探索
マーロックは少し困っていた。それは、いつも買い取ってくれる相手が今村の外に出かけているらしく不在で、その為にラーツ村での滞在期間が伸びてしまうからだ。
何もすることが無かったので別行動を取ることにして、マーロックはサフェルにお金と簡単に書いた近辺の地図を手渡す。
「まずは、最初に冒険者ギルドへ行って、そこでギルドカードを作ってもらうのじゃ。それが身分証の代わりになる。分かったかの?」
「はい。」
「それじゃあの、サフェル。後、儂は今日は帰りが少し遅くなる。この機会に友人に顔を出そうと思ってな。夕食も外で済ませてくると良いじゃろう。」
「分かりました。いってきます師匠」
サフェルは宿を出てまず、この村のギルドへと向かう。
ギルドはとてもわかりやすい建物だった。建物自体が大きく、壁には剣がクロスされている模様の旗が飾られている。
サフェルは、ギルドの中に入っていく。
ギルドの中は冒険者達の喧騒で賑わっていた。
サフェルはとりあえず、人の少ないカウンターを目指す。
「あの、ギルド登録をしに来ました。」
「済まないがここは依頼受付用なんだ。そういうのはそっちの冒険者管理カウンターに行ってくれ。」
「すいません。ありがとうございます。」
サフェルが移動しようとすると、後から入ってきていた、20歳くらいの3人組の男性冒険者が笑い声をあげる。
「アッハハハッ!コイツギルド登録だってよ。ギルド登録をするってことがどういうことが分かってんのか?」
いるよな、こういうヤツ。つか、テンプレ過ぎだろコレ
「分かっているよ。冒険者になるってことだろ?」
サフェルは、面倒だと思いながらも返答する。こういったのは無視する方が面倒くさいことになる。
「一応分かってるようだが、お嬢ちゃんには無理だな。行くとこ変えた方がいいぜ。お前なら相手してやるよ。」
目の前の3人はギャハハハハと下品な笑い方をする。
しかしサフェルは女と思われたことがショックで現実逃避し始める。
分かっているんだ。父さんだって、女顔だし、母さんは普通に美人だって言われてるし、その2人の遺伝子を受け継いでいるんだから、仕様がないじゃないか。でも俺のこの鬱憤はどうしたらいい?
サフェルの反応が無くなり、フードで目元を隠しているので、ハッキリとした表情が読めない。
しかし、男は自分が無視されていると思い、サフェルにキレる。
「おい、嬢ちゃん。お前、何なめてんの?こっちが親切にしてやってるってのに、無視ってなんだよ!?おい、聞いてんのか!!?」
嬢ちゃんという言葉が更にサフェルに、グサッ、グサッっと突き刺さる。もしこの世界にHPかあったら既にレッドゾーンだろう。
「この糞ガキが痛い目見ねぇと分かんねえようだなぁ!女は黙って従えばいいんだよ!」
男はそう言うと、サフェルの手首をつかみ、持ち上げる。
流石にここまで来ると、ギルドの受付員や、一部の冒険者が止めようと動き出す。しかし――
(ブチッ!)
サフェルは自分の頭の中でそんな音がしたような気がしたが、もうそんなの関係ない。
「嬢ちゃん、嬢ちゃん、うるせーんだよ!間違えられるのはしょうがないけど、この怒りをどこにぶつければいいんだよ!?」
サフェルは思わず叫ぶ。完全にキレていた。一応言っておくがこの叫びは自分に対してだ。
「んだとてめぇ!どうやら死にたいようだな。」
あんなふうに叫べば勘違いも必至だ。
そう言うと男は剣の柄をにぎる。同じパーティーの仲間も流石にこれはヤバイと思い制止しようと声をかける。
「おい、アルトさすがに殺すのはまずいって」
「そうだぜ、少し落ち着こう」
「ああ?お前らはこのガキに舐められたままでいいのか?」
「そうじゃねぇけどよ・・・」
「くっそ。わーったよ!」
そう言うとアルトという男は剣の柄から手を離す。
その様子を見て周りの人間は息を吐く。しかし――
「でもこれくらいはしなきゃなぁぁあ!!」
ドタンッ!!
叫ぶと、サフェルをそのまま床へ叩きつけた。
「っ!」
床からすぐに立ち上がる。
びっくりした〜。急に何なんだ?つか、こいつ誰だ?
サフェルはと言うと、現実逃避と怒りのダブルコンボで目の前の存在などどこへやら吹き飛ばされてしまっていた。そのため、目の前のアルトのことなど全く、目に入っていなかった。
いや、持ち上げられた所までは何となく覚えているんだが・・・。うん。てか、色々思い出したらまたイライラしてきた。
「おいこのガキ!この程度じゃ、済まさねぇぞ!土下座したって許しゃしねぇ!」
「ンだよお前。なんだ?アルトだっけ?急に人投げといて、許さないって、こっちの台詞だろ。」
「ふざけんなよ糞ガキが!お前やっぱ殺すわ」
アルトは剣を抜き放つ。
「殺す?ははっ!殺せるの?俺を」
「馬鹿にすんじゃねぇ!!!」
ここでコイツを殺すのはちょっとマズイかなぁ?半殺しなら大丈夫だよね。多分・・・。
「うおるぁぁあ!」
アルトは盛大に声をあげつつ、大きな肉厚の剣を上段に振りかぶる。
うん?気迫はいいけど、すげぇ遅いな
サフェルはアルトの攻撃を半身になって避ける。ガシュッ!と音を立てて剣が床に突き刺さる。
「ちゃんと当てないとここの修理代高くなるんじゃないの?」
軽く挑発してやる。こういう相手は頭に血が登るほど攻撃が単調になる。
「うるせー!」
面倒くさい。五月蝿い。よし、さっさと終わらせよう
サフェルはバランスを崩したかのような隙をわざとつくり、アルトに突きを出させる。アルトからすればこれ以上ない隙に見える。そしてその判断は迷う事なく、突きをさせる。
そして、突きを交わし、掌底をアゴの下から食らわせる。
「うぐっ!」
アルトは何が起こったのかも分からずに、意識を飛ばされる。あっという間に終わってしまったので、アルトの仲間の2人は呆然としていたが、我に戻った瞬間、それぞれが武器を取り出し、1人がサフェルへ攻撃を仕掛ける。
サフェルは1人目の横薙を屈んで躱し、そいつの足を踏む。そして、もう片足を相手の膝の裏に回し、首を掴んで地面に倒し、顔面に蹴りを入れて、また、意識を飛ばしていく。
武器を構えている残り1人は、半ばパニックになっていた。
そして勝てないと判断したのか
「すんません!ゆ、許して下さい!!」
その男は土下座をしている。
「武器を抜いたんだ。タダで済まされるわけがないだろう?だが、今回限りは殺さないでやる。俺は敵対しない限り何もしない。覚えておけ。後、その・・・アルト?って奴にも言っておくことだな。次そいつが襲ってきてお前が一緒にいたら、恐らく殺してしまうからな。止める自信がないなら、そいつとは離れることだな。それじゃ・・・」
サフェルはそう言うと、その男のアゴを意識ごと蹴り飛ばす。
「んーー。」
サフェルは伸びをすると、ギルド登録をしに、カウンターへむかった。
止めに入ろうとした者達は、サフェルがあっさりと倒してしまったので、軽く肩透かしを喰らった気分だった。そして、その身のこなしや戦闘技術に対して、驚愕していた。
「んじゃ、ギルド登録お願いします。」
「君、凄いんだね」
カウンターの若い女性がにこやかに言った。流石にサフェルの強さに驚いていたが、ここでは、荒事などしょっちゅう起こる。そうなると、見た目と反して強い者などよくいるのだ。普通は身のこなしなどで測るのだが、先ほどのように余りに強さの差があると測りきれないのだ。
「おっと、ギルド登録だね。本当は君みたいな子には、あまり勧めないというか、拒否する事もあるんだけどね、君なら大丈夫だね。」
ギルド側としても、冒険者となってもただ死にに行くような、力の無い者を冒険者として認めるわけにはいかないのだ。それでも、死者は多いのだが。
「ギルドカードはこれよ。ここに、君の血を付けてもらえる?」
「分かりました」
ギルドカードは、鉄のようなものでできており、表面の端にトゲが突き出ている。これでサフェルは指に傷をつけ、ギルドカードに血をつける。すると、ギルドカードは淡い光を発した。
光がおさまり、カードを覗くとそこには、
名前 サフェル
職業 冒険者
ギルドランク E
備考 なし
とだけかいてある。
「うん、出来たね。再発行は出来るけど、審査とか、追加料金とかあるから無くさないようにね。あと、ギルドランクについてだけど、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、というふうに上がっていって、ランクが高いと受けられる依頼とか、色々といい事あるから頑張ってね。」
サフェルは頷くと、さっさとギルドから出ていった。面倒事に巻き込まれるのは嫌だったのだ。
「世界には面白い子もいたもんだね」
それは、ギルドのなかか、どこからともなく聞こえてきた言葉だった。
その後サフェルは村の中を練り歩き、自分の衣服や、解体用のナイフと、いつか必要になる短剣、そして矢を買って夕食をとった後宿へと帰った。
そして、マーロックはというと村のとある酒場にきていた。
「久しいの、グラズ」
「アンタが来るなんてな。注文は?」
「そうじゃの、今日は飲みたい気分じゃないの。」
「ふん。そういう事か」
グラズはカウンターの下の魔方陣を起動させる。これは、風を操り、音を漏らさないようにする結界だ。
この酒場は、知る人ぞ知る情報の集積地だ。ここで、情報屋は情報を買ったり、売ったりする。基本的に自分で集める物だろうが、情報を代金に酒を飲んだりするのだ。また、遠方のものは集まりにくく酒を割増で買うことで秘密裏に取引しているのだ。
「アンタは昔の好という事で金を取らないが、あまり使ってくれるなよ。」
「分かっておる。」
「ならいい。」
「それでじゃ、フェリグ大連峰とルーザス山脈の間にあるあの施設について知っておることを聞きたい。」
「いいだろう。俺も全て知っているわけではないがな。あの建物が使われている時何をしていたかは分からない。だが、数日前、あの建物の隣から煙が上がっていた。臭いがしてな、あれは人を燃やしていたに違いない。それと、そこから出ていく奴らの乗っていた馬車には、新神教のマークがあった。」
「新神教というと前からある宗教じゃな。裏では何やら色々と後暗いことをやっておったようじゃが。」
「ああ。奴らはいつも尻尾切りだから、実態は把握し切れていないのだがな。それでだ最近何やら行動が活発化していてな。」
「最近と言うと?」
「大災害の後からだ。」
「それで何を?」
「さっきの話に戻るが、あの場所に入ってみたが、どうやら人体実験をしていたようだ。何についてかは分からん。」
「一体何の為じゃ?」
「噂じゃ、この大陸を支配しようとしているとかなんとか。」
「その噂の信憑性は?」
「皆無だ。情報が少なすぎる。」
「そういえば、あの場所でお前の連れていたローブの子、サフェルと言ったか?そいつがそこにいるのを見たことがあったな。」
「やはりの。」
「そういうってことは心当たりがあるのか?」
「あやつは、サフェルは普通では有り得んほどの魔力を有しておる。」
「お前がそこまで言うとなると、何か危険でもあるのか?」
「いや、わからぬ。じゃが、何故か放っておけんのじゃよ。」
「過去の精算のつもりか?」
「そんなつもりは毛頭ない。今日はありがとう。もう帰るとするかの。」
「そういえば森の中で何か動きがある。この村に何かあるかもしれない。これを聞いてどうするかはアンタに任せるよ」
「そうか。それじゃあの」
どうするかの。サフェルもおるしの
悩みの種はまた増える一方だった。
マーロックはその足で宿へ帰り、眠りにつく。
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サフェルとマーロックは宿の食堂で朝食を取っている。
「そういえばサフェルよ、ギルドカードを作りに行ったじゃろが何も無かったかの?」
「・・・あ、うん、何もありませんでした。」
サフェルはアルトら3人組のことが脳裏を過ぎるが無視する。
「そうか。どうせ、今日も暇じゃから、村を好きしていて良いぞ。」
「・・・はあ、分かりました。」
2人は食器をカウンターへ返し、別れる。
さて、どうしたものか、何もやることがない。とりあえず適当に散歩でもするかな。
サフェルは午前中村を歩き回り、屋台で買い食いをしたり、裏道で見つけた猫が付いてくるので、遊んでやったりと、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしていた。
こういうふうな時間を過ごすのもまあいいかな・・・。ん?
サフェルは裏道の方で小さな女の子が見えた気がして、気になったので追いかけてみることにした。
足音をたてないように、サフェルは追跡する。
こういうのって面倒なことになる典型パターンだよな・・・。
数分ほど歩くと、少女は数人のこと男達の下へ着いた。
「今日はどの程度稼いだんだ?よこせ。」
男は少女から小銭の入った袋を奪いとる。
「これで本当にお母さんは助かるの?」
「ああ、お前が俺達にちゃんと金を返せばなぁ」
そう言って男は袋の中を確認する。
「ああ?全然はいってねぇじゃねぇかよ!!この役立たず!!」
男はそう怒鳴ると、少女を殴ろう構える。
少女は目をギュッと瞑り、来たる衝撃に怯えている。しかし――
「ああ?」
「こんな女の子に手をあげちゃだめだよおじさん」
男の手はサフェルによって受け止められていた。
「んだてめぇ!?ん?この!離せ!!」
サフェルによって受け止められた手はビクともせず、まるで石像に掴まれているかのようだった。
そして、男はサフェルを殴り飛ばそうとする。
「いいよ。」
ゴッ!!
「うぐっ!」
サフェルは男を放すのではなく投げ飛ばした。
「てめぇなにしやがる!!」
「いや、何しやがるって襲いかかろうとしたのはそっちだろ?」
「うるせぇ!おい嬢ちゃん、俺達を相手にすることがどういう事かわかってんだろうなぁ!!」
「いや、知らないよそんなの。ねぇ、どういう事?」
サフェルは自分の後ろにいる少女に話しかけた。
よく見ると少女はサフェルより、少し年下くらいで、服装はボロボロ、足は裸足だった。
「えっと、この人たちはこの村の裏組織みたいな奴のひとです」
「それなら良かった。勢いはんぶんで飛び出したからさ。こっちのおじさんが悪い人達ってことだね。」
「それがどうした?お前も俺達のところでこき使ってやるよ!」
やっぱり面倒なことになったな。まあ、いいや適当にボコそう。
サフェルは男達に向かって走り出し、手前の男の顔面に膝蹴りを喰らわせ、そいつの頭を支えに飛び越え、次の男に踵落としをする。そうして、躱し、攻撃し、全員を撃沈させる。
「ふぅ・・・。」
「あの、ありがとうございます。あなたは一体何者なのですか?」
「俺は、サフェル。一応言っとくけど男だからね。」
「えっ・・・。」
「まぁ、そういう反応するよね。いいんだ、いつものことだから」
流石にサフェル自身もそういった反応や言葉にほんの少しだけだがなれてきている。
「あっ、そういうわけでは・・・。すみません。」
「いや、だからいいって。それで君、家族とかいるの?」
「いえ、いません。ひとりです。」
あれ?さっき母親がどうとか言ってたような・・・。
「ひとりで問題ない?」
「私には仲間がいるので、大丈夫です。」
「・・・そっか。仲間がいるなら安心かな。その場所まで送ろうか。また絡まれないとも限らないし。」
「いえ、大丈夫ですよ。これ以上迷惑はかけられませんから。」
「大丈夫、大丈夫。どうせ、今日はただ散歩していただけで暇だから。」
「は、はぁ・・・それじゃあ、お願いします。」
サフェルと少女は歩き出す。
「そういえば君の名前は?」
「ソファナです。」
「そうか、よろしく。ソファナ」
「なにかお礼をしたいのですけれども、この通りお金も何もないもので・・・。」
そういって目の前の少女は、軽く腕を広げた。何も持っていない事をアピールするかのように。
「お礼なんてそんなのいいよ。」
「そ、そうですか。」
少女はいぶかしげにこっちを見ている。
そっか。無償の優しさに慣れていないのか・・・。しかし、そんなに年も離れていないはずの俺も警戒されているとはね。
「じゃあ、この村の案内をしてもらおうかな。」
「そんなことでいいのですか?」
「こんなことがいいの」
それから結局2人で村の中を歩き回り、屋台で買い食いしたりと少しの間遊んでいた。
「おっちゃん、これ2本。」
「あいよ!!お、可愛い嬢ちゃんが二人組か。サービスしてやるからあまり遅くならないうちに家に帰りな!」
「ありがとう」
屋台のおじさんから結局4本もの串焼きをもらったサフェルは、満面の笑みを浮かべている。
「その笑顔でおいちゃんあと10年は頑張れそうだぜ!!」
「おじさん、ホモ?」
「どこをどう間違えたらそうなるんだ!?全く嬢ちゃんは面白いな」
「ま、いいか。またなー!」
屋台のおやじさんに手を振ってはなれていく。少し裏に入った所、といっても街頭があり、目の前の通りの階段に腰をかけ、買ったばかりの串焼きに齧り付く。
「うん。うまい。」
「これ、私も食べちゃってよかったの?」
「いいよ全然。」
串焼きを夢中で食べ、満足したような笑みを浮かべるソファナ。しかし、次の瞬間にはどこか憂いたような表情を浮かべている。
「私だけこんないい思いしていると思うと皆に悪いような気がする。」
「じゃあ、今度はソファナの仲間と皆で来よう。今日はその下調べだ」
「なんかその理由すごい後付け感・・・。」
「ま、まぁまぁ・・・。それより、おなかはいっぱいになった?」
「うん、ありがとう。」
「そう言えばさ、昼間ソファナはどうしてあんなところにいたの?それに聞き間違いでなければ母親がどうか言っていたような」
「あぁ、あれね。私はああいう風に子供にお金を集めさせて、それをもらっていくような連中を狙って、逆にお金を稼いでいたの。でも今回のあの人たちは、ちょっと危なかったな。」
ソファナは稼いでいると言ったが、どっちにしろ盗っていることにはかわりはない。しかし、ソファナのような人間はいくらでもいる。まして、あちらからすればそれが当たり前で、それをしなければ生きていく事などできないのだ。だから、それを咎めることはできない。それに、サフェルにはどうしようもないことなのだから。
「ふーん。そうだったんだ。」
「そうだったんだって、サフェルも結構危なかったんだよ。それに、彼らが上に報告して狙われるってこともあるんだから。」
裏の世界では、信頼や実力がものを云う。これを確立できなければ、まわりの組織からつぶされかねない。それを防ぐために、部下の失敗はどうにかして帳消しにしなければいけない。そうなれば確実に成功する方法でやり返してくる。
また、面倒臭い事にまきこまれるのかなぁ、と思うがどうせもう少ししたらこの村から離れる事になるからまぁ大丈夫だろうと考える。
しかし、ふと
「ソファナも狙われたりしないの?」
と聞いてみた。
「わたし?多分大丈夫じゃないかな?私たちはあそこであったのが初めてだったし、サフェルが一人で倒しちゃったから。」
「ふーん。それならいいんだけど。」
「ふふっ」
ソファナはサフェルの言葉を聴き突然笑い出したのだ。
「何故に笑うっ!?」
「いやだって、サフェルったら自分よりも他の人の心配ばっかりなんだもん」
「割と普通の事だろ?」
「そんな事ないよ。結構珍しいよ。」
この世界では、地球とは違い、人の命がとても軽いのだ。それにソファナが生活しているのは貧困区。他人の事など二の次、三の次だ。自分が生き残るだけでも必死なのだから。
「サフェルっていったいどこの人なの?そんな考え方する人に全然あった事ないよ。」
サフェルは思案顔になっている。
こういうときのテンプレって、極東にある島国とかって云うべきなんだろうけど。
「・・・」
「言い辛いことなら別に言わなくていいよ。」
答えなくてもいいなら今言う必要はないだろう。ソファナも今日あったばかりの人間に詮索やよけいな追求はしてこないだろう。
「まぁ、またの機会にね。といっても次にこの村に来るのは早くても来年の春くらいだと思うけどね。」
「そういうならいいけど。でもサフェルってそんな事言って結局なにもしなさそう。」
っ!
ソファナの言葉を聞いた瞬間にサフェルは心臓が大きく鼓動しズキリと胸が痛むのを感じた。何だとは思っても原因など安易に予想がつく。なぜならそれは理由が一つしかないからだ。思い浮かぶのはあの少女の顔だけだ。あそこの仲間たちの顔で唯一、きれいな顔を思い出す事ができる。
「サフェル、急にどうしたの?そんなに黙りこくっちゃって。」
その言葉に思考は浮上し、戻ってくる。そして、その場を立ち上がり、歩き出す。
「何でもない。今度は何を食べようかと思ってね。」
「まだ食べる気?っていうかそれ絶対嘘でしょ」
ソファナは後ろを追いかけてくる。
「さってね〜」
「何それー」
「それよりも早くしないとおいていくよ。」
「ちょっと、急にそんなに早く歩かないでよ。」
無理矢理なごまかしでも話題を反らせた事に安堵している自分がいる。ことこの事に関してのみは、間接的にも直接的にもどうしても自分は触れられたくないらしい。
空が真っ赤に染まった頃、貧民街の真ん前にいた。
「ここまで来れば大丈夫だよ。じゃあ、私はこれで。」
「うん、じゃあね。また明日もこの村のこととか教えてもらえないかな。」
「いいよ。といっても、今日はいろいろお世話になっちゃったけどね。じゃあ、明日の朝またここで。」
そして2人はそれぞれの帰る場所へと向かって歩みを進めた。明日もまた、楽しい一日になる事に思いを馳せながら・・・。
投稿時間がバラバラですみません。
今回もツッコミどころの多いことだと思いますが、ご都合主義、テンプレという事でどうかご勘弁を・・・。