると休む間もなく、ソウジの中にあった疑問の本題へと入る。




「あれが全てではないだろう? 家には誰もいない。ちゃんと話せ」




 配下に遠慮していたのを見抜かれていたようだ。ヒロトは頬をポリポリと掻いた。




「実は、もう一つある。いずれお前にだけは見せようとは思ってたんだけど、もう気づかれちまったのか」

「頼み事が守ってくれ、だけではな。何から守れば良いのかあるかた把握はできたが、精鋭部隊ではなく、俺たちに頼んできたのは、お前自身に隠し事があるからだ。つまり、タモン様にも黙っていることがある」




 適当なところに座ると、ヒロトはソウジにカーテンを閉じるよう言った。部屋が薄暗くなり、電気をつけようとソウジが手を伸ばす。




「このままでいい」




 手を下ろして、ヒロトの目の前に座った。そして、目を見開く。




「お……まえ……」

「これが隠し事だ。国にも、ナオトにも、知られたくない」

「守ってくれとは、そういう意味だったのか……」




 息を飲み込む。これがナオトに知れれば、なにも信じられなくなる。そんな崖っぷちまで追い込んだのは、最悪なことに過去の自分だ。崖際まで押しておいて、ヒロトの頼みを断ることができるだろうか。




(あの時、俺がナオトを救っていれば……)




 もしこれが知れたとしても、精神的に助けになれたかもしれない――。




「お前がすでに動き出しているのはわかった。確かに、それだと敵は混乱するだろう」

「敵は北闇にも潜んでいるかもしれねぇからな。念のためにだ」

「狙われているのはナオトなんだな?」

「見ての通りだ。ナオトの出生を考慮すれば、絶対に俺じゃない」

「……わかった」




 立ち上がり、カーテンを開けていく。再び日差しが差し込んだ部屋は明るくなった。




「手を貸そう。北闇を守るのは俺たち混血者の義務だ。ナオトが北闇の国民である以上、あいつはずっと守られ続ける。なによりも、俺は自分の行いを恥じている。取り返したい」

「すっげー時間がかかるぞ?」

「それだけ傷つけたんだ。覚悟している」




 まずはナオトを知ることから始めよう。この日、ソウジはそう決心した。







 イオリの背中を見つめながら、ソウジの眉間にシワがはびこる。


 結局自分は、ナオトの表面だけを知ろうとしていたのではないか――、そう思わされる。




「貴様は双子を嫌っていたはずだ」

「その理由はナオトに直接ぶちまけた。お互いに謝って今じゃ仲良しだっつーの。お前ら全員、順番を間違えてんじゃねーのか? やることが押しつけがましいんだよ」

「なんだと……」

「守ってる? 誰が頼んだんだよ。あいつが助けてくれって言ったのか? そうじゃねーだろ。友達になるにも守るにも何をするにも順番がある。ヒロトもソウジも、あいつと打ち解けてねぇのに行動だけ先走ってるじゃねぇか。少しはユズキを見習えってんだ」

「なぜそこでユズキが出てくる」

「だって、ナオトの友達だろ? ユズキだけがナオトの心に寄り添った。俺の親はそう言ってたぜ」




 まずは、友達になれば? そう言ったイオリの言葉は、ソウジの胸に深く突き刺さった。

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