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無限転生の召喚士  作者: 阿澄龍之輔
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二章 14 転送魔法陣

戦端開始の合図はイルフリーデの攻撃だった

向かってくる魔族達より少し高い位置に陣取っている

そして自身の周りに数百の瘴気の塊を浮かべると、文字通り悪魔のような笑みを浮かべる


「ルシーリア様の恩も忘れた愚か者共が!ルシーリア様から授かった力、身を持って受けてみよ!!ーーサタンインパクト(魔王の一撃)ーー」


上空から放たれた瘴気の弾丸が流星が地上に降り注ぐが如く魔族に降り注ぐ

下位の魔族などは当たれば一撃で消滅しかねない一撃

現に無差別に攻撃したにも関わらず運悪く直撃した魔族は消滅していき、消滅せずとも近しいダメージを受けた魔族も少なくはない

そういう魔族はすぐに部位を再生させるも力は落ちてしまう


「ーーふむ、半分は減らせなかったか」


イルフリーデは些か不満そうだったが、当たらなかった魔王の一撃(サタンインパクト)は地上にも降り注ぎ、地を行く魔族にもダメージは与えている


「久方ぶりの戦闘だ。楽しませてもらおう」


そして狐太郎達に見せなかった邪悪な笑みを浮かべると、初撃をくらって動きの止まってる魔族達へ向けて突っ込んでいった







上空から流星が降ってきた瞬間、地上組は唖然と空を見上げていた


【さすがは上位の魔族、やりおるわ。それ、魔竜の動きが鈍ったぞ】

「ふんっ、一番槍は奴に取られたか。しかし次は譲らんぞい」


そんな中、平常運転の2人、ジンバックは巨大な戦斧を軽々担ぎながら動きが鈍った魔竜に肉薄すると戦斧を振り上げた


「クラッシュハンマー」


声と共に力任せに叩きつけた一撃は魔竜を簡単に真っ二つにし、さらに地面穿つと周囲に振動を撒き散らす

そして戦斧を軽々引き抜くと力任せに振り回しながら、当たるを幸いに魔竜を蹴散らしていく


【ジンバックが開けた場所から行くぞ。元より統制がとれた集団ではない】


言うと朱姫も三叉戟を手に、魔竜に突撃する


雷華仙槍(らいかせんそう)焔雷陣(ほむららいじん)


戟を持ってない方の手を魔竜に向け言霊を唱えると、朱姫の手から扇状に紅い稲妻の華が咲いた

それは面の範囲に留まらず天からも降り注ぎ、魔竜を絶命させてゆく


その後をレフィル、ヴァージルと狐太郎が続く


「武神様は分かっていたが、ジンバック殿もさすがだな」

「ここに来て自分の強さに自信がなくなってきたよ」

「ふっ、安心しろレフィル。俺たちは人間だ。神や歴戦のドワーフとは年季が違いすぎて比較対象にならんぞ」

『レフィルさんもヴァージルさんも十分強いと思いますよ』

「ありがとう・・そうだよね」

「では行くか。死ぬなよ」

「そっちこそね」


微妙な会話をしながら3人はそれぞれ武器を強く握ると朱姫やジンバックに続くように魔竜達に突っ込んでいった






「久々に見たが、さすがは朱の姫。我らも遅れるな」


感嘆の溜息と共にキルエラ率いる守護隊の面々は弓を構える

前衛は朱姫やジンバックなどが身体を張っていてくれてるので、彼らは後衛からの援護射撃だ


竜弓の雨(りゅうきゅうのあめ)ドラゴンレイン(竜の嘆き)


キルエラの声高の言葉に弓を構えた守護隊は一斉に矢を放つ

ちなみに彼らが持つ弓はただの弓ではない

竜の亡骸から取り出した骨から削り出し、弦は竜の髭が張られている

そしてそれを竜の血に数日間漬けておくと完成する

それにより竜の力が宿ると言われている弓で[死竜の弓]と呼ばれている

ちなみに呪われてはいない


理由は討伐された竜の亡骸からはできないと言うこと

寿命、もしくは不慮の事故等で亡くなった竜からのみ作られる

何故かは不明であり、これが作られる場所はもっぱら限られる



キルエラら守護隊から放たれた矢は、風の影響をまったく受けず、誘導されるように魔竜の皮膚に喰らいつくように突き刺さった

これが普通の弓ならば魔竜の皮膚すら傷つける事はかなわない

瘴気に侵され魔竜と成り下がっても、竜の性質が消える訳では無い

硬い皮膚は健在なのだ


前衛はジンバックが突撃してからは多少混戦になっているので矢を撃つと味方に当たる可能性がある

百戦錬磨のジンバックや朱姫は大丈夫だろうが、狐太郎やレフィル、ヴァージルは危うい

その為、キルエラは中団から後方を狙って矢を射掛けた

魔竜と言う戦力を前衛に押し出しているために中衛、後衛は下位悪魔に遠距離魔術を使う魔族、そして魔竜を操る魔族達だ


「そのまま定期的に射掛けろ」


キルエラは部下達にそう指示すると先で戦っているジンバック達に視線を移す






「・・・・朱姫よ」

【うむ】


ジンバックの言葉に朱姫は察したのか小さく頷く

もちろんその間も魔竜を屠り続けているのだが


「手応えが少ない。このままではすぐに終わってしまうぞ」

【しかし遠見からは報告はないのであろう?】

「キルエラからは何も聞いておらん」

【解せんな】


何か重大な事を見逃しているような、そんな気がする2人だがそれは上空のイルフリーデも感じ取っていた





「おかしい、ボルガの先遣隊はこの程度か」


半分以上の相手をすでに消滅させているイルフリーデだが、同じく手応えのなさに違和感を感じていた


「この程度なら我が出るまでもなく、ヴァイシュラヴァナ達で駆逐できている。何かを見落としている?」


その時遥か先に光の柱が立ち上った


「ーー!?あれは転送魔法陣。まさかーー」


イルフリーデは珍しく慌てた様子でベアトリスに念波を送る

一種のテレパシーのようなものでそこそこ離れた距離でも使えるので魔族の間では当然のように使われている


《ベアトリス聞こえるか?》

《うわっ!イルフリーデ!?いきなり念波おくらないでって言ってるじゃん》

《いきなりじゃない念波なぞあるか!緊急だ》

《なに?》


イルフリーデの言葉にベアトリスはただならぬ気配を感じ真面目な表情になる


《転送魔法陣だ。10時の方向の瘴気を探れるか?》

《ーーちょっとまってて》


そのやり取りが2人の間にあり、しばらくの間


《ーーっえ!?》

《どうしたベアトリス?》

《こ、この瘴気・・・・ボルガかもーー》

《!?なんだと?》

《それとそれに近い瘴気を纏った魔族が2人》

《ボルガの側近か》

《わからない。けど力は同等に近いかも》

《ボルガと同等だと!?》


ベアトリスの言葉に焦りの色が見えるイルフリーデ

正直単独でボルガが直々に出張ってくれば儲け物だった

ボルガの実力はイルフリーデより少し下、上空の魔族は残りわずか、地上の掃討は任せても問題ないと見ればイルフリーデがそこまで慌てる必要はなかった


しかしボルガと同等の力を持つ魔族が他に2体

ボルガはイルフリーデより下だったとは言えほぼ実力は拮抗しており、戦ってる間は他の魔族に意識を割く余裕はないだろう

そうすると2体は地上にいるヴァイシュラヴァナらに任せる事になるのだが・・


《どうするの?》

《・・・・・・・・・・・》

《イルフリーデ!》

《魔法陣が完成して転送されるまでまだ時間がある。その間にベアトリスはヴァイシュラヴァナ達に伝えろ》

《イルフリーデは?》

《残りの魔族を殲滅してボルガの相手をする》

《だ、大丈夫なの?》

《こっちより地上の奴らの方が心配だ》

《え!?ちょっとどういう事?》

《ヴァイシュラヴァナ、おそらく本調子ではない》

《えーー》


その言葉にベアトリスは最初意味がわからなかった


《理由はわからんが、本来の実力を発揮できていない》

《ま、まじで?》

《ああ、だから何かあればお前がフォローしろ》

《えええええええ!?》

《うるさい》

《む、無理っしょ。ヴァイシュラヴァナのフォローなんて・・》


ぶるぶる震えるような声でベアトリスは答える


《防御面だけでいい》

《そ、それでも・・》

《お前の事防御魔術に関してはルシーリア様にも匹敵する。いい加減自信を持て。ルシーリア様も言ってただろう》

《・・うん、わかった》


その言葉にベアトリスの震えは収まった


《ではそっちは頼むぞ》

《ーーイルフリーデ》

《む》


念波を切ろうとしたイルフリーデはベアトリスの普段見せない真面目な呼び声に思わず返事を返す


《死んじゃダメだかんね》

《ーー!?ふっ、再びルシーリア様に会うまでは死ぬわけにはいかん》

《うん》

《ではな》


今度こそイルフリーデは念波を切るとニヤリと笑う


「ふむ、あいつも存外人間臭くなってきたな」


そう言うと、瞑想するように目を瞑る

そして再び目を開いたイルフリーデは獰猛な笑みを浮かべる


「ルシーリア様に手ぶらで会いに行く訳にはいかんな」


そう言うと上空に残った魔族を掃討し始めた






【ーー!?】

「なんじゃと!?」


いきなり登場したベアトリスの言葉に朱姫とジンバックは驚愕の声を上げる


地上はほぼ魔竜の殲滅は終わっており、残るは魔竜を操っていた魔族と遠距離魔術を使う魔族くらいで、それはキルエラ率いる守護隊の竜弓部隊と狐太郎達でも十分対応可能で現在は任せてある


【それは本当なのか?】

「う、うん・・イルフリーデが転送魔法陣の光を見たし、あたしもボルガの瘴気は確認したし・・」


朱姫に対して怯えまくるベアトリスの言葉にジンバックと朱姫は険しい表情になる


【転送してくるのは何人だ?】

「えっと、とりあえず3人は確認した、かな」

「3人か・・あとは実力だが・・」

「ボルガの力はイルフリーデとほぼ同等、一緒に転移してくる残りの2人も近い実力かも」

「なんじゃと!?」

【それは瘴気でわかるのか?】

「うん、瘴気の濃さと言うか濃度?みたいなのでわかる」

【ほぅ】


「あ、それとボルガはイルフリーデが対応するから心配するなって」

【ーー大丈夫なのか?】

「わからない。けどボルガに対抗できるのはイルフリーデしかいない」


ベアトリスは沈痛な面持ちで語る


「では残り2人はわしと朱姫で対応するしかないか」

【そういう事になるな】


「所で朱の姫よ」

【む?急に改まってなんだジンバック】


突如呼び方を変えてきたジンバックに朱姫は訝しむ


「お主、何を隠しておる?」

「えっ?」


それに反応したのはベアトリスだけで当の朱姫は沈黙している


「途中まで気づかなかったが、何故節約した戦い方をしてるんじゃ?まるでーー」

【さすがはジンバックだな】

「もしやーーコタローが原因か」


それに朱姫は沈黙する

間違っても力が出し切れてないのは狐太郎のせいだとは言いたくない


「イルフリーデも言ってた。本来の実力を発揮できていないんじゃないかって」

【魔族にまでわかってしまう程か】

「それ程今のお主は違うと言うことじゃろう。何とかならんのか」

【微妙な所だな】

「あ、防御に関してはあたしがなんとかする」


ベアトリスの発言に2人は驚く


「大丈夫なのか?生半可な相手ではないのであろう」

「ぼ、防御だけならルシーリア様にも匹敵するって言われたから・・」

【ほぅ、ならば任せていいか?】

「えっ!?」


今度はベアトリスが驚く番だった


【何を驚いている】

「いや、だって・・」

「魔族の助けを借りる事をすんなり了承したのを驚いておるのじゃな」


ジンバックの言葉にこくこく頷くベアトリス


【たしかに魔族は好きではない。しかし全ての魔族が嫌いと言うわけではない。例外もいる。それが元魔王、ルシーリアだ】

「え?ルシーリア様?」


まさか魔族以外の口からルシーリア名が出るとは思わなかったベアトリスは完全に目が点になっている


「詳しい話は後にした方が良さそうじゃな」

【うむ、来たぞ】

「え!?」

「退却のドラを鳴らせ」


ジンバックの言葉に守護隊が慌ててドラを鳴らす

その音を聞きつけて、狐太郎達が戻ってきたのはすぐだった


『あと少しで殲滅できたのに』

「何かありましたか?」


狐太郎は不満そうに、レフィルは落ち着いた声音で朱姫達に話しかける


瞬間、先程狐太郎達が戦っていた場所に巨大な転送魔法陣が浮かび上がると辺りに瘴気が吹き出してくる


「コタロー達は下がっていろ。お主らが手に終える相手ではないぞ」

『・・でも』


狐太郎は不安そうな表情で朱姫をチラリと見る


【下がっていろ】

『わかった・・』


魔法陣は一層強く光り、次の瞬間2人の人影を映し出した


「ねえねえねえねえ、誰かと思ったら裏切り者のベアトリスがいるよ?」

「と言うことはイルフリーデも一緒、でしょうな」


魔法陣から進み出てきたのは2人の魔族

1人はおそらく女性と思われ、好奇心旺盛に辺りを仕切りに見回している

女性というより少女と言った方がしっくりくる

目はパッチり目で若干タレ目気味であろうか

瞳はもちろん紅い色だ

身長が160cmより少し下であろうか、頭には小さな角が1本額の上辺りに生えている

服装はやはり黒を基調とした服装で、所々赤いポイントが入ったゴスロリチックな服装だ

スカート部分は傘のように広がりを見せており、これまた部分的に赤いフリルが付いている

そして手に持つ武器は漆黒のレイピアだ


そしてもう1人はスラリとしたスーツの様な礼服のような服装をした男性だ

背筋をピシッと伸ばしており、パッと見はどこかの屋敷の執事に見えなくもない

しかし頭からは2本の角、目は細目で傍からは開いているかさえ判断しずらい

隣の少女よりも身長かなり高く、170cmはありそうだ

口調も先程聴いた感じでは落ち着いた口調のようだった

しかし手に持つ武器は漆黒の長剣だ


その男性はゆっくり辺りを見回した後、空に視線を移す


「お変わりないようですね、相変わらず」


呟くと視線を元に戻した


「ねえねえねえねえ、私ベアトリスと殺りたいわ。いいかしらゼクス?」

「構いませんが、その前に相手をしなきゃいけないようですよ、リゼ」


ゼクスの言葉にリゼは不快そうな表情をすると前に出てきた2人を睨みつけた


「あなた達が相手してくれるの?えーと、ドワーフと人間?にしてはちょっと・・」

「リゼ、油断してはいけませんよ。彼女はヴァイシュラヴァナ。我ら魔族の大敵です」


その言葉にリゼの顔から感情が消える


「へぇ、あなたが噂のヴァイシュラヴァナ。初めて見たわ。ねぇゼクス、私ヴァイシュラヴァナと殺っていい?」


先程とは違い底冷えする声音に下がっていた狐太郎達は凍り付く


「仕方ないですね。どうせ言っても利かないのでしょう。いいですよ」

「ほんと?やった。ありがとゼクス!」


パッと表情を明るくするリゼにゼクスは呆れた表情だ


「それでは私はそちらのドワーフで宜しいですかな?」

「わし以外に誰がおる」

「ふむ・・それもそうですな」


ジンバックの言葉にゼクスはキルエラを見て、最後に狐太郎に目線を移す

しばらく狐太郎を見ていたが、やがて視線をジンバックに戻した


【ベアトリス、防御結界は任せたぞ】

「う、うん」

「あはっ、待っててねベアトリス。すぐに片付けて殺りに行くから」


リゼはそう言うとレイピアを構えて朱姫に突っ込んで行った


「ヴァイシュラヴァナが相手ではリゼも分が悪いでしょうから、こちらも早めに終わらせるために始めましょうか」

「けっ、魔族ってのは冗談も言うのか」

「いえいえ、正当な評価だと思いますよ。では・・」

「その態度を改めさせてやるわい!」


ジンバックとゼクスが互いに間合いを詰めるべく飛び出した







いつもお読みいただき有難うございますm(__)m


最近左腕の痺れが酷くなり、診断はされてませんが頚椎症じゃないかと言われました


もしかしたらまた一月程更新ができないかもしれません(´・ω・`)


取り敢えず次話は13日(日)の午前9時更新予定です

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