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第3話・変異体

 海にいる巨大な蛇のことを、イオリは〝ドン〟と名付けた。ここからはドンと呼ぶことにする。


 それで、そのドンが現在どこを遊泳しているかは不明なため、とりあえず海賊の出方を窺うこととなった。


 幽霊島は南光に近い。暑さで体力を奪われているレンと、タカラとミツルを護衛する黄瀬隊長を置いて、青島班とケンタとフウカは島の探索へ行くことになった。思っていたよりも結構な広さだ。借りた(なた)を持つ青島隊長を先頭に島の中腹くらいまでやって来た。


 出発前にタカラはこう話していた。




「島の奥には行ったことがない。海賊から目を離したくないからね」




と。


 鬱蒼とした木々の背は低いけれど、手入れのされていない土地だ。茂みが所狭しと生えている。虫が多いせいか、すでにフウカのやる気は失われていた。とはいえ、ハンターや獣はこの島に存在しない。これは救いだろう。


 とまあ、これで説明は終わるとして、俺には引っ掛かることがある。




「幽霊島に住んでいるのは、タカラさんとミツルだけですよね?」




 青島隊長の背中にそう声を投げる。




「そのようだ。どうした?」

「ハルイチに今回の任務について少しだけ話したんです。そしたら、俺を恨んでいる人が大勢いるって言ってたので、おかしいなと思って」

「ふむ……。彼が言っているのは海賊のことだろう」




 鉈を振り下ろすと、少しだけ開けている場所に出た。そこで歩みを止める。




「タカラさんの話しによると、彼らは皆、東昇の人間だそうだ」

「どうして海に?」




 イツキが答える。




「大地震のせいだよ。海に放り出されて、奇跡的に生き延びた人達が海賊になったんだ。だけど、東昇は彼らを救出しなかった」

「でも、それってハルイチが悪いわけじゃないだろ? その頃はまだ幼いし、当主でもなかったはずだ」

「そこだよ。混血者が当主になっていることが許せないんだ。海賊の船長の名前はビゼン。この人は、大地震が発生するまで当主だった人だから」




 イツキの調べによると、ハルイチは利益を優先し、今も救出活動を後回しにしているそうだ。しかし、これはあくまで噂だ。真偽のほどは定かではないらしい。確かなのは、ハルイチが当主に就任してからというもの、財力も軍事力も他国より群を抜いて潤っていること。


 噂が一人歩きしているのか、それとも美味い汁を吸うために国民も目を閉じているのか。どちらにせよ、ハルイチが話をそらせた理由はわかった。


 照りつける日差しにフウカが立ちくらみを起こしたのは、そんな話がされている時だった。側にいたケンタが咄嗟に支えるも、バランスを崩して2人共倒れてしまう。近くにいるイオリが手を差し伸べた、まさにその時だ。


 まるで落とし穴の罠に引っ掛かったみたいに、3人の姿が目の前から消えた。地盤が緩んでいたのか、落ちたのだ。中を覗き込むと結構な深さがある。


 青島隊長が声を大にする。




「無事か!?」

「俺とケンタは無事っす!! フウカの意識がありません!!」

「たたた助けて下さいっ。な、なにかいるっ」




 迷わずに飛び降りた。


 着地と同時に水しぶきが上がる。島の周辺に洞窟があったみたいで、前方に海を見留める。奥行きも広さもない狭い洞窟だ。海と洞窟の間は深さがあるようで、先の様子を見に行ったイオリの身体は半分まで浸かっている。


 額から血を流すフウカを青島隊長が手当てしながら、ふと、青島隊長はケンタの視線を追った。そして……。




「全員、声を出すな」




 小さな声で命令した。


 顔の神経が凝結したみたいに、ケンタは口を開いて天井を仰ぎ見ながら固まっている。そうして、静かに桜姫(おうき)を構えた。




(こんな場所で桜姫を?)




 釣られて、視線だけを天井に向け、思わず息を止めた。おぞましい姿をした丸々と太った生き物がへばりついているではないか。


 体長はおよそ160センチほどだろうか。お腹は血管が浮き出るくらいに膨れあがっていて、細い舌は俺の身長より頭一つ分くらいの高さまで垂れている。歯は生えていないけど、顔はとても見られたものじゃない。


 眼球は飛び出ており、鼻は潰れている。異常に細長い手足にある爪でがっちりと岩肌を掴んでいて、背中にある無数のトゲは一際目を引く。特徴はグリードに近い。




(でも、これはグリードじゃない……。なんだ、こいつ……)




 大きさもそうだが、目が緑色ではなく退化しているみたいに白いのだ。


 ハンターとグリードの体つきと肌色は人間とほぼ同じだ。違いといえば、ハンターには眼球がないけど、グリードには緑色の目がある。ハンターには大きな口にサメのような無数の歯があるけど、グリードは獣と似た形状。ハンターの背にトゲはなく、グリードには30センチほどのトゲがたくさんある。


 それでいて、両者ともウサギくらいの大きさだ。


 生き物が手を一歩前に出す。すると、突如として動き出した生き物に驚いて跳ね上がったケンタが、ここで悲鳴を上げてしまった。




「こっちに来るなあ!!」




 青島隊長が口を塞ぐも時すでに遅し。生き物がケンタと青島隊長に向かってゴキブリのように動き出した。

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