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第4話・監視者

 今まで通り、平穏に暮らせると思っていたコウマ。山吹神社にいた頃と同じように、ハクマと遊ぶ日々を想像していた。だが、コウマを待っていたのは、破壊と殺戮の日々だった。


 それだけでも気が滅入るというのに、更に追い打ちをかけたのは、度々現れる夢のような記憶だった。いつだって人間がいて、血塗られた光景と先代の悲痛な叫び声が聞こえるのだそうだ。しかしこの叫び声には、ある条件があった。それに関係してるのは走流野家だ。




「薄紫色の瞳……、あれを見ると耳鳴りがするくらいに叫び声が聞こえてくる。西猛でもそうだった。あいつらと目が合う度に頭が変になりそうだった。とくに、あいつは……一番ダメ……」

「誰のことだ?」

「ボクを箱に閉じ込めた奴は、ナオトって呼んでた。マヤが捜してた男の子が東昇に来てたんだ」




 箱とは牢鎖境のことだろう。ただ沈んだのではなく、コウマの捕獲に成功したようだ。それはともかく、ナオトは前髪で瞳を隠していたはずだが――。




「お前を追った2人はまだ生きているのか? 丸坊主のおじさんと、緑色の髪の毛をした男の子だ」

「ぴんぴんしてるよ。ナオトと、もう1人うるさい奴がいたけど、東昇まで迎えに来たんだと思う」

「災難だったな」




 言葉とは裏腹に胸を撫で下ろす。2人共生きている。




「それで、どうしてナオトの瞳はダメなんだ?」

「わからないけど、ボクを殺そうとした奴にそっくりなんだ。ボクっていうか、先祖様かな……。まだ人間が小さい頃だと思う」




 はて、どういう意味だろうか。




「子どもってことか?」

「ううん、違うよ。背が低いんだ」




 僕の頭を持ってしても理解出来ない。コウマは更に続けた。




「そいつはね、ずっとこっちを見てるんだ。戦った時もあったみたいだけど、どっちかっていうと見てることの方が多くてさ。威支の皆は〝監視されている〟って話してた」




 コウマとハクマは、その監視者に一度だけ会った事があるそうだ。それは、産まれた後のことだ。


 信じられないことに、重度は急スピードで脳が発達し、続いて身体が成長、そして人間よりも老化が遅くなるのだという。


 コウマがいうには、3歳の頃にはすでにこの身長に到達し、そこから止まっているらしい。ということは、産まれた直後に会ったという人物を頭で理解できていることになる。




「その人は、捨てようとしていた男の人からボク達を受け取って、山吹神社に行った。そこで父さんができたんだ。嬉しかったけど、ボク達はいつもこっそりと話してた」




 記憶で見た人物が、なぜこの時代にいるのか。どうしてナオトは似ているのか。これがコウマに恐怖を与えている原因だ。




「そいつも薄紫色の瞳をしているのか」

「そうなんだ。最近はいないみたいだけど、ナオトがいる。本当に似ていてさ、怖くて……。だって、任務にいけばナオトに会うかもしれないじゃん」




 とはいえ、監視者が走流野家と同じ薄紫色の瞳をしているからという事だけがナオトを狙う理由ではないだろう。シュエンは言い切っていた。理由は走流野家に聞け、と。ならば、一代目であるヘタロウに真意を尋ねる他なさそうだ。


 では、王家がヘタロウを幽閉する理由はなんだろうか。いくら威支と手を組んでいるとはいえ、威支の都合だけで幽閉しているとはとても思えない。こちらはこちらで別の理由がある気もするが、今回の話しだけでは尾すら掴めない。


 何か見落としていることはないか、再度振り返る。そして、ある事に気がついた。


 上級試験や神霊湖と西猛の襲撃は、青島とイツキを遠ざけるか、あるいは困難な状況に陥るように仕組まれている。敵は、2人がナオトを守っている事に気がついているではないか。


 タモンがイツキを青島班に入れたのは、ナオトへ「常に精鋭部隊の者に監視させる」と約束したからだ。青島は、修行を盗み見る手引きをしてくれるほどに走流野家に感情移入している。この2つの情報をいったいどこで手に入れたのだろうか。


 コウマに探りを入れたい所ではあるが、神霊湖でナオトを襲った犯人はマヤではなかった事が判明している。


 眉間を指でつまんで盛大なため息を吐き出した。


 セメルが息子を襲わせるとは考えにくい。つまり、他にも内通者が潜んでいる。




「ナオトが監視者なわけじゃないんだ。自分の思い込みだけで襲うのはどうかと思うぞ」

「だけどさ……」

「もし、お前がその立場ならどうする。自分は殺していないのに、似ているからという理由だけで人間に襲われたとしよう。納得できるか?」

「ううん。でも、あの瞳……怖いんだ……」

「マヤだって薄紫色の瞳じゃないか。お前はマヤが怖かったのか?」

「全然怖くなかった」

「だろうな。マヤはお前達と同じ重度だから怖くなかっただけだ。ナオトが人間の姿じゃなければ、その恐怖心を抱くこともなかっただろう」




 話しを終わらせたところで、もう一度考える。


 問題なのは、真犯人と威支、あるいは真犯人と王家が仲間かどうか、だ。チョウゴが知らないだけで、トウヤや他の者は知っているかもしれない。


 悩めば悩むほど頭が痛くなる。


 いつになったら終わりは見えてくるのだろうか。

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