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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・2)
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第12話・緊急事態

 幻惑の森に巣くう妖が、苔の生えた地面に俯せで寝転がっている。耳を押しあてながら、頬を赤く染めて薄ら笑いを浮かべる。




「もっと、もっとよ……。あなた達の恐怖をワタシに見せてちょうだい……」




 彼女の体から黄色い煙がシュウシュウと音を立てながら発生する。すると、森が騒がしくなり、一体の霧が濃くなっていった。







 赤坂班のルートにいる精鋭隊員が激しく咳き込む。通過していった受験生をしゃがれた声で呼び止めると、膝が折れて地面に手をついた。




(変だ……。ここの霧はマスクさえしていれば体に異変は起きなかったはず……。それに……)




 誰1人戻ってこない、無音の通路。声は届かなかったようだ。




(これは緊急事態だ。一刻も早く蘭様に報告せねば……)




 震える足を拳で叩いて、精鋭隊員は入口へ引き返した。汚染された空気から抜け出すと本来の力を発揮する。鎖を飛び越えて、受付にて国帝と待機する蘭のもとへ駆け寄る。




「どうしました?」

「霧が濃くなっています!!」

「妖に気づかれたか……」




 蘭がコモクに向く。




「如何なさいますか?」

「中止に決まっている。すぐに全員を連れ戻しなさい」




  隊員がマスクを外す。




「無理です。マスクをつけていても浸食されかけました。中にいる者はおそらく……」




 ここで、ニチ班の隊長役を務めているキトが静かに動き出した。向かう先は幻惑の森だ。


 幻惑の森に到着すると、キトは自身の身体を黒霧で膜を張って進んだ。そして、白い衣服を着る女の前で立ち止まる。




「やはり、妖の仕業だったか」




 言いながら姿を現すと、突然流れてきた冷気に妖が地面から顔を上げた。


 奇妙なことに、女が来ているのは白無垢の婚礼衣装だ。




「ワタシの能力に犯されないなんて、とんだ化け物が訪問してくれたわね。今いいところなの。邪魔しないでくれるかしら?」

「ほお……。鬼を見ても驚かないとは、貴様、いつの時代からここに閉じこもっているんだ?」




 女が幻惑の森一帯に放っていた霧を自身に集め戻す。霧が消えると、小川と、小川に架かる朽ちた赤い橋がぽつんと出現した。


 赤い橋を撫でながら女が言う。




「貴様だなんて失礼な男。ワタシの名前はハシヒメ。覚えておきなさい」

「また、ヒメ、か……。月夜の姫と似た名前だな」

「ふふ。当たり前じゃない。月夜の国の一代目当主……。それはワタシなんだから」




 綿帽子(わたぼうし)を取ると、滑らかな肌が露出される。洗い立ての陶器のような艶やかな顔に、真っ赤な口紅が塗られた唇。少しだけ首を傾げながら、キツネ目でキトを捕らえる姿は妖艶の一言に尽きる。




「それで、何の用かしら?」

「今日から5日間だけでいい。能力を使わずに大人しくしててくれ」

「あら、せっかくの獲物なのに、お断りよ」

「試験中だ」




 綿帽子を被り直すと、ハシヒメは拳で強く橋を殴った。




「ワタシを殺そうとする輩を見逃せというのか!?」




 鼓膜を貫くような高い声と声量。小川の水が揺れていくつもの波紋が浮かび上がる。




「幾年の月日を生きようとも、ワタシの命を狙う輩は絶命しない!! ワタシは被害者だ!! 永遠にな!!」




 豹変したハシヒメにキトの興味がそそられる。こいつは使えるかもしれないと、脳裏にたった一つの宝物を思い描く。




「その魂、俺が力尽くで浄化してやる。……来い!!」

「お前の恐怖、ワタシが貪ってやる!!」




 宙を浮きながら、ハシヒメがキトへ襲いかかる。妖に実態はない。触れられるのは同種だけである。よって、この戦い、ハシヒメに有利だと彼女自身がそう確信していた。




「鬼が頂点に君臨していた時代はとうの昔に終止符を打たれているんだよ!! シュテンの時代は滅び、八鬼衆の時代は神との戦いでバラバラにされた!! 生き残りは王家に討伐され、鬼は人間よりも格下の存在に成り下がった!!」




 ハシヒメの両手に霧で形成された玉が発生する。突き飛ばすような仕草で、それをキトの心臓に押しあてる。




「今の時代、頂点に立つのは妖さ。この世に存在する生き物は、何人たりとも妖に触れない……」

「確かに、迷界の森に救うアマヨメもそうだと言える。しかし……」




 ゆっくりとした動作で、キトがハシヒメの手首を掴んだ。




「俺には通用しない。なぜかって?」




 目を丸くして固まるハシヒメを、キトが顎を上げて見下ろした。




「それは、俺が鬼の皮を被った妖だからだ」




 瞳同士が合うと、キトが背中に抱えてハシヒメを地面に叩きつけた。陥没した地面に背中とお尻を収め、四肢を外へ放り出すハシヒメ。彼女は、両手に生きている能力を地中に放った。




「地獄が……ワタシに力を与える……。叫べ、愚かなる人間共……」

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