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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・2)
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第4話・プライドを捨てる半妖人

 半妖人の試験は校庭にて行われる。


 それぞれがゼッケンを受け取って、スタート地点より後方で待機した。


 試験官が開始を告げる。




「名付けて、変化100m走。始めるわよ」




 受験生を5名ずつ指名し、用紙を裏返して配る。時間は10秒しかない。コウマとハクマは待機組と距離を置いて観察している。




「よーい……始めっ!!」




 一斉に用紙へ読み始める受験生。見るなり慌てふためく。




「なんだ、これっ」

「今何秒たった!?」




 10秒とは、場合によっては長く感じる時間なのかもしれないが、この場では短すぎるもの。そう言ってハクマはくすくすと笑った。




「見ろよ、あの顔。かなり焦ってる」

「バカみたいに書かれてるんだろうね。で、どうするの?」

「キトには本気を出すなって言われてるから、八割くらいでいいんじゃない? つっても、それが一番難しいんだけどね」




 そんな会話をしていると、第一走者がほぼ同時に変化した。10点を獲得した受験生は胸を撫で下ろしているが、中には怒りに狂う者もいる。特に、班員に人間がいる者の怒りは凄まじい。




「あんなの不可能だ!! できるわけねぇだろ!!」

「だいたいこの試験官はちゃんと見てるのか!? 俺のどこがおかしかったんだよ!!」




 ここで点数を稼いでおかなければ――、との不安が態度に出ている。


 試験官は静かに点数を書くだけで、受験生の方を見向きもしなかった。




「ばーか。できてねぇから低得点なんだろぉが。現に10点の奴もいるじゃねぇか」

「文句があるならさっさと帰りやがれ。それともなんだ、無様に追い出されたいのか?」




 悔しさに顔を歪ますも、やり直しはきかない。試験官は次々に指名していった。


 幸運なことに4点以下は現れなかった。点数の低い受験生が同班の仲間へ祈るなか、ついに最後の受験生が呼ばれる。




「ライマル、ハルイチ、ネネ、スイモク、キンド。前へ」




 暖かい日差しに眠気を誘われているコウマの肩を、ハクマが揺すって起こす。スタート地点に並ぶと、待機時間で暇をもてあましている受験生たちが一斉に注目した。なぜなら、五桐ハルイチがそこにいるからだ。




「妹が10点で通過したんだ。俺も頑張らないとね」

「ハルイチ様なら大丈夫ですわ!! もし低得点をつけられたら、その時はこのネネが試験か」「それ以上は言うな。問題発言で失格になりかねない」「なんとお優しいっ」




 扇子でネネの口を叩くハルイチと、腰をくねくねさせながら喜ぶネネ。そんな2人のやり取りに双子はどん引きである。




「いい年したオバサンが何やってんだよ。気持ち悪りぃ……」

「こんなひょろひょろした奴にイザナは手間取ったの? ボクだったら足くらい折ってやるのに」




 ハルイチの扇子とネネの腰が止まる。




「私、ガキが嫌いなんですの。任務の度に足を引っ張られそうですし、何より甘えられたらたまったもんじゃありませんから」

「そう言ってやるな。彼らはチームワークってものを知らない」

「負け犬の遠吠えなら得意そうですわ」




 見えない火花が飛び散った瞬間だった。


 巻き込まれないようにとライマルが他所を向いていると、コモクがすかさずライマルと腕を組んだ。いたずら魂に火が付いたようだ。




「ほら、ライマル君も言ってるよ。オバサンのくせにって」

「言ってないから!!」

「あ、ボクはスイモク。よろしくね」

「よろしくできねえよ!!」




 腕を振りほどこうとするライマルと、折る勢いで腕を組むコウマ。ふと、ライマルが動きを止めた。




「ん? お前」「よーい……」




 試験官と声が被る。コウマは腕を離して前を向いた。




「なに?」

「いや、なんでもない」

「始めっ」




 紙が手渡されると、先程まで言い合っていた5人の顔が同時に青ざめた。ズラリと書かれた犯人の特徴は30項目にもなる。受験生が怒鳴る気持ちもわからなくはない。


 先に走り出したのはハルイチだった。続いてライマルが後を追いかける。


 ハルイチが変化したのは小柄で小太りの男性だ。容姿はクリア。残りは髪の長さや髭の有無、身につけているアクセ類やホクロの位置など、細かい場所を試験官は一瞬で確認していく。




「……よし。五桐ハルイチ、10点。おめでとう」

「ありがとうございます」




 ライマルは女性だ。体型はハルイチのものとは真逆で、高身長で痩細った体。これで容姿はクリアとなる。


 あまりも簡単で覚えやすい内容に、今後の試験へやる気に満ち溢れるライマルと、ライマルの噂に興味を引かれているハルイチ。


 幽霊に取り憑かれた子ども――。一度は耳にしたことのある噂だが、あまりにも信憑性がない。そのため、彼の存在はハルイチや受験生にとって盲点だった。まさか、幽霊の指す意味が半妖人だったなんて。そんな驚愕した顔ぶれがライマルを注視している。


 一方で、出遅れたネネ・コウマ・ハクマはというと――。


 同時にスタートを切って、並んで走行中だ。ここで、ハクマが仕掛けた。




「120、165、183、179……」

「ちょっと!?」

「邪魔しちゃいけないなんてルールはないから」




 すると、どうだろう。暗記した内容に雲がさしかかる。その隙に双子は数歩前を走っていく。ネネはスピードを落とした。ゴールに立てば変化しなければならないからだ。




(仕返しってね)




 ハクマがクスリと口角を上げて、試験官の前で変化した。30項目、すべて揃っている見事なまでの変化。試験官が感心の声を漏らす。




「もし10点以上があるとしたら、それは君だ。おめでとう」




 あとはコウマがゴールすれば終わりだ。ハクマが振り返ると、なんと、コウマはネネと同じく立ち止まっていた。


 周囲がざわつく中で、ハクマが声を荒げた。




「なにやってんだよ!! オバサンなんかに負けるな!!」




 ネネとコウマが顔を見合わせて、同時に走り出した。ネネが心の中で犯人の特徴を思い起こす。




(5mmの髭を生やした12歳の女の子。身長は3mあり、チューリップのアップリケが縫い付けてある小さな鞄を持っている……。あとは、えっと……。イヤよ、絶対にイヤ)




 ハルイチの待つ姿が余計にネネを焦らせる。




「もう、本当に、最悪よ……」




 タモンがいないことだけがネネの救いだ。変化すると、ハルイチの手からぽろりと扇子が落ちたのだった。


 男の振りをしていても、コウマもまた女だ。護衛対象であるライマルをキッと睨みつけながら、半べそになっている。コウマは、今ここで、生まれて初めてプライドを捨てた。




「な、なんだよ。俺ってば何かした?」

「ボクはお前のためにやるんだからな!! 忘れるな!!」




 試験官の前からコウマが消える。試験官の手元には答えがあるので、試験官は立ち上がって足もとを確認した。そして、特徴を読み上げる。




「四足歩行で透明に近い産毛を纏っている。鼻は丸くて、目はつぶら。肌色は薄ピンクで、体重は50kgほど。尚、頭には黄色いリボンを着用し、服の背中には円が描かれ、そのなかには〝糞〟の一文字がある……。あとは……」




 ハクマが絶句する。ネネが悲鳴をあげる。ライマルの顔が引きつる。ハルイチが笑いを噛み殺す。




「お見事!! 完璧なブタちゃんだ。スイモク、10点」




 大衆の面前に晒されたコウマが、この場から逃走したのは言うまでもない。

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