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第11話・最弱、桃色トークに困り果てる・2

「わかった! 言うから離れてくれ」

「うんうん、素直が一番だっぴ。名前は出さなくていいから、最近の思い出でも話してもらいましょうか」

「そうだな……。花をもらって……」




 そこまで口にして言葉を詰まらせたユマは、しまったと言わんばかりに顔を赤々と染め上げた。女子は黄色い声あげ、質問攻めを繰り広げる。


 どんな人から貰ったのか、どんな状況だったのか、などなど。色んな事を一気に質問されたユマは、ついに耳を塞いでしまった。


 見かねて黄瀬隊長が止めに入ったが、さすがは先輩と言うべきか。




「……色だけ教えて?」




 そう言って、にっこりと微笑んでいた。




「喧嘩をやめるようにって……イツキとイオリがくれたんだ。イツキは赤い花で、イオリは……えっと……」




 思い出せないのか、火を見つめたままユマは黙ってしまう。明らかに動揺している。名前を出したことに気づかないほどに。


 俺のすぐ隣では、目を閉じながら眉間にシワを寄せるイオリがいるが、小さな声で「黄色」と口にした瞬間に声を殺して笑った。帰る方向が途中まで一緒だったようで、イツキの真似をしたらしい。


 ユマの話が終わり、次に指名されたのはカナデだ。


 ソウジの婚約者ではあるが、彼女は男子からの人気が熱く、隠れファンまで存在している。一斉に寝返りをうった男共は、今か今かと話し始めるのを待っていた。




「ほら、お前ならソウジ様の日常を知っているだろう? 話せ」




 若干命令口調のユマではあるが、ソウジの配下だ。カナデから少しでも話を聞きたいのだろう。




「……ユマちゃんのこと、信じてもいい?」




 黄瀬隊長が間に入る。




「ここでの話は女子だけの秘密よ。漏らすようなことがあれば、この私が締め上げるわ。だから、ユマの許可など求めなくていいのよ?」

「――っ、黄瀬隊長! それは……」

「人の心を操るなんて無理な話よ。カナデにはカナデの思いがあるの。それは同じ女としてわかってあげなさい。いいわね?」




 渋々頷いたユマを見て、カナデは安堵の吐息を漏らした。


 そして、衝撃的な発言を口にする。




「フウカちゃんと同じで、私にも好きな人がいるの。でもそれはソウジじゃなくて、別の人」




 今日一番の盛り上がりではないだろうか。小さくガッツポーズをとる女子と、出かけた声を飲み込む男子。ヒロトでさえカナデの話には食いついていた。いい気味だと言わんばかりの悪い顔で、ソウジが歩いて行った方向を見ている。




「その人は、すごく嫌われてるし怖がってる人もいるけど……。でもね、心強い友達もいるの。その人を大切に思う友達は、タモン様にだって平気で暴言を吐ける。そんな友達を持つ彼が羨ましくて、彼みたいに強くなりたくて……」

「ゆっくりでいいのよ」




 カナデが深く深呼吸をした。




「私の兄がよく話すんです。その人は未来への架け橋だって。私もそう思うんです。第一試験の時、彼は混乱の中で混血者に言いました。誰かが動かない限り、人間と混血者の溝は埋まらない、と。どちらも見捨ててはいけないという、強い意志を感じました」




 いつの間にか黄色い声は聞こえなくなっていて、耳を傾ける姿勢となっていた。おそらく、青島班だけが別の事を考えている。




「私が好きになった人は、学校では暗い存在だったとよく聞かされました。でも、そうじゃないんです。それはみんなが勝手に決めつけた印象であって、彼は誰よりも強くなろうと藻掻いている。私はそんな彼に憧れて前向きになれました」

「そうだったの。いいじゃない、想いは自由よ」

「ありがとうございます。それともう1つ、この場を借りて皆さんにお願いがあります」




 一息置いて、カナデは言葉を紡いだ。




「彼の言葉は間違っていない。私達の代で終わらせませんか? こうやって壁無く話せるんです。きっとこれからも出来ます。互いを蔑み、忌み嫌うのは苦しいだけです。少しずつでもいいから修復しませんか?」




 ぽつり、ぽつりと、賛同の声があがった。


 どんな関係性にしろ、やはりハルイチの妹だ。彼女には人を引っ張る力がある。




「やったね! カナデちゃん、すごいっぴ!」

「フウカちゃん……。私の言葉じゃなくて、彼の言葉だから」

「その彼って、誰なのか気になるー」

「ふふふ」




 焚き火に視線を移して、答える。




「彼の言霊も炎。ソウジと同じだけど、もっと暖かい……。私の好きな人も、黒の子だよ。〝あの子〟に取られたくないのも同じ。一緒に頑張ろうね」

「マジでー!? ライバルが増えたっぴー!!」




 ヒロトと目が合ったのは偶然ではないだろう。変な汗が一気に噴き出し、心臓はやけにうるさくなった。


 目を見開いたまま、間抜け面をさらすヒロトは俺を指さしながら無言で頷く。自分ではないと首を横に振ってみたものの、ヒロトはカナデを良く知っているし、何よりもあの言葉は俺がデスに言ったものだ。


 例える事の出来ない心境に、俺は動揺を隠しきれなかった。

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