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第6話・最弱、海に飲まれる

 その後、青島隊長の強烈な尋問で、新事実が浮上した。


 船内にあった斧を片手に、タカラとミツルの拘束をいとも簡単に解いてしまった青島隊長の上腕二頭筋。海賊の顔から瞬く間に血の気が引いていく。武器がなければただの無力な男ばかりだった。


 斧を片手に2人を狙う理由を説明するよう強要すると、一つはタカラが話していた通り、上級歩兵隊だった彼女に対する当てつけであった。


 もう一つは、ビゼンが言っていた、船の残骸だけが岸辺に打ち上げられていた事によるもので、仲間を殺されたと思い込んでいたらしい。しかし、タカラにはなんの話だか全く理解出来ていないようで、その様子から推測するに犯人は他の者だと考えられた。




「この女じゃなきゃ誰なんだ!? こいつらは孤島に住みながらなんの不自由もしてないんだぞ!? 俺の仲間の物資を奪ったんじゃなきゃ、いったいどこから手に入れやがったんだ!!」




 海には大蛇がいて、南光まで行くのも命がけのこと。物資を手に入れるのも困難であり、海賊をする他なかった――、と。


 青島隊長の尋問はさらに続いた。




「船はどこから手に入れたのだ」

「いつの間にかこの島にあった物だ。言っておくが嘘じゃねぇからな! 地震があった次の日、起きたらこの島にあったんだ!」




 青ざめながらそう怒号するビゼンの目は、青島隊長の片手に握られる斧に向けられていた。その怯えようから嘘を話しているとは考えにくい。しかし、いったい誰がなんのために船を置いたのだろうか。




「まさか、タカラさんと殺し合わせる為に置かれたんじゃ……」




 そう呟いたケンタの言葉は、場を静めるのに最も適していた。


 右手を挙げたミツルが、腫らした顔で説明する。




「物資のことだけど、同じく島に置いてあった。毎日じゃないけど、たまに打ち上げられてるんだよね。どうせ信じないと思って黙ってたけど……。海賊も同じならもういいや。……ね?」

「……ったく、勝手に話すんじゃないよ。いまいち状況が飲み込めないが、ビゼン……。あんた、うちとミツルに頭下げなきゃいけないんじゃないのかい? あの日の夜、こっちは片足を失って、ミツルは死にかけたんだ……」

「触れないようにしていたが、双方に何があったのだ……」




 青島隊長の問いに答えたのはビゼンだった。


 数年前、初めてタカラと対峙した日の夜に遡る。




「あれは、初めて船の残骸が岸辺にあった時だ……」




 2人を捕らえ、この島に向かっている最中のこと。船底に何かがぶつかり前に進めなくなった。確かめる間もなく、波が震えだし、船は左右に大きく傾いたそうだ。何人もの仲間が海に落ち、鎖で繋がれたタカラとミツルは帆柱にしがみつき事なきを得た。


 波に静けさが戻ると、海から大蛇が現れた。この時、島の場所を知られまいと2人は目隠しをされていて、何が起こったのかわからずにいたという。


 海賊は大蛇と戦い深手を負わせることに成功したが、刺し網を投げ捕獲したのと同時に、今度は騒ぎのおかげで鎖から脱したミツルと一戦交える事となった。


 これを聞き、タカラは義足がないことを忘れ立ち上がろうとした。一戦もなにも、当時まだ7歳だったミツルは海に放り投げられ、そのせいで死にかけたのだという。




「あの時はすぐそこにあの化け物がいたんだ! 混乱してたんだよ!!!!」

「そんな言い訳が通用するものか! 勝手な思い違いで巻き込んでおいて、なにふざけた事を言ってんだ!!!!」




 聞けば聞くほどに、おかしな話ばかりだ。


 大地震を引き金に奇妙なことばかりが続いているとタモン様は懸念していたが、それは間違いではないらしい。2人の話も、どれも大地震直後に起きている。


 口論を繰り広げるビゼンとタカラの背後にある、どんよりとした海を眺めながら、そんな事を考えていた。


 すると、その時――。


 暗闇のせいで、直前まで見えなかったそれは俺の視界を突如として覆い隠した。あまりにも急な出来事に青島隊長を呼ぼうと口を開くと、口内に塩の味が一気に広がる。岸辺に引きずられ、必死に岩にしがみつくも、波の引く力は体から力を奪っていった。


 そう、これは津波だ。


 方向感覚を失った俺は、されるがままに海へ引っ張られていった。息が出来ず、何も見えない。身体が何方向にも回転し、落ち着いた頃には深海を見つめていた。

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