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第8話・最弱、合格!?

 あれから、力道はお祭り騒ぎとなった。


 村人達をもてなす歓迎会もそうだけど、国民に火をつけたのはコンの復活だ。早朝には〝テンリ〟と書かれた紙をカカシに貼りつけて、大きな身体を懸命に動かす彼がそこにいた。国民は大感激だ。


 使用人から話しを聞いたのだろう。お土産にと肉団子を山ほど持たされて、西猛の近くまでコロスケは見送ってくれた。しかも、クマの護衛付きだ。背中に乗ったりもした。


 20歳に執り行う儀式でクマに認められれば、こういった事も可能になるのだそうだ。


 なにはともあれ、無事に帰国。解散後、青島隊長は青空邸へ。俺たちは家の帰路を行きながら和気あいあいと話している。人を救えた安堵からくる達成感だろう。賊の話しで盛り上がる俺とイオリは人目を気にせずに騒いでいた。ところが、イツキの目は怒りで輝き、幾分荒れているではないか。


 イオリがイツキの肩に手を回す。




「言っただろー? 毒だっての。どうしたんだ?」

「忘れたの? この任務、Aランクなんだよ」

「あー、そういえばそうだったな」




 確かに――。色々あって忘れていたが、お化け退治はランク度の高い任務だった。




「賊の可能性や、人身売買のこと、知ってたんだ。アキラさんはわざと書類を偽造して渡している。試験のつもりなんだろうけど、これは許されないことだよ」

「まあまあ。何事もなくこうして帰ってきたんだしよ。そう怒りなさんなって」

「……死んだかもしれない」




 地面に黒目を落としてイツキが歩みを止める。




「ユズキが重度と接触していなかったら? ナオトと話し合う機会がなかったら? その上で、賊と重度が繋がっていたら? どんな可能性だって考えられる。こういうの、本当に嫌いなんだ」

「んで、どうしたいんだよ」

「各班に伝えて回ってくる。これ以上、裏山に墓を増やすわけにはいかない」




 いつもの如く、あっという間に走り去って行く。


 


「上手く言えねえけど、なんつーか、義務感っての? たまにさ、俺らよりも上の奴に感じる時があるんだわ」

「タモン様みたいな?」

「あそこまではいかねぇけど、まあそんな感じ。任務とか他国についてやけに詳しい時もあるし。今回だってそうだろ。あれ、わかりやすく例え話にしてくれたんだろうけど、俺らが考えている何十歩も先のことをイツキは考えてんじゃねえの?」




 なんだか青島隊長みてぇだな――。そう言って、再び歩き始めた。


 家に着いて、洗濯機に衣類を放り込む。回している間にシャワーを浴びて、身軽な服に着替え、米を炊く。そうして洗濯物を干してから自室に戻った。


 コンを通して鏡に映る自分を見たからだろうか。悩みが全部吹き飛んだみたいに心が軽い。


 その甲斐あって、任務は滞りなく順調に遂行していった。雑草抜きも、近場までの護衛も、何もかもが重要に思えるだけでなく楽しい。争いも血もない穏やかな日々だ。


 何よりも、前髪を切ってから国民の視線が少しだけ変わった。ここ最近、呪われた双子という言葉も聞こえてこないし、挨拶をしてくれる人もいる。最初は戸惑ったけど、日常を取り戻しつつあった。


 そして、試験期間を残したまま、どの班も無事に達成し終えた。3年前に比べれば体力も気力も残存しまくっている。


 青島隊長に集合をかけられ、待つことなく全員が揃った。青島隊長の手にある3枚の紙に期待が高まる。




「おめでとう。全員、Sランク評価だ。総司令官から労いの言葉も頂いた。賊の回収は精鋭部隊が行う」

「クマさんがいるなら、また行きたかったっすけどねー」

「滅多に体験できないことだ。力道には感謝せねばなるまい」




 1人ずつ、紙が手渡された。当主の印が押された合格通知書。思わず頬が引きつりそうになるくらいニヤけたのも束の間、ある文字を見て顔面が強張る。




「あの、最後の方にミスがあるんですけど」

「…………そのことなんだがな」




 ミスではないらしい。まず、一番上の部分には〝S評価〟の文字。続いて――。


【あなたは、試験の結果、全任務において見事な成績を残しましたので、ここに仮合格を言い渡します】


 そう、仮合格と書いてあるのだ。




「あまりにも早く終わってしまったものだから、別の任務を用意したそうだ」

「S評価の意味……。ってか、俺! 初めて親にまともな成績を見せられると思って、マジで喜びかけたのに!!」




 腰の横に添えられた握り拳が虚しい。ガッツポーズが瞬殺だ。




「それで、その任務ってなんですか?」




 昨日よりも増してイツキの怒りは凄まじい。放たれた声は聞いたことのない低さだ。




「その名も、お姫様奪還作戦。ふざけているようで、意外とこれは本格的だ」

「カナデちゃんが人質役っすか?」




――いや、違う。人間と混血者、特に大人同士の間にある壁は天を突き抜けるほどに高いのだ。アキラが五桐家に許可を得るだなんて、そもそも考えもしないだろう。




「ツキヒメ、ですね?」

「そうだ。彼女を発見した上位7班が上級試験に参加できる」

「王子様を決めるってわけっすか。なんだかやる気がでるっすね」




 口内に苦みが広がる。


 どうしてだろう。気に食わない。

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