最終話・家族の絆・2
「極秘って、どういうことですか?」
重大な話しなのだろう。普段とは違う目つきに睨まれたような気分になる。
「北・天とは精鋭部隊のコードネームだ。そして、天は、前総司令官のコードネーム。さらに、前総司令官は……走流野ヘタロウ。お前達の祖父だ」
「「んなっ!!??」」
赤坂隊長が頬を引きつらせながら苦笑いを浮かべた。
「精鋭部隊の素性を明かすだなんて、確かに極秘情報ですね……。しかし、なぜヘタロウさんが王家に報告を? 自ら体質をバラすだなんて変じゃないですか」
「小汚い紙だ。確証はないが、俺はこう推測する」
この世界の頂点に君臨するのは王家だ。けれど、タモン様は実父の政権に納得しておらず、幼少期から抱いていたある疑問を元に独自で裏組織を結成させていた。それが結成されたのは、タモン様が北闇の玄帝に就任してからだ。
組織名は、実にシンプルだ。兎愛隊。これは、トア派のみが集結した組織である。
メンツは豪華で、前白帝のラオ様、前蒼帝、五桐カネツグ、ネネ、そして爺ちゃん。
ネネがいることに驚いたけど、今はとにかく話しを聞くことに徹しよう。
「ヘタロウは王家が核心に触れるところまできたと察したのだろう。俺を裏切る形を取り、自ら潜入捜査を開始した。そこで情報操作を行い、王家の目をそらせようとした……」
「ですが、書類が保管されていた部屋には、過去に重度を幽閉して行っていたであろう実験跡や古傷が数多く残されていたと聞いています。ヘタロウ殿が黙っていた理由はなんでしょうか」
「それが、この文字だ。走流野家と重度に関する見解と報告。この文字こそ核心であり、あえて見解という言葉を使いうやむやな物にしたんだろう。そしてそれは、兎愛隊にも話せないような重大な情報だ」
なぜタモン様は走流野家や王家について調べていたのだろうか。それを問うたのは赤坂隊長だった。
「タモン様は以前から知っていたのですか? 王家が走流野家を狙っている、と……」
「まさか。そもそも、あのジジイが俺を産み出したこと事態、俺にとっては疑問でしかなかった。アイツを取り囲み媚びを売る死に損ないの老いぼれ共もだ。揃いも揃ってトアの子孫だと俺を恐れた。つまり、オウスイとトアの話しはただの昔話なんかじゃない。あれは事実に基づいた歴史だ」
タモン様は自信を持ってそう言い切った。なぜなら――。
「俺には重度と同じ体質が備わっている。……記憶が前世の過去を映し出す。トアは実在した。これが俺の持つ唯一の資料だ」
そこには、ジンキや他の生き物も映し出されていた。断片的で時系列もわからない滅茶苦茶なものらしい。それを繋いでくれたのがユズキだ。彼女はタモン様と接触しており、さらには北闇を出る事も伝えていた。
俺に黙っていたのは、強固なる精神力を養わせるためだとタモン様は言った。心を鬼にして、あえてそういう手段を選んだのだ、と。
こんな友達、二度と出会えないだろう。
「とにかく、走流野家と重度の繋がり……。そして、王家が隠蔽した歴史……。この2つを早急に解決する必要がある。ヘタロウはまだユズキの手中だ。後で情報を貰うとして、我々は隠蔽した歴史の行方を捜す」
「ナオトの母親の件は如何なさるつもりですか? 私としては、こちらも取り急ぎ行方を捜したい」
「青島、まだわからないのか?」
タモン様の険しい顔つきが、普段通りに戻っていく。
「ヘタロウとセメルはヒロトの言葉に動かされた。おそらく、重度か王家が絡んでいる。それを知った彼女が北闇を出た。だとしたら、彼女はヘタロウの意思に従ったということだ。セメルの言葉を忘れたわけじゃないだろう?」
「なるほど……。確かに、ヘタロウさんとは反対意見の立場にありました」
「それともう一つ、お前達には調べてほしいことがある」
青島隊長と赤坂隊長が姿勢を正しくした。俺とヒロトも立ち上がってタモン様に向く。
「ユズキが王家へ潜入したとき、奴らはあいつを追わなかった。ユズキ自身に原因があるはずだ。あいつの近辺を調査しろ。どうせこちらが手助けすると言ってもあいつは断る。だが、失うわけにはいかない。いいか、命に代えてでも守れ」
「「御意」」
後は2人で話し合えと、3人は帰っていった。その直前、俺はタモン様にキトからの伝言を伝えた。やはり気になっていたようで、振り返る速度が尋常ではなかった。
そうして、ようやく2人になる。
「俺らってまだ子どもだろー? ったく、面倒だっての」
「走流野家に生まれたんだ。俺にとっては凄く運が良いよ」
「んだよ、前向きだな」
「だって、皆に愛されてるからさ。今日初めて知ったけど、身が軽くなったっていうか……。安心した」
「……まだ泣き虫だった頃のお前が可愛かったわ。ヒロトーって、鼻水垂らしてよ」
「やめろよ、恥ずかしいな」
「それにしても、母さんはどこに雲隠れしたのかねえ。何年もさ」
「トウヤが教えてくれた。母さんは野蛮人で、一言目から暴言を吐くような人だって」
「トウヤって誰だ?」
「蛇の重度」
「ばっ……」
家族の形を知るのに何年かかっただろう。
父さんに体質の話しをされてから、たくさんの事件が起きた。多くの命を喪ったのと同時に、多くの人に救われた。
ヒロトとのわだかまりもなくなり、タモン様を信用できるようになって、これでもう誰も憎んだりせずにいられる。
だけど、これは束の間の休息にすぎない。
「来年の上級試験までよ、また前みたいに手合わせしようぜ」
「やっと本気で戦えるって? 嫌味すぎない?」
「ばーか。対等になれたんだ、俺は嬉しいだけ」
「…………そうかよ」
「だーはっはっは!! 耳まで真っ赤になってやんの!! やっぱお前は変わんねえな!!」
「わ、笑うな!! 早く寝ろよ!!」
「はいはい、ナオトもゆっくり休めよ」
近い未来、俺はとんでもない敵と戦うことになる。ユズキの涙を、人々の叫びを、仲間の死を、絶望を、恐怖を、ツキヒメの願いを一身に背負って、この世界の〝核〟を相手にする。
平穏な時間は、長くは続かないのだと、身をもって知ることになるのだ。
少年期編―完―。
ここまで読んで下さり、本当に、本当にありがとうございます!!
ようやく物語の中心までやってきました。
青年期編からはいよいよ後半戦です。
王家が隠蔽した歴史、ラヅキが明かさない過去、キトとタモンの関係、オウスイとトアの真実、ハンターやグリードについて、そしてナオトとユズキを待ち構える未来。などなど、まだたくさん伏線が潜んでおります。
回収? 大丈夫です。忘れません。
文章は追々訂正するとして、この物語の構成には実に7年を費やしております。
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次回投稿は明日になります!!




