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【逸話】トウヤ、オウガに宣言する

【南光】


 その日の夜中、国民が寝静まった頃、人目を避けながら国内を歩く者達がいた。赤い刺繍の威支の文字は黒いマントにぼんやりと浮かんで見える。


 山を登り、門の向こう側に白い城を眼中に見据えると、トウヤは1人で歩き始めた。影に気づき門番が動くと、トウヤはマントから両手を覗かせ門番の首を掴んだ。蛇の頭に変化すると、門番からか細い悲鳴が漏れ出る。




「眠っていろ」




 首に噛みつき、相手の意識を奪うと、堂々と城へ歩みを進めた。


 しばらくして城内から様々な声が響き渡った。それを合図に、残りの3人が行動を開始する。門から入り、近くにある下水口へと姿を消した。


 イッセイがキトに尋ねる。




「城の結界を解いたとき、その部屋の結界は外れなかったのか?」




 先頭を行くキトが答える。




「ヘタロウよりも厳重に施されている。おそらく、お前の結界ではないんだろう」

「それはマズいな。……急ごう。物によっては時間を要する」


 





 その頃、トウヤは厳戒態勢の中でオウガの自室を訪れていた。大理石で作られた豪華な机にて向き合って腰掛け、見えない火花を散らす。


 重度は王家を裏切った――。どこからともなく、そんな声が聞こえてならないトウヤ。口元に笑みを浮かべた。




「光影と手を組み、俺たちを利用した。そうだろう、オウガ」




 オウガの眉がぴくりと動く。




「まあ、いいさ。重度と深く関わりのある唯一の人間だ。遙か昔から、王家は好き放題に利用してくれた」

「ならば、何用だ」




 トウヤは顎の前で手を組み、包帯の裏で目を細めた。




「四大国に潜んでいた巨大な獣……。この情報を王家に渡したのは誰だ?」

「私の先祖は様々な文献を残している」

「ほお……。俺はてっきり、テンリの仕業だとばかり思っていた」




 蛍が動いた。トウヤの首元に爪をたて、動脈を切り裂こうと力を込める。しかし、トウヤは微動だにしなかった。




「俺を殺せば、これを合図に仲間がタモンへ報告をする。テンリは月夜の惨殺事件で北闇に火をつけたんだ。タモンがどう動くのか、父親であるお前になら想像がつくはずだ。……一度しか言わないぞ。部下を下げろ」

「――っ、オウガ様、なりません!! こいつはここで始末するべきです!」




 蛍の言うことは最もだった。だが、そうとわかっていながらも、オウガは精鋭部隊に下がるよう命令を下した。オウガには確かめなければならないことがあるのだ。


 蛍が最後に部屋を出たところで、オウガが口を開く。




「本題に入れ。私も暇ではない」

「裏で動き回っているのだ。仕方あるまい」



 

 オウガの目が据わる。




「王家はこれまでに数多くの歴史を葬り去り、俺たちや獣、そして妖の存在も過去にしようとした。人間を守りたいのなら、そうするしか手段はないだろう。だがな、俺が知りたいのは別の事だ」

「言ってみよ」

「テンリはなぜヘタロウに目をつけたのか、なぜ王家はそれに乗っかったのか。オウガよ、貴様が走流野家を恐れている理由はなんだ?」




 しばらく沈黙した後、オウガはトウヤの発言を笑い飛ばした。




「奴が王家を恐れているのだ」

「どういう意味だ」

「果たして、治癒能力でどこまで回復できるかよのう。納屋に幽閉してから、奴には何も与えていない。水も、食事も、新鮮な空気も、綺麗な寝床も、そして光もだ。……ヘタロウが答えてくれるのなら、是非とも尋ねてみるがいい」




 オウガが立ち上がる。




「その時、お前たちは我が王家と同じ道を選択することになる。戦場で待っているぞ、トウヤ」

「……重度に勝てるとでも?」

「勝つさ。そもそも、なぜ王家が重度を恐れないと思う」




 言いながら、オウガは自身の背後にある大きな本棚に手を伸ばした。一冊を前へ傾けると、本棚が自動で横にずれて金庫が現れる。


 金庫から取り出した物は色あせた一冊の本で、付箋がたくさん横からはみ出ている。水色で区切られている箇所を選び、トウヤへ開いて見せた。




「全部で7体いる重度の体質、性質、技能、言動はここに全て記録されている。お前たちが足掻いたところで手遅れよのう」




 しかし、トウヤは本を見てはいなかった。ここに来た時からずっと気にしていたのは時計だ。


 なので、上の空のような物言いでオウガに声を返した。




「ああ、そのことか。別に構わないさ。例え王家に勝利の女神が微笑んだとしても、女神は勝利以上の物を与えやしない。重度について調べ上げたところで、後継者を選ぶのは我々の血肉だ。貴様の言葉を借りるなら、どれだけ足掻こうとも意味はないのだ。獣妖人……。この配列は永遠に変わりやしない。混血者が滅びようともな」




 そろそろ頃合いだろう。トウヤが椅子から立ち上がった。




「俺も貴様に宣言しておこう。我が軍隊を相手にどこまで殺り合えるのか楽しみにしているぞ。オウガよ、戦場で会おう」




 ちなみにだが――、と言葉を紡いで、トウヤは扉の前で振り返った。




「その本、頼りにならんようだ」

「どういう意味だ……」

「重度は7体ではない。全部で13体いる」




 こうして、トウヤは来た時と同じく、堂々と門から帰って行ったのだった。

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