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第3話・最弱、不服を申し立てる

 3年ぶりに訓練校を訪れた三班と、先輩たち。顔ぶれは3年前と大きく変わっている。彼らは皆、裏山の墓地で永遠の眠りについた。


 全員が揃うと、前と同様に自己紹介から始まり、王家について説明がされた。試験が開催される国は今のところ南光のままだ。威支が例の部屋に封じ込められている生き物を解放するまで、こちらの憶測で下手な説明はできない。


 説明が終わると、青島隊長は「残念な知らせがある」と言葉を紡いだ。



 

「今年の強化合宿は中止だ」




 途端に室内は騒がしくなり、そこへ当主が入ってきた。大きな風呂敷を持っている。当主は咳払いをして静かにするよう促した。年齢は40代前半というところか。きつい目元がいかにも当主っぽい。


 教壇に立つと、青島隊長が代わって紹介をした。




「こちら、当主の青空アキラさんだ」

「中止とはいっても、合宿をしないというだけであって、皆には私から任務を出す。今回はこれが上級試験参加への切符をかけたものだ」




 そう言って、風呂敷の結びを解く。山積みとなった書類の間には分厚い紙が挟まれている。何やらランク付けされた文字が見える。




「合宿期間は一ヶ月か?」

「はい、そうです」

「よし、ならば……」




 全員の顔を見渡して、書類にドンッと手を置くアキラ。




「各班に任務の振り分けを行う。一ヶ月で遂行できなかった場合、上級試験への切符は剥奪だ」




 こうして、各班の隊長が書類を受け取り、その後はミーティングの時間となった。


 正直、合宿の中止にはとてもガッカリしている。ここ最近で三班のみんなと親しくなったのだ。過酷な修学旅行くらいの気分でいた。


 ヒロトにいたっては、眠る前に何度も荷物をチェックしていたほどだ。お互いに肩の荷が下りてから、一緒に行動できるイベントは楽しみにしていた。


 それなのに――。




「ナオトよ、そういじけないでくれ……」

「納得できません」




 胡座で鎮座し、書類の隅々に目を通す。どれもこれも雑用ばかりだ。


 当主がもつ任務はAからEまでランク付けがされている。俺達が配分された任務はというと、ほとんどがDだ。




「アキラさんは上級試験を甘く見すぎです。子守りに買い物、庭の手入れにお化け退治って……」

「俺も納得できないっすわ。ぶっちゃけ、こんなことしている時間、ないっすよね? 全部ユズキに任せるつもりなんすか?」




 イオリの質問に青島隊長が目を伏せる。


 タモン様も青島隊長も、目の前にさし迫る危機に備えたいはずだし、こちらで調査もしたいはずだ。しかし、前にも言ったが、俺達は国に住んでいるのだ。ましてや、国帝に隊長、そして歩兵隊という役職付きだ。自由に動きたくても、それぞれの任務を放棄するわけにはいかないのだ。


 だからこそ、タモン様はユズキを守れと言った。国と威支のパイプ役であり、尚且つ気配やニオイのないスパイ向きの体質を持つ彼女を失うわけにはいかないからだ。




「青島隊長、この任務を遂行することでユズキを守ることができると思いますか?」

「ああ、できるさ」

「本当っすかー?」




 イオリのふてくされたような顔に微笑んで、青島隊長の大きな手がイオリの頬を掴む。アヒル口になったイオリにイツキはくすくすと笑った。




「一見、どれも雑用にみえるかもしれん。しかしな、それがDランクの任務だとしても、ひょんなことでBランクに様変わりすることだってあるのだ。例えば、このお化け退治。もしかすると子どもの勘違いかもしれん。だが、我々は闇影隊だ。妖の可能性もあると考えるのが闇影隊でなければいけない」




 どんな任務であろうとも、そこにテンリが現れたり、賊の襲撃にあったり、人浚いが起きたりするかもしれない。犯罪はそこら中に潜んでいるのだと青島隊長は言葉を紡ぐ。




「とはいえ、お前達の気持ちもわかる」




 イオリの頬から手を離す。




「仕事の配分を間違えると、とばっちりを受けるのはいつだって下っ端だ。社長はただ、椅子に深く腰掛けて指示をだせばいい。共に働くならまだしも、口だけでは不平不満にもなるさ」




 瞬時に理解した。隊長たちも納得していない。きっと俺達の想像を遙かに上回る話し合いがされたのだろう。正しく座り直した。




「そういやよ、青空アキラって、イツキと同じ名字だったな。親戚か?」

「ううん、父親だよ」

「「はっ!?」」

「義理だけどね」

「でもよ、お前って一人暮らしじゃん」

「アキラさんが俺を引き取ったせいで奥さんが病んじゃったから。別に暮らしているだけだよ。俺は俺で自分の本当の父親を捜しているし、自由だからいいんだ」




 全く気にしていないようだ。平然と話すイツキに、イオリは「このド陰キャめ」と言いながら強引に肩を組んだ。




「まったくぅ、この子ったら人様に心配ばかりかけるんだからっ。強がりは身体に毒よ、毒っ。あんた、毒ばかり飲んで生きていられると思ってるの?」

「えっと、どういう意味かな?」

「解毒剤がこんだけいんだ。少しは自分らしくいろっての。一度引き取られておいて、自由だからいい? 馬鹿言ってんじゃねーよ。そんなの、寂しかったに決まってんだろーが」




 強がったって良いことねーぞ――。そう言って、イオリは書類の話しに戻った。




「とりあえず、これからやろうぜ。ぶっちゃけ、さっきから気になってたんだよな」




 イオリが選んだのは〝お化け退治〟だ。確かに、この任務は腑に落ちないところがある。




(なんでこれがAランクなんだろう)




 ともかく、青島班の最初の任務はこれに決定した。

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