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第1話・不法侵入

 イツキを始め、コウやアマヨメ、ライマルにトラガミ。そしてラヅキという摩訶不思議な生き物を直接目にした。もうこれ以上なにを驚くことがあるだろうか。




「飛んでるぞ、あいつ!」




 僕は、とある生き物から全速力で逃げている。







 ナオトと別れて数日後。僕を南光の国へ案内してくれたのはラヅキだ。赤いレンガの壁の付近で身を潜め、土地神について話しを聞いている最中だ。




「シュウ、それが土地神の名だ。彼女は南光を守っている」

「どの辺りにいるんだ?」

「トラガミ以外の土地神は、人の子に封印されているのだ」

「それはまた厄介な……。ということは、南光にも影響が?」




 大きな欠伸をしながら、キトが答えた。




「南光では植物が育たない。北闇が供給してるらしい」

「国によって違うのか。それにしてもまた人間か……。どう接触するかな」

「悩んでいても仕方がない。ラヅキは目立つからまた体内に帰ってもらうとして、俺が一緒に行こう」

「お前も十分目立つじゃないか」

「人間に化ければいいんだろう? お手の物だ」




 まさか、そんな能力まで備わっていたとは。キト曰く、長時間の使用はできないそうだ。




「聞いていないぞ」

「必要なかったからな。だが、この世界は他と違う」




 言いながら、姿を変えていく。そこには僕に似た男が立っていた。




「これで兄妹だ」




 ラヅキは僕の体内に戻り、キトと一緒にレンガの壁を登った。通行証など持っていないので、こうする他ないのだ。


 飛び降りたところで、キトの言葉を思い出す。植物が育たないということは、身を隠す場所が限られるということ。




「しまった……」




 僕の独り言にキトは笑っている。僕とキトを小隊が取り囲んだ。




「誰だ、てめぇ!!」

「やめなよ、クロム。他所様にも親切に、優しい口調で話しかけなきゃ」

「不法侵入者に親切にする奴がいるかよ、この馬鹿」

「そうだよね、仲間にですら優しくできないんだもんね。期待した僕が悪かったよ」




 ここで逃げると2度目の侵入は困難になる。大人しく両手を挙げて降参の意を示した。隊長らしき若い男が一歩前へ出る。




「んー、困ったね。どうして壁から入ってきたの?」




 キトが答える。




「迷子だ」

「あはは、甘く見られてるのかな? そっちの女の子はニオイや気配がないね。逃がしてあげたいけど、この国にも決まりがあるんだ。王家へ連行させてもらうよ」

「……おっと、それは困る。遙々ここまで来た意味がない」




 僕の手を握ると、キトは適当な方向へ走り始めた。最中、隊長が部下へ指示を出す。




「リンの力は温存。クロムは前方、デスは後方から追跡。できるね?」

「はい、ガイス隊長。追い込みます」

「ん、上出来だよ、デス」




 地面に大きな影が現れた。頭上を仰いで見ると、クロムと呼ばれた少年が羽ばたきながら通り過ぎていくではないか。黒い羽を持つ半獣人だ。後方から追いかけてくるデスもまた空を飛んでいた。同じく黒い羽を持ち、その羽一枚一枚で攻撃してくる。先は針のように尖っていて、しかも芯が太く長い。


 よく観察すると、両側の腰に装着している袋の中に一度羽を突っ込んでいるのがわかる。抜いた手には液体が付着していて、片方は黄色っぽく、片方は紫色だ。液の正体が判明したところで、羽が黒いためどれに何が付いているのか区別のしようがない。


 しかし、やはり驚かされたのは――。




「飛んでるぞ、あいつ!」

「いいから足を動かせ。人里を離れる」




 まさか、人が飛べるだなんて。


 こうして逃走劇を繰り広げたわけだが、どこに隠れても空中からすぐに見つかってしまう。加えて、クロムの攻撃はさらに達が悪かった。




「おらよ!!」




 腕を一振りしただけで、地面が波のようにうねり襲いかかってくる。岩の裏に身を潜めても砕かれてしまい、結局はまた走る羽目になる。


 そうこうしていると、波の音が聞こえてきた。海だ。


 砂浜で足を止めたキトはクロムに向き、僕はデスの方に向いた。




「追い詰めたぜ、侵入者さんよ」

「それはどうかな」




 キトが構えを取った。




「やめろ、キト」

「いいのか?」

「死人を出すわけにはいかない」




 構えを解き、息を吐き出す。




「僕がやる」




 狼尖刀を解放し、今度は僕が構えを取った。




「小細工は無しでいこう。お前、名をガイスと言ったな」

「そうだよ。君の名前は?」

「ユズキだ。僕はある目的のためこの国にやって来た」

「うん、話しが進むね。聞かせてもらおうか」

「シュウを捜している」




 その瞬間を僕は見逃さなかった。ガイスは「誰だ?」といった顔をしているけど、隣にいる女の子はそうではない。ガイスの背に隠れ、目をきょろきょろと動かしている。ターゲットは彼女に絞られた。




「リン、お前に尋ねる。シュウはどこだ」




 ガイスの視線がリンへと向けられた。




「心当たりがあるの?」




 彼女は激しく首を横に振って否定した。

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