二章 23 二人の偉人
今話で新しい人が登場しますが、物語には影響与える程今後は登場しない…予定です(多分)
文才ない自分があまり登場人物増やしすぎても混乱するだけなので…
「きゃあああああ」
死者の大森林に悲鳴が響き渡った
突如リリアが悲鳴をあげたのだ
二日目もなんとか無事に死者の大森林を歩き抜け、野営できる場所まで到着
火を起こし、そこらの石を簡単に組み上げカマドを作り、設置した鍋に熊肉を投入し、ひとしきりみんなが満足した頃(一部の人達はまだ食べている)にそれは訪れた
今日も疲労で早めに横になるべく毛布に丸まろうとしたリリアの傍らを何かが横切った
正確には何かの手のようなもの?なのだが
「リリア!」
悲鳴が上がるや否やレフィルは大剣を手に持ちリリアの側へ駆け寄る
ヴァージルも曲刀を手に持ち油断なく辺りを伺っている
「大丈夫かいリリア?」
「い、今、私のお尻を誰かに触られた」
「…は?」
リリアの言葉にレフィルとヴァージル、ミレリアは一瞬意味がわからず思考が止まる
他のメンツはというと…
ルシーリアは素知らぬ顔で食後の茶を飲み、イルフリーデは相手の殺気、敵意がないのを確認し座り直している
ベアトリスはきょとんとした表情
朱姫とレイラと狐太郎は苦笑い
【やれやれ、毎回こういう事されると討伐されるぞ……クロノリア殿】
朱姫は虚空に向かって嗜めるような口調を投げかけると、突如一部の空間が歪みそこから一人の老人が出て来た
魔術師特有の黒の三角帽子に黒いローブに杖姿
長い顎髭は熟練の証か誇らしげに空いた手で梳いている
「それは困るな。未だににアレには歯が立たん。内緒にしてくれると助かるんじゃが…」
【それならやめればよかろうに】
「ふぉっふぉっふぉっ。そこはホレ、若い女子がいるとな…」
「クロノリア、いい加減止めないと妾も怒るぞ」
「む?ルシーリア殿もいたのか。いや、久々に何やら美味そうな匂いがしての」
「なら普通に登場すればよいではないか」
「そこは腐っても魔術師と言うものよ」
【尻を触るのは魔術とは関係ないではないか】
ルシーリアと朱姫のツッコミにもめげずに、クロノリアと呼ばれた老人は狐太郎にチラリと視線を向けた後、ゆっくりと焚き火に近づくと朱姫と狐太郎の間にストンと座り込んだ
どうやら朱姫とルシーリアの知己らしい
しかし死者の大森林をいかな実力がある魔術師と言えど一人で歩き回るのは些か異常である
レフィルとヴァージルは未だ訳が分からずにリリアを守るように立っている
それを見たクロノリアは柔らかい表情を向ける
「そう警戒せずともよかろうて。何もしやせん」
「警戒させた当人がよう言うわ」
【リリア大丈夫だ。次何かあったら強制的に成仏してもらう】
「う、うん…って成仏!?」
「…クロノリア!?」
「もしかして時の大魔術師クロノリアか!」
「──!?」
リリアは言葉の意味がわからず首を傾げ、警戒していたレフィルとヴァージルとミレリアは再び名前を聞いて驚いた
ミレリアは言葉が出ないらしく目を見開いて固まっている
当のクロノリアは焚き火で焼かれた熊肉の串焼きをモグモグ食べていたが、4人それぞれの驚き様に笑みを浮かべる
「ふぉっふぉっふぉっ、まだまだわしも捨てたもんではないのぅ」
「ほ、本物…?」
「本物じゃよ。まぁ死んでいるがな」
その言葉にリリアはサーッと顔を青くする
クロノリアは残った串の熊肉を口に頬張ると空いた串を焚き火に放り込み、新たな串焼きに手を伸ばすと、リリアらに視線を移す
「うむ、久々の飯は美味いのぅ。まずは座ったらどうじゃ?」
クロノリアの言葉でリリアらはゆっくりと座る
心なしか距離をとっている
というか死人が食べ物を食べると言うのが信じられないのだろう
「ずいぶん警戒されたもんじゃな…」
「それはお主が悪いのじゃ。次やったら妾も黙ってないゆえ気をつけよ」
ルシーリアはじろりとクロノリアを睨むが彼はどこ吹く風で熊肉を頬張っている
「ルシーリア殿は怒ると怖いからのぅ。気をつけるとしよう…ところで、もう一人呼んでも良いかの?」
その言葉で再びリリアはビクリと身を震わせる
「ふむ、誰じゃ?」
ルシーリアの言葉にレフィルらを見つめニヤリと笑うクロノリア
「レナード…と言えばわかるかな」
「──!?」
「帝国の赤鬼…」
「ほぅ、遠い離れた地でその二つ名を聞くとは思わなかったぞ」
呟いたミレリアの言葉に反応したのは、低い、それでいてしっかりと芯のある声だった
いきなり背後からした声にレフィルとヴァージルは振り返った
暗がりから白銀の甲冑を着た、身の丈180センチはゆうにありそうな偉丈夫が現れた
白髪がまじった長い黒髪を後ろに撫でつけ、短く切りそろえられた立派な顎髭を蓄えている
外見の年齢は50を超えた辺りだろうが、立派な体躯から発せられる威圧感はまだまだ現役で充分通用しそうだ
今度はレフィルとヴァージルが息を呑む
レナードと呼ばれた男はレフィルとヴァージルを一瞬だが射抜くような目を向けた後、ニヤリと口元を歪め近付いてきた
彼は甲冑を着ているのに一切金属音を鳴らさずに、レフィルとヴァージルの間に腰を下ろすと、先程二つ名を呟いたミレリアに視線を投げた
なぜ遠い地でその名を知ってるのか純粋に好奇の視線である
ミレリアは些か興奮気味に、だが一呼吸置いて丁寧に言葉を紡いだ
「私は──ロマレイア帝国の現国王の第二王女ミレリアと言います」
「ほぅ──」
小さく感嘆の声をあげるレナード
「レナード元帥のお噂は今でも我々王宮の、国民の語り草になっております。尊敬しております」
「ふふん、どうせ禄でもない噂であろう?」
「あ、いえ…」
「ふぉっふぉっ、数ある戦場で幾多の猛者の首級をあげ続け、連戦連勝負け知らず。敵国からは返り血を浴びながら戦い笑う姿に赤鬼と恐れられた男、じゃが──」
クロノリアの説明にレフィルとヴァージルは聞いたことがあるのか羨望の眼差しをレナードに向けるが、当の本人は不貞腐れた表情だ
「後に反乱を計画した首謀者として、逆賊として捕縛の命が秘密裏に成され、勝利した戦の凱旋後に捕えられると、側近の部下共々その日のうちに処刑された。であってるかのぅ?」
クロノリアの言葉にミレリアは沈痛な表情でコクリと頷く
「…はい。王宮にある歴史書にもそう綴られています。しかし私はこれには陰謀が絡んでいると思っています。それに、レナード元帥がそう言う事をする御仁には思えなかったのです。なので不躾ながら聞いてもよろしいでしょうか」
「本当に反乱を企てた…か?」
レナードのセリフにミレリアは再び無言で頷く
「答えは否、だが…俺の事はどうでもいい。気になるのはその後の帝国はどうなったか、だ。俺がいなくなった後も版図を広げられたのか?王女がいるから国はあるのだろう?」
「王宮にある書物にはレナード元帥亡き後、ヘメーロスなる人物が元帥の座に付くも連戦連敗。このヘメーロスと言う人物については詳しく載っていません」
「なに!?ヘメーロスが元帥だと?」
ミレリアが出した名前にレナードは反応する
「レナード元帥は知っているのですか?」
「同期だったからな…一応将軍という地位にいたが、実力はからっきしで貴族の親父のコネと金で買った地位ともっぱら噂だった。将軍のくせに慎重論ばかりで戦場にでたがらない臆病者よ。口だけは達者だったがな。なるほどな。奴が率いたなら連戦連敗も頷けるわ」
ニヤリと笑うレナードだが、その表情が凍り付く爆弾がミレリアの口から発せられる
「それも書物にはヘメーロス元帥の言葉があり、「私が負けレナード元帥が勝ち続けられたのは彼が他国と繋がっていたからだ」と──」
「な、なんだと!?」
途端に顔を真っ赤にして激高するレナード
「死人に口なしとはよく言ったものじゃな。大方そのヘメーロスという奴は自分が負けたのはレナードのせいじゃと言ったのじゃろうな?」
「うぬぬ…」
ギリギリと歯を食いしばり怒りの表情のレナード
「俺がどんな思いで戦っていたのか知らずに…勝ち続けると言うのがどんなに難しいか…」
「ふぉっふぉっふぉっ。こんなに国を思う男が反乱を企てるわけないと思うがのぅ?恐らくそのヘメーロスと言う男が垂れ流したデマであり、それの後ろ盾には貴族の父親が付いていたのであろうよ。してそのヘメーロスなる男は負け続けた責を負ったのかの?」
「いえ…体調が優れぬと言う理由で最後は元帥職を辞してますね」
「第二王女よ。そのヘメーロスの一族──カスバール家は今でもあるのか」
カスバール家と聞き、ミレリアの身体が一瞬強ばる
「……今は帝国の宰相です」
「な、なに?それは本当か?」
「はい…」
「…ちなみに帝国はまだアルス教信者一択か?」
その問にミレリアが頷くと、「そうか」と盛大にため息をつくレナード
「アルス教は結構版図を広げとるようじゃの」
「行けることなら再び帝国まで出向いてカスバール家と国に根付いているアルス教を根絶やしにしたいくらいだが…」
「一体アルス教には何が…」
二大有名人の言葉にアルス教への疑念がさらにつよまるミレリア
「それはわしらの口からより、各々の目と耳で確認した方がよいじゃろう」
「…そうだな。願わくばアルス教に鉄槌を下してくれると俺としても溜飲が下がる」
返答に困る言葉を吐くレナードにミレリア達は答えられずにいた
【それで、クロノリアとレナードは何故ここに来たのだ?】
重くなった雰囲気を変えたのは朱姫の一言だ
「おお!朱の姫ではないか。久しぶりではないか」
【今気づいたのかお主は。相変わらず集中すると周りが見えなくなる癖は直っとらんな。だから赤猪と言われるのじゃ】
「その二つ名は止めろ。して、姿を現した理由だったな。…何、担なる胸騒ぎと言うか──」
「嫌な予感と言うのかのぅ。この森に、と言うか白死神の所にな…」
『師匠の所に…』
【良くない事が起こる…と?】
「うむ、まぁ白死神なら大丈夫だと思うが一応な」
レナードはチラリと朱姫から狐太郎へ視線を移すもすぐに戻す
「それで朱の姫らの目的は?…と聞くだけヤボか」
【そもそもこの森に来る用事など一つしかあるまい】
「それはそうだのぅ」
「では一緒に行くか?」
レナードの言葉にビクリとリリアは身を震わせる
それを見たルシーリアは軽くクロノリアを睨む
「そこのエロジジイが大人しくしてるのなら構わんぞ」
「時の大魔術師を捕まえてエロジジイとは酷い言い草じゃな…」
「自分で大魔術師とか言うか。まぁ我らは基本夜しか現れないからな」
「この森は深くなるにつれ日が届かなくなるから、日中でも出ようと思えばでれるのじゃがな」
「妾も目を光らせておるから今後は大丈夫じゃリリア」
ルシーリアの言葉に幾分落ち着いてきたのかリリアはゆっくり頷く
しかしレフィルの側にぴったり張り付いている
「ふむ、随分人間臭くなったの魔王殿」
「俺達は久しぶりに美味い飯が食えればそれでいい」
と、言いながらクロノリアとレナードの二人は結構な勢いで食べていて、用意されていたほとんどの皿の料理が空になっていた
その後はルシーリアと魔族達、それに朱姫が夜番をする事になりクロノリアとレナードらと久々の再会を楽しんだ
レフィルらも話に加わりたそうだったのだが、そこはやはり疲れが溜まっているのと、リリアが側から離れないため休ませて貰うことにした
そして一行は三日目の朝を迎える
~死者の大森林大樹付近~
今は日が登っているが、外は吐く息は白くいつ雪が降ってもおかしくないほど寒い
「ルシーリアも無事合流できたみたいよ」
「そうか、ならじきにここに来るな」
テーブルを囲みながら、朝食を食べているのは白髪の男、それに濃い栗色の髪を後ろに束ねた女、ルシアとカーナである
それと一緒に宅を囲んでいるのは六人のハーフの幼女達と数人の仲間だ
彼らがいる部屋は暖炉の火が赤々と灯り部屋を暖かく包んでいる
ちなみにハーフの幼女達は髪の色がそれぞれ違い、特徴的なのが印象的であるが総じて前髪は丁寧に切りそろえられている
所謂前髪ぱっつんである
燃えるような真紅の長い髪をサイドツインテールで纏めているリン
濃いブラウンの丸い耳が頭からぴょこんとでていて、しっぽも同じ色でもふもふした丸いしっぽである
漆黒の艶やかな長い黒髪をそのまま後ろに流し、姫毛とよばれるサイドに伸ばした髪は顎の手前で切りそろえられ綺麗に整っているリファ
頭には黒いとんがった三角形の耳がぴこぴこと動き、しっぽはこれまた毛並みが綺麗なふさふさの漆黒のしっぽがパタパタ動いている
輝くようなエメラルドグリーンの髪は肩の上で綺麗に切りそろえられており、誰よりも一心不乱に朝食を食べているボブカットが魅力的なミンク
濃いブラウンの丸耳と同じく丸い尻尾はピコピコ小刻みに動く
綺麗な、ブラウンより少し明るめの長い髪は軽く後ろで束ねられており、向日葵のような笑顔は周りを常に明るく笑顔にし、本人も常にニコニコ笑顔のミエイ
髪と同じ色の三角の耳と長めの尻尾は堪えず動き忙しない
黄金色のショートボブの髪は誰とも違う独自の輝きを放っており、ミエイと違いあまり感情を表に出さないクールな表情が特徴だが、今日は楽しそうな雰囲気を出しているモカ
その証に紫紺の尖った三角耳と細長い尻尾は常にゆらゆら機嫌良さそうに揺れている
吸い込まれそうな程の蒼い髪はショートカットでこれまた艶が出ている程綺麗で、前髪のサイドからちょこんと伸びた姫毛も愛らしいカラネ
白と黒のモノクロの丸耳に同じくモノクロの丸い尻尾はもふもふで、リズムに合わせて左右に動いている
彼女らはレイラが発見した時から一緒で今では姉妹のように仲が良い
カーナもルシアもそれを微笑ましく見つめている
「ルシア様、そういえば先日の事は…あれは解決したのですか?」
同じく幼女らを暖かい目で見ていたハーフの女性が言葉を選びながら質問する
彼女も訳ありでこの森に来てルシアらに拾われた一人だ
その発言は幼女達を思っての事でルシアもすぐにわかった
「とりあえずは一段落した…と見ていいが……」
サラダを一口摘み咀嚼したあと腑に落ちない表情のルシアの言葉にカーナが不安そうに見つめる
「まだ嫌な予感がするんだよな…」
「ルシアがそう言う時は当たるからね…」
「まだ終わってないって事ですか?」
「わからんが、警戒は怠らないでくれ。そして何かあっても無理はしないでくれ」
「大丈夫です。命を粗末にはしません」
「ああ、死ななければ何とでもなるからな」
「おかわり!」
そんな話の途中で割り込んだ声の主はミンクであった
「おいミンク、頬に米粒が付いてるぞ」
「え!?どこ?とって~」
元気よく空いた椀を上に掲げていたミンクはパッと空いた手で頬を触るが取れていない
仕方がなく、カーナの隣に座っていた女性が空いた椀とミンクの頬の米粒を取るとミンクは満面の笑みで「ありがと~」と笑う
「あ、ご飯山盛りで~」
「そんなに食ったら太るぞ」
「むぅ~…大丈夫だもん」
ルシアの辛辣な言葉にぷぅっと頬を膨らませるミンクにルシア達は顔を綻ばせる
その膨らんだ頬を隣に座っているリンが指でツンツンしてミンクに怒られている
山盛りに盛られたご飯が到着しミンクは再び美味しそうに食事を開始する
ハーフの幼女達はここ数ヶ月で痩せ細ってガリガリだった面影はなくなり、表情が明るくなった
良かったとルシアが物思いに耽っていると目の前に空の茶碗が再びズイと差し出された
「…おかわり」
もぐもぐしながらモカが表情を変えずに無垢な瞳で見つめてくる
「おう、しっかり食え。あと口の中の物を飲み込んでから喋るんだぞ」
頷くモカの頭をわしゃわしゃと撫でるとくすぐったそうに目を細める
その言葉にミンクが元気に反応した
「は~い!」
「お前は自重しろ」
「え~いいじゃん。ご飯美味しいんだもん」
その言葉に一同は声を出して笑う
「あ!?雪だ~」
「本当だ」
一足先に食べ終えていたミエイが声を上げて窓に駆け寄ると一緒にカラネも窓に取り付く
逆に他のメンバーは寒いのが苦手なのかテーブルから離れない
ルシア達はつかの間の平和を堪能していた
獣人幼女は最高ですよね( ´ ω ` )
次話は26日(日)午前9時更新予定です
タイトル【大樹の村】よろしくお願いします
もしかしたら二話更新するかもしれません
いつもお読み頂きありがとうございますm(__)m




