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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・2)
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第18話・戦闘不能

 出口の近くまで来て、ふとトウヤが立ち止まった。


 イザナに声をかけテンリを引っ張り出してもらえば、とりあえずはテンリとナオトの接触は防げる。ユズキとしては、一刻も早く遠ざけたいのだが。




「出ないのか?」




 細かい鱗が綺麗に並ぶ自身の両手を見つめながら、トウヤが振り返った。


 ユズキが息を飲む。どうしてトウヤの手中にテンリがいないのだろうか。




「奴は……どこへ行った……」

「わからない。ここに来るまでは確かにいたんだが……」




 ユズキに緊張が走り、引き返すために先に動き出す。トウヤが慌てて止める。




「まずは作戦を練ってからだ!!」

「そんな時間はない」




 言いながらトウヤへ振り向くと、今度は別の緊張が彼女を襲った。自分とトウヤの間にテンリが立っているではないか。


 今度は逃がさない――。狼尖刀でテンリの右肩辺りを突く。その手をトウヤが横に交わした。




「気でも狂ったか!?」

「テンリはそこにいる!!」

「――っ、いないぞ……」

「へ?」




 しかし、彼女にはテンリが見えている。いったいどうなっているのだろうか。


 試験開始日まで、ユズキは体調を整えるためにアジトで大人しく過ごしていたし、回復はヨウヒが確認している。今の彼女は絶好調だ。それなのに、どうして――。


 トウヤは、ユズキへ歩み寄りながら、ナオトのことで頭がいっぱいなのではないかと考えた。そうして、肩に手を置いて落ち着くように言う。




「もう一度、ナオトの様子を見に行こう。これでいいだろう?」

「ああ……」

「行くぞ、ヨウヒ」




 顔だけ振り向いて、首を傾げながら引き返すよう促す。すると、今度はトウヤに緊張が走った。




「どうなっている……」

「な、なに?」




 突如として放たれた殺気に、ヨウヒは両手を挙げて何もしていないと態度で示した。




「お前の隣にテンリがいる。見えるか?」

「いないわよ……」




 ここで、ようやくヨウヒが気づく。2人の腕を握って自身の後ろに隠し、洞窟の奥へ目を凝らせた。




「事態は深刻ね……。蒸気がここにまで流れてきているわ」




 強張っていたユズキの体から急に力が抜けていく。今しがたヨウヒが告げた現象に、ある現実を見たのだ。それは、無意識に潜む恐怖の正体だ。




「僕は……テンリを恐れているのか……?」

「というよりは、テンリを通してナオトを失うことに怯えているんじゃないかしら」

「じゃあ、トウヤやヨウヒはなぜだ? どうしてテンリが見えたんだ?」




 ユズキの問いに互いに顔を見合わせる。そして、トウヤがこう答えた。




「わからない」

「わからないって、お前」「ユズキ、今はナオトが先よ。テンリが潜んでいたらマズいわ」




 トウヤとヨウヒは、心の中で同じ言葉を唱えた。――どうか、詮索しないでくれ、と。すると、ユズキの隣にテンリではない生き物が浮かび現れた。黒い毛に黄金の瞳。鋭い眼光が2人を睨みつけている。ラヅキだ。




「手遅れになる前に早く行こう」




 トウヤが足早に歩き出した。







 その頃、ナオトは――。


 岸辺で仰向けに倒れ込んで、天井を仰いでいた。全身を使って荒々しく呼吸をしながら汗を拭う。


 周囲の壁はあちらこちらが窪んで崩れており、そこら中に紫炎に燃やされるグリードの死骸が転がっている。ナオトの拳は水色に輝き、湖の中に垂れている両足からは湯気が立ちこめていた。




「勝った……。けど、動けない……」



 

 数え切れないほどのグリードを相手にしながら、自己暗示がピークに達したようだ。解いた瞬間にとてつもない疲労と脱力感が細胞まで支配している。


 最中、ナオトは時折息を止めていた。体は酸素を求めているが、彼自身が拒否しているのだ。




「頭がボーッとしてきたな……。吸いすぎたかも……」




 どうやら、上では妖との戦闘が続いているらしい。







 一方で、妖と戦っているハルイチ達の様子はというと――。


 彼らの周りを浮遊しながら旋回している帯は一本になっていた。とはいえ、倒したわけではない。ハルイチの黒目が二箇所の穴を交互に見ている。




「フウカさんとケンタ君が囮になったはいいけど、数が減ったところで状況は変わらない、か」

「当然ですわ。物理攻撃は届かない、ましてや言霊も無意味ですもの。それよりも、彼は大丈夫なのでしょうか?」




 レンが鼻で笑った。




「そもそも、ケンタが連れてきたんだ。自分のケツくらい自分で拭かせないとね」

「だが、フウカさんは行ってしまった。いいんですかい?」

「……いつもそうだ。あいつはケンタに甘い」




 レンが言い終えるのと同時に、1人、また1人と膝が折れていく。




「どうやら、俺たちの負けのようです。時間切れだ……」




 ヒロトが震える膝を思いっきり叩いた。




「させねえよ……。ったく、ナオトのために温存しておきたかったけど、仕方ねえわな。ソウジ……」

「ああ、後のことは任せろ」

「あんがとよ。それじゃ、いっちょやるとするか」




 帯がハルイチに狙いを定めたところで、ヒロトが言霊を唱えた。




(ひょう)捕縛牢(ほばくろう)




 これは、セメルが犬の双子を閉じ込めるために使用した技だ。しかし、今回閉じ込めるのは妖ではない。


 ヒロトを中心に発生した冷気が妖に襲いかかる。そうやってどんどん穴の外へ押しやり、壁を伝う薄い氷は瞬く間に空間を凍らせた。そう、ヒロトはドームの中心に受験生を置いたのだ。とてつもなく巨大な氷のドームにハルイチが目を見張らせた。




「君は……いったい……」




 全てを言い終える前に全員倒れ込む。漂う蒸気までもを外に追いやったわけではないからだ。


 気力だけで最後まで起き上がっていたのはソウジだった。自身の上着を脱いでヒロトの顔に被せ、そして覆い被さるように肘と膝をつく。ヒロトの姿は首から下以外見えなくなってしまった。


 ヒロトが現実と恐怖の間を彷徨い始めると、ソウジが口を塞いだ。寒さのせいで手はガタガタと震えている。




「大丈夫だ……。これで何があってもお前の声はナオトに聞こえない。安心しろ……」

「はふはる(助かる)」




 上着の裏で返事をしたヒロトに頷いて返す。


 ソウジは、閉じそうになる瞼を無理矢理こじ開けて、意識を保つために何度も自分の腕に噛みつきながら妖を見張り続けた。そうして、心の中で祈るのだ。




(誰でもいい……。助けてくれ……)




 どうか、恐怖に飲み込まれる前に――。

 評価・ブクマして下さった方、本当にありがとうございます!


 Twitterでもたくさんの応援を頂きました。


 いつ書き直すんですか? という質問があったので、こちらでも答えておきます。

 修正はSEASON.1が終了してからになります。スローペース、そして少し硬い印象とのアドバイスを頂きましたので、流れを確認しながら修正を行い、それからSEASON.2に突入したいと思います。





(そうです。これ、SEASON.1なのです)

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