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最終話・家族の絆・1

 これまで、多くの穴にはまってきた。這い出ては落ちて、また這い出ては落ちて、進んだかと思いきやまた落ちて。これの繰り返しだった。


 きっと、俺たち家族は、お互いに色んな秘密を抱えすぎたんだと思う。こんな複雑な関係になってしまうほどに、強烈な摩擦は火花を散らせ、時に憎しみすら生んでしまった。


 全て、自分たちで掘った穴だったんだ。


 暗い居間のテーブルに向かい合って座る。縁側には、タモン様と青島隊長、赤坂隊長の姿が。結局着いてきてしまった。 


 テーブルの上で両手を組んで、ヒロトが話し始める。




「……実は、知ってたんだ。俺はナオトが特別だって、幼い頃から理解していた。まさか異世界なんてところから転生したとは思わなかったけど、でも俺とは違うってわかってた」




 ヒロトが誘拐されたとき、爺ちゃんがなぜ夢を見たとタモン様に報告したのか。それは、赤子にして喋ったからだった。




「俺は爺ちゃんに言った。今度こそ、ナオトを守らなきゃいけねえ。それは、誰にも務まらない俺の義務だってよ。その時、爺ちゃんと親父は何か気づいた感じだった。母さんだけは理解してなかったみてえで、事情を知った瞬間に親父と大喧嘩してたのを今でも覚えている」




 どうしてそんな事を口にしたのか原因は不明だけど、その直後に母さんは消えたそうだ。


 赤子の視力は良くないらしく、ヒロトは母さんが黒髪だってこと以外は知らないと紡いだ。




「ナオトが家に来て、すぐ母さんのことを聞いていたのも覚えている。だけど、親父に口酸っぱく止められたんだ。ナオトを守りたかったら、絶対に母さんのことを話すなって。これには爺ちゃんも賛同してた。でもよ、俺はお前が寂しがってるって気づいてたから……。お前が修行を開始したとき、安定剤が母さんになるかもしれねえからって親父を説得したこともあったけど、無駄だった」




 父さんがダメならと、ヒロトはタモン様に掛け合った。俺を守るために力を貸して欲しいと、脅すような口調だったとタモン様が言う。




「ヒロトから話しを聞いたとき、何かがおかしい事に気がついた。まずは、走流野家に自己暗示と言霊の能力があることだ。突然、なんの突拍子もなく、ヘタロウは俺に吐露したんだからな。何かを隠している、そう疑った。しかし、証拠がない」




 そこへ訪れたのがヒロトだ。タモン様の疑心は確信に変わりつつあった。


 そこで、タモン様は俺を守るために、急遽赤坂班を編成し直した。これは赤坂隊長や青島隊長にも極秘で行われたらしく、なんならタモン様の独断という形で決定したそうだ。




「赤坂班のメンバーは、隊長を除いて6人いる。これは異例中の異例だ。本来なら、三小隊の部下は4人ずつ配置される予定だった。こうして赤坂班のメンバーを増やしたのは、全てを調査の時間に費やするためだ。鼻の利く者・頭のキレる者・能力値が高い者、選りすぐりのメンバーを集結させた」




 赤坂隊長が首をひねる。




「俺は何も知らされていないんですが……」

「すまない。ユズキと深く関わった者には伏せてきた」




 タモン様の判断にゾッとした。ヒロトもソウジも、他の皆もまだ子どもだ。いくら俺を守るためだとはいえ、少々やりすぎではないだろうか。


 タモン様に向ける視線をヒロトの頭が遮る。




「勘違いすんな。みんな、納得して俺の我が儘に付き合ってくれたんだ。特に、ソウジはな」

「下級歩兵隊になるまで関わりすらなかったのに、なんで……」

「自分の行いを恥じてるってよ。謝罪のつもりだったんだろ」

「――っ……」

「とにかく、俺は爺ちゃんと親父の態度で、お前に何かあるんじゃねえかって不安になった。もしそうだとしたら、言霊なんて習得してほしくなかったし、入隊もしてほしくなかった。何がきっかけでお前が狙われるかわかんねぇ。だったら、今まで通りでいいって、勝手だけどそう思ってたんだ」




 しかし、想像以上に敵は賢く、家族の口は硬かった。父さんが黙秘した時点で為す術がなくなったという。


 しばらく沈黙する。ふと、腕を組んで立つ青島隊長の顔色を窺った。考えている事は同じらしく、俺は青島隊長に判断を委ねることにした。


 刻々と時間が過ぎていく中で、ようやく重たい口を開いた青島隊長。




「私はずっとオウガ様と繋がりのある貴方を信用できなかった。多忙な身でありながら本当に走流野家を守れるのか、なぜ私に走流野家に関する情報を極秘扱いとするのか……。ますます色濃くなっていく疑心に駆られ、これまで独断で動いてきました。しかし……」




 常に持ち歩いていたらしい。ポーチの中から例の用紙を取り出した。




「これを……」

「なんだ、その紙は」

「王家の地下室で発見された書類の一部です。読めた物ではありませんが、最後の文だけはかろうじてインクが生きています」




 タモン様が目を通す。




「以上を、走流野家と重度に関する見解・報告とする。――北・天……。そういうことだったのか……」

「と、申しますと?」

「……今から話すことは他言無用だ。全員、部屋に入れ」




 居間に集合して、赤坂隊長が全ての扉を閉め切った。電気をつけるとそこにはいつにも増して険しい面立ちでいるタモン様の姿があった。

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