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第16話・ボウキャク草

 ここで1つ朗報だ。




「か、母さんを知ってるんですか!?」




 声を大にして叫んだ相手は、蛇の重度・トウヤだ。目に包帯を巻いていてどこを見ているのかわからないけど、彼にはこちらが見えているらしい。


 無意識にトウヤのマントにしがみついた俺を、彼は人差し指で俺の額を押しながら離れるよう訴えてきた。答えを知るまでは意地でも離してやるもんか。




「片割れを誘拐した時だ。彼女が邪魔しに来た。闇影隊でもないのに、まるで訓練された兵士の如く動き回り、さらには一言目から暴言しか吐けないような野蛮人だ」

「このさい、聞き流しますから!! 教えて下さい!! その後、母さんはどこに行ったんですか!?」

「片割れを奪い取って北闇に戻ったが……。なにせ、ヘタロウとセメルが合流したんだ。俺もそれ以上は手を出せなかった」

「……え?」




 聞かされた話しと違う。


 母さんはヒロトを正門に置いたまま戻らなかったと言っていた。目撃者もなく、煙のように消えてしまった、と。




「なにやら騒いでいたな。赤子が変だとかなんとか。俺はその隙に逃走させてもらった。ヘタロウの能力は厄介だ。捕まるわけにはいかない」




 そこで、思い起こした。


 おかしな夢を見た後、激しい頭痛に吐き気、無意識の自傷行為があった――。これは、俺が入院していた時にタモン様が話してくれたものだ。そして、この症状が現れたのは、当時まだ一歳だったヒロトだ。


 ヒロトはトウヤと、俺は大猿・シュエンと接触し発症している。


 爺ちゃんが見つかるまで原因はわからないとのことで話しは終わったけど、父さんが母さんのことで嘘をついた理由が、そもそもこれに関係しているとしたら――。




「母さんは、どんな人でした? 性格とかじゃなくて、見た目です」




 嫌な予感がした。写真や衣類といった思い出が存在せず、家族ぐるみで母さんの話を避けている。その全てが、俺に隠す形でだ。




「見た目か……。確か、黒髪で」「ありがとうございます」




 それ以上の情報はいらない。そんな思いからか、トウヤの言葉を遮って止めてしまった。母さんは金髪じゃなかった――。


 じゃあ、ヒロトは誰に似たんだ? ヒロトと母さんの髪色が違うなら、俺に隠した理由はなんだ?


 トウヤのマントから手を離し、地べたを視線を落としながら考える。


 イッセイが話を戻した。




「さっき説明してくれた症状についてなんだが、もしかするとボウキャク草の仕業かもしれない」




 代わって、イオリが話してくれた。




「なんすか、それ」

「我が国にのみ生息する毒草だ。ボウキャク草は、その名の通り人の記憶を一部だけ消すことができる。他にも、幻覚症状を見せるだけでなく、記憶障害を併発する」

「どうやって消すんすか?」

「ボウキャク草は、別名、影の兵士と呼ばれている。兵士は主君に忠実な例えからその名がついたが、主君とはボウキャク草を手にした者のことだ」

「つまり、暗示をかける、ということだな?」




 ユズキの声にイッセイが頷く。




「ただ燃やすだけなら、幻覚症状や記憶障害を引き起こすだけとなる。国を守るのは簡単だった。進入しようとした者は壁に辿り着くと、来た目的そのものを忘れ、いつしか手を引くようになる。ただし、燃やさなかった場合はもっと最悪なことが起こる。これはボウキャク草の一部を対象の身近に置いてある場合にのみ起きる現象だが、記憶から特定のものだけを消すことができるんだ」




 君の母親の件のようにね――。そう言って、イッセイは俺の方に向いた。


 光影の国がボウキャク草を燃やし続けていたのは、自国への進入を防ぐためだけではない。ボウキャク草が人の手に渡らないようにするためでもあった。あまりの危険性から、この瞬間までボウキャク草について伏せていたくらいだ。


 しかも、この毒草、刈っても刈っても1日で復活するそうだ。生命力が半端じゃない。




「犯人に心当たりがあれば良かったんだけど、俺にはちょっとした事情があって、長い間を自室に閉じ込められていた身だ。残念だが、外で何が起きたのかはわからない」

「暗示を解く方法はあるんですか?」

「ああ、凍らせて塵にする。これだけだ。いいかい、ボウキャク草は必ず対象の身近にある。草の絵を描くから少し待っててくれ」




 こうして、俺とイオリは手掛かりを手に入れた。


 帰る前に、ユズキへ伝える。




「幻惑の森に調査が入る。拠点を変えた方がいいかも」

「その件なら大丈夫だ。なにも心配はいらない」

「そっか。あと、マヤの家、見たよ。任務で偶然だけど。本気で一緒に住む気だったんだな。俺とユズキの部屋があった」

「理由を聞ければ良かったんだがな……」

「死体も確認したけど、あれじゃあ……」




 黒焦げの死体が脳裏に浮かび上がって、胸の奥がツキンと痛む。




「それと、1つ頼みがあるんだ」

「いいぞ、言ってみろ」

「新種について話しただろ? グリードってやつ。あいつについて調べて欲しいんだ。マヤも調査してみたいなんだけど、気になる書類があってさ」

「なんて書いてあったんだ?」

「地下にグリードに似た変異体の死体があった。そいつが見せた反応が人間と同じらしいんだ。実際、手足は人と同じなんだけど、気味が悪くて……」

「実は、こちらでもグリードの出現には引っ掛かりを感じる部分があったんだ。ハンターが進化したならまだわかるが、奴らは互いを攻撃し合っている。どう見ても敵同士だ。つまり、どこから湧いて出てきたんだ? ってことになるわけだ」

「確かにそうだな……」

「グリードの件は威支が引き受ける。お前は早く暗示を解くんだ」




 ユズキに手を振って、イオリと共にソウジ達の元へ急いだ。


 そこで思わぬ人物と遭遇してしまう。


 ウイヒメを殺した、あの男だ――。

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