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第13話・優柔不断

 僕とキトは、幻惑の森付近にて妖の出現を待ち構えていた。それよりも先に感覚を刺激したのは、焦げた臭いと空高く立ちこめた赤黒い煙、そして悲鳴だった。


 多くの闇影隊と、逃げ惑う西猛の国民たち。その中に、大猿と巨犬の姿があった。


 氷のドームに閉じ込められたかと思いきや、脆いのか、すぐに壊され逃走を図る大猿。あいつとは一度だけ会話をしたことがある。大猿を追跡する赤坂班を追うようにして後に続いた。


 すると、急に赤坂班の動きが止まった。ヒロトが辺りを警戒する。




「なんで消えるんだよ……。あのデカさだぞ? おかしいだろ……」




 色んなニオイが流れ込んできているせいか、ソウジの嗅覚が潰されているようだ。鼻を擦っている。




「ダメだ、完全に見失った。ニオイはともかく、音すらしないとはな。赤坂隊長、どうする?」

「んー、引き返すしかないでしょーよ。手掛かりもなさそうだし、他の班と合流しよう」




 そんな赤坂班の会話を、僕は地面に張り付くようにしながら聞いている。僕と地面の間では、口を塞がれている生き物が呼吸をさせてくれと藻掻いている。


 赤坂班が引き返して、願い通り口を解放し、すぐに生き物の片手を背中に回して関節を決めた。




「久しぶりだな、猿」




 顔がこちらに向く。




「だあー! おまえっ! あの時はよくも邪魔しやがったな!」

「さて、なんの話しか説明してもらおうか」




 僕はナオトを守った。それが邪魔した事になるのなら、何が目的だったのか問い詰める必要がある。




「なぜお前達はあいつを狙う。ちょっと人離れしているだけの人間にすぎないだろう?」

「そんなもん知るもんか。俺達は命令に従って動いているだけだ」

「マヤか」

「もっと凄い奴だ。俺を解放しないと、そいつに殺されるぞ」

「どうせ殺されるなら、先にお前を片付ける。これで何の問題もない」

「ややややややってみろよ! がきんちょなんかにビビらないぞ、俺は!」




 強がりなのか、木に額を置いて鼻で荒々しく呼吸をしている。狼尖刀を背中に突きつけているせいだろうけど、本音を隠すのが下手くそだ。


 それにしても、任務で交戦した時のような獣らしさを微塵も感じない。半獣化状態でいることも理由の一つだが、最も理由として大きいのは猿が震えているからだ。たかが50センチの獣の爪に、大猿へと獣化できる生き物がどうして怯えているのだろう。




「リーダーが駆けつけるのが早いか、それともこの武器がお前を貫くのが早いか、わざわざ試してみたくはないだろう。だから、答えろ。どうして走流野家を狙うんだ」

「…………走流野家に聞けばいいだろ。そもそもの元凶はあいつらだ。何度も……何度も……俺を殺しやがって……」




 そう言って、ぶつぶつと独り言のように話し始めた。幻惑の森にいたライマルのような状況だ。まるで何かに取り憑かれているみたいで、こちらの声など聞こえていない。


 為す術もなく、猿が落ち着くのを待っている時だった。突如として聞こえてきた獣の咆哮に、猿と同時に西猛を向いた。




「やっべ、オッサンが怒ってるっ。こうしちゃいられねえ!」




 我に返り、いきなり獣化する猿。すると、先程とは一変し性格が真逆になった。




『世界統一は目前、全てを滅ぼす!! そこのお前、次に邪魔をした時は、その命もらい受けるぞ!』




 咆哮と共に、そう空へ叫んだ大猿は瞬く間に森を駆けて行った。頭上から降り注ぐ折れた枝を避ける。


 西猛に戻ると、ライマルが言霊を唱える声が聞こえた。雷雲が響めいている。落雷の先には巨犬と猪の姿、そして少し離れた場所にはナオトとセメルがいる。


 雷が地上を明るく照らした。巨犬と猪は麻痺した身体で地面をのたうち回っている。さらに、ナオトが包火で攻撃した。荒れ狂った重度が2人に牙を向ける。


 だが、そうはさせない。




『やめろ。僕の友達に手を出すのは許さない』




 巨体を支えている足が細くなっていき、バランスを崩す2体。そうして、海へ飛び込み逃走した。


 それから、盗み聞きで得た情報により、青島とイツキが海に飲まれたとの事を知った。もう一体の巨犬諸共、沈んでいったそうだ。


 僕の足の向く先が、海と、ナオトの方向で迷う。そこにキトが現れた。



 

「だから言っただろう。闇に触れるな、と。重度か、ナオトか、決めるときじゃないのか?」

「ナオトは僕の友達なんだぞ!?」

「だからなんだ。今のままではどのみち守ることなどできない。手の届く範囲を知れ、ユズキ。お前が思っているよりも短い手なんだ。出来る事は限られている」




 キトの口調には明らかに怒りがこもっている。




「青島とイツキがいないんじゃ、奴らの思うつぼだ……」




 隣にいる子は僕の代わりだろうか。たしか、イオリと呼ばれていた。2人だけでは重度に勝てない。




「ナオトが心配ならずっと側にいてやればいい。重度を始末したいのなら、追うべきだ。追えば、結局はナオトに繋がる。土地神の情報も得られるかもしれない、これで一石二鳥だろう」

「そうだな……」

「しっかりしろ、ユズキ。お前らしくなれ。人間性を捨てろ」

「わかってる」




 ナオトに背を向けて歩く。向かうは、大猿が逃走した方向だ。今ならまだニオイを追える。

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