第6話・謎に包まれるグリード
隠れ家に戻りトウヤへ報告を行った。彼は王家が重度の存在を把握していることを知っていた。
そもそも、威支が結成されたのは、王家や国民から重度を守るためというのが理由だった。僕には到底理解出来ないけど、いつしかそれが世界統一とか訳のわからん名目に変わっていったわけだ。
しかし、ここで重要なのは、彼自身の記憶も操られている可能性があるということだ。重度の中で一番長く生きているトウヤがやられているとなると、いよいよ打つ手が限られてくる。
「タモンの出生か……。言われてみれば確かに謎だらけだ。オウガの一人息子だというのに、世間を揺るがせたのはエイガの失踪。タモンについては鬼の化身という通り名だけが浸透していった」
「つまり、覚えていないということか?」
「いや、メンバーは全てを記憶している。俺もそうだ。タモンの出生については、徐々に公開していく形だった」
犬の双子やシュエン、バコクとの共鳴に歪みは感じられなかった。トウヤが感知する共鳴もそうだろう。記憶障害が起きていればこれだけのメンバーを集めるのは不可能だったはずだ。となると、重度はボウキャク草に毒されていない。
「……そっか。国に属していないからか」
「だろうな。光影で焚かれている量の煙を直に吸えば症状は早めに出るのかもしれんが、今回の手口は四大国に限って時間をかけて行われている。よっぽど世間に知られたくない何かがあるのだろう」
「オウスイとトア、それに重度。タモンの出生や赤坂の体質……。答えは出ているのに、理由がわからない」
オウスイとトアについては昔話で語られているし、重度の存在もバコクの出現で国民に公開されている。タモンが鬼の化身だと呼ばれているのもそうだし、赤坂が重度の肉を食ったのも闇影隊の間では有名な話しだ。
やはり、ここでも名前が挙がらないのは――。
「走流野家だけが引っ掛からない。変だな」
「同感だ。ヘタロウを幽閉した件については答えが出ていない」
薄紫色の瞳を持つ者は必ず命を狙われる――。なぜ、ヘタロウはこの言葉を残したのだろうか。
「全て走流野家に繋がっているのか?」
「少なくとも、重度と走流野家は監視者で繋がっている。他は今のところ見当がつかない」
頭を捻るも、それらしい答えは浮かんでこなかった。
トウヤの吐き出した息が沈黙を破る。
「出来る事を優先しよう。地下へ行く手筈を整えた」
「了解。誰が行くんだ?」
「今回は俺とキト、そしてイッセイとお前だ。たった4人ではあるが、妖化できるメンバーの体質を考慮すると穏便に済ませられるのは俺しかいない」
犬の双子は巨体化してしまうため、隠し通路での妖化は難しい。猫の重度はまだ生まれ変わりが誕生していないみたいだし、動けるのはトウヤだけとなる。
「だが、どうやって潜入するんだ? これで三度目だ。王家の見張りは徹底していると思うぞ」
「だから俺が行くんだ」
トウヤは城門から行き、オウガと接触。自ずと精鋭部隊はオウガのボディーガードに徹底するはずだ。
「その隙に対象を捕獲し威支の所有物とする。イッセイとお前が脱出したら、キトが地下を破壊する手筈だ」
「わかった。それで、グリードはどうなった? やはり、南光に繋がっていたのか?」
「そのことなんだが……」
岩場に腰を下ろす。
「最初にお前が幽閉されたとき、キトは脱出経路を探すために王家内を動き回っていた。しかし、グリードに繋がるような部屋はなかったそうだ。大きな実験を行っていたのは納屋で、人体実験を開始したのはコンクリートで固められた大広間だが、グリードの痕跡はない」
「そうか。じゃあ、新種の出現は王家にとっても……」
「歴史に残る大事件となったはずだ」
となると、幽霊島にいた原因は謎に包まれる。
「どうやって海流を流れてきたんだろう」
「奴らは闇影隊と何ら変わりない動きをする。壁の外を彷徨くハンターと違い、潜入方法を心得ているのかもしれん」
例えば、仲間を踏み台にして山を作り壁を越える、とかな――。トウヤの言葉に背筋に冷たいものが這った。
「しかし、数体だけが侵入したとなれば脱出経路は限られてくる。奴らに隠密行動という部隊並みの動きが備わっているのなら、まず正門には行かないだろう」
「…………海か」
「おそらく、だがな」
この時、僕とトウヤ――、いや……。世界中の人々が、見えない場所で小さな事件が起きていたことなど知る由もなかった。
後に、ネネからの情報で変異体は全部で8体確認されたと聞かされた。そして、最後の一体、つまり9体目の討伐に関わることとなる。この数字の意味を理解したのは、ある青年が探偵並みの推理力を発揮してからである。




