一章 36 援軍
また場面がコロコロ変わって読みにくいかもしれませんm(_ _)m
クリスティア達を囲む包囲が次第に狭まり、予断を許さなくなってきたその時
北側の大扉が重々しい音を響かせながら開いた
狐太郎達は乱戦の最中その重々しい音だけは聞こえていた
『何の音?』
「な、なんだ。何が起きた?」
狐太郎とウェルキンが疑問を口にするが悪魔たちは答える代わりに攻撃を返してくる
「くっ、デュライン!どうなっている」
その悪魔達の攻撃をかわしながらウェルキンが大声で叫ぶ
「--来ました!ウェルキン、コタロー、みんなも集まってください。ロイザード、防御結界を」
「承知」
「|クリスタルスフィアシールド《水晶結界》」
ロイザードが魔術を発動するとクリスティア達を中心に半球状の結界が出来上がる
もちろんシャルロスやルティーナの檻も結界内だ
「おお!?ロイザードやるじゃないか。使えるならなぜ早く使わない」
「簡単に言うが、この結界はまだ開発途中でな。維持に長くはもたんのだ」
ロイザードの言葉にウェルキンは納得のいかない表情だったが、デュラインに視線を移す
「で、デュライン何が来たのだ。こうして話してる間も包囲は狭まりつつあるのだぞ」
「端的に言うと援軍が到着したんですよ」
「北門が開いたのはそれか?しかし大門の鍵を持つ者は限られるぞ。誰だ?」
「決まってるじゃないですか」
手短に話すと言ったデュラインだが、もったいぶるよう一泊以上の間を空け言葉を続ける
「フリッグ伯爵ですよ」
・・・・・・
「馬鹿な・・」
アゼルは呟き、大臣は目を見開き顔には汗が浮かんでいる
アゼルは丘から北門が見える位置にいるので北門から入ってきた一団がよく見えた
「何故あの騎士団がここにいる!」
丘から見える北門から突如現れた一団は見覚えがあった
ラグアニア王国の旗に混じり、貴族の家紋入りの旗が見えたからである
「ま、まさか本当にフリッグ伯爵は生きているのか・・・」
そう援軍はフリッグ伯爵だったのだ
動員数はまさかの5000人を超える
下手したら万に届くんじゃないかと言う兵の数にアゼルも大臣も驚きを隠せないでいる
伯爵としてはこの兵士数は驚嘆に値するであろう
それもそのはず、フリッグ伯爵の抱える私兵--騎士団--は5000人を満たない
ならばどうしてか
答えは領民の成人男子がこぞって参加しているからである
先のフリッグ伯爵領を救った英雄としてクリスティア達の名は領内全てに知れ渡り今回の王都への援軍にて出発する際、領民が義勇兵として参加したいと打診があり了承した所、このような大規模な軍団になったのである
「なんとか間に合ったのか?」
「はい、と言ってもギリギリですが」
「そうか。ならば兵の指揮は任せるぞマキシム」
「お任せ下さい。フリッグ様はゆっくり見物していてください」
「頼むぞ。我が領地を救った英雄を死なせてはならん」
「御意に」
マキシムはさっと身を翻すと、先に待機している騎馬隊に声をかける
「いいか、目下の敵は目の前の歩兵だ。我が国の同胞だが、魔族の禁術で操られていて倒す以外に禁術を解く道はない。手加減は無用。我々の手で魔族の束縛から解き放ってやるのがせめてもの供養だ」
騎馬隊はマキシムの言葉を黙って聞いている
「今クリスティア様達は窮地に立たされている。我が領地とフリッグ様を救ってくれたクリスティア様に今こそ恩を返す時だ!」
「「「「おおー!!」」」」
1000の騎馬隊はマキシムの言葉に天にも届きそうな歓声を上げる
「ボルグ!先鋒の騎馬隊はお前に任せる」
「おまかせを。相手に風穴をあけてやりましょう」
「頼んだぞ」
ニヤリとマキシムは笑う
「いくぞ!クリスティア様に刃向かう奴らを蹴散らすぞ!騎馬隊は突撃だ!俺に続け!!」
ボルグが槍を高く掲げ騎馬を駆り先頭を駆けると騎馬隊がそれに続く
突撃に特化した鋒矢の陣を組み、包囲を続ける兵士の背後を強襲する
「--なっ!まずい!」
アゼルは兵士を反転させて対応させようとしたが、禁術で操られている兵は簡単な命令しか聞けないばかりか、決して動きは良いとは言えない
唯一の利点と言えば痛覚がないと言う点のみである
クリスティアに味方はいない
そう思って指示は最初だけで良いだろうと兵士達とは別の位置にいるのも不運といえた
今の位置からではせいぜい手旗信号が関の山で早馬なんて出してる暇はない
そして禁術で操られている兵士は言葉での命令しか聞けない
その命令を出すアゼルは戦自体が初体験で、戦に精通した人物がこの場にいないのも拍車をかける
不運に不運が重なり禁術で操られた兵士達は背後から騎馬隊が迫ってることもわからず、気付かずその背にまともに騎馬隊からの突撃をうけた
あっという間に騎馬隊の突撃に飲み込まれた兵士達は瓦解しわずか30分足らずでその屍を晒した
その騎馬隊が突撃するのを見送りもせずにマキシムは自軍の歩兵の元へと移動していた
「騎馬隊の攻撃が終わる前に俺達は迂回してレッサーデーモンの背後を強襲する。準備はいいか?」
マキシムは歩兵を預かる隊長以下騎士団員達を見回す
レッサーデーモンを殲滅せんと動く歩兵の数はおよそ2000
「はっ!すでに準備は整っています」
「よし、ならばすぐに移動するぞ。相手は悪魔だ。手加減は無用!対悪魔の特訓の成果を見せてやるぞ」
「「「「おおー!!」」」」
マキシム以下歩兵の一団は迂回し森の後ろからレッサーデーモン達を強襲するべく動き出した
・・・・・・・
「フリッグ伯爵が来てくれたのか」
「ええ、思ったより早く到着してくれて助かりましたよ」
「それで我々はどうするのだ?いつまでもこの結界に閉じこもってるわけではなかろうな?」
ウェルキンの言葉にデュラインは「まさか」と言葉を返す
「現在北側の兵士達と西側はフリッグ様達の騎士団が動いてくれています。残る南側は我々で悪魔を叩きます」
「グレーターデーモンか」
「そうです。しかしこちらの守りも残しておかねばなりませんが」
北側、西側、南側と一番数が少ないのは南側だが、個々の能力が一番高いのも南側である
さらに言えば、その数は狐太郎達よりも何倍もいるのだ
北側から現れたフリッグ軍に南側へと言うのも酷な話であろう
南側だけに集中すればいいと言う点ではまだましなのだから
「俺は行くぞ!守るのは苦手だ。それに特訓の成果を試すいいチャンスだ」
しばらく南側の悪魔達を睨んでいたウェルキンが魔剣ファラムをぶら下げながらニヤリと笑う
すでに刀身には炎を纏わせ突撃する気満々である
『じゃあ俺も行こうかな』
続いて狐太郎も手を上げる
同じく抜き身の刀をぶら下げてウェルキンの隣へ並ぶ
「では私とロイザードは守りに入ります」
デュラインはロイザードと守りに入るべく下がる
「準備は良いか?そろそろ防御結界が切れる」
「おう!いつでも大丈夫だ」
ウェルキンが先にいる悪魔達を見据える
悪魔達は結界に阻まれ中まで入ってこれないでいた
しかし結界に絶えず火球やら爪での
攻撃を加えており破られるのも時間の問題のようだ
「ではカウントダウンいきますぞ!5・4・3・2・1・0!」
ロイザードの言葉に飛び出す狐太郎とウェルキン
しかし近づいた2人は驚愕の光景を目にする
「な、なに!?」
レッサーデーモンの後ろに下がっていたグレーターデーモン達がこぞって火球を生み出し待ち構えていたのだ
おそらく結界が解けるのを待っていたのだろう
その火球はレッサーデーモンの生み出す火球を軽く凌駕する
しかも数体のグレーターデーモンが生み出す火球は直径5mはあり、さながら小さな太陽が出現したように辺りの温度を急激に上げた
ウェルキンと狐太郎は詠唱を中断させるべくグレーターデーモンへ突っ込むも、案の定レッサーデーモンの壁に阻まれ届かない
グレーターデーモン達は目の前に生み出し合体させた火球を上に掲げ、獣のような雄叫びを上げると灼熱の炎はクリティア達に向けて落下を始めた
「ロイザード!!」
「くそっ!今からでは・・・」
慌てたウェルキンの言葉にロイザードは動揺しながらも素早く幻影の杖を構え魔術を組むが間に合わない
デュラインもシャルロスも落ちてくる炎を見てることしかできない
触れずとも近くにいるだけで焼け焦げそうなほどの巨大な火球がクリスティア達の近くに着弾し辺りを爆炎と爆風が吹き荒れた
・・・・・・・
「よし、うまく悪魔達の背後に周り込めたみたいだな」
「はい、この森のおかげで見つからずに済みましたね」
マキシムと歩兵を束ねる部隊長は言葉をかわす
レッサーデーモン達はすでにすべて森から出ており狐太郎達への包囲の為に前進し、こちらには気づいていない
森が途切れるギリギリまで移動したマキシム達は突撃態勢を整えていた
「北側の殲滅はそろそろ終るだろう。その喧騒があるうちに悪魔達に突撃する。準備はいいか?」
「大丈夫です。対悪魔用武器を持ってる者を先頭に準備はできています」
部隊長の言葉にマキシムはニヤリと笑う
「いいか、対悪魔用武器を持ってるといっても過信はするな。1対1で当たるなよ。必ず2人以上で当たれ」
「了解です」
「では行くぞ!悪魔退治だ」
マキシム以下歩兵部隊はマキシムを先頭に包囲殲滅すべくクリスティア達に肉薄している悪魔達へ突撃する
その足音は北側の騎馬隊の喧騒にかき消され悪魔達は気づかなかったが、後100m程で最後尾にいた何体かがマキシムの接近に気付きこちらに振り向く
「おせぇな!」
マキシムは歩兵部隊に足並みを合わせていたが、悪魔達に気づかれたと知るや一気にギアを上げトップスピードに乗ると一番近くにいた悪魔の懐に疾風の如く入り込む
悪魔は間合いを開けるべく後方に下がろうとするが、何かに阻害されたようにガクッと動きが止まる
それを見逃すマキシムではなく両刃の両手剣ほどもある剣を片手で力任せに横に薙いだ
肉と骨を断つ感触を感じながら斬った相手には見向きもせずに、マキシムは次いで近くにいる悪魔に突進する
今度は臨戦態勢を整えていた悪魔だが、マキシムに踏み込む体勢で先程と同じようにガクッと動きを阻害され体勢を崩す
「隙だらけだぜ!」
マキシムは袈裟斬りに剣を振り下ろす
その場から動けない悪魔は両手でガードするのが精一杯だが、マキシムの剣は両手事相手の体を断ち斬った
マキシムが2体倒した時にあとから続いていた歩兵達も追いつき戦闘を開始した
マキシムは剣を肩に担ぎ、乱戦状態になった戦いを見つめる
「相手がレッサーデーモンだけならなんとかなりそうだな」
マキシムが手に持つ剣は魔剣サブルムである
一見地味に見えがちだが、攻防一体な攻守共にバランスがとれた優れた魔剣である
砂だけに制御が難しくマキシムは完全に操れるまで5年掛かったという
故に完全に制御ができるようになったマキシムは少なくともレッサーデーモンには遅れは取らないと自負している
先程のレッサーデーモンの動きを阻害したのも魔剣の効果で、相手の足を砂で絡めて地面に固定させたのだ
レッサーデーモン軍団と戦う歩兵達も対悪魔対策はばっちりのようで劣勢になってる所は見られなかった
歩兵全員に配る事はできなかったが、対悪魔武器も効果を生んでいるようだった
「急ごしらえだったが、聖属性を付与させた武器もそこそこ効果あるようだな」
このまま何事もなければレッサーデーモン殲滅も時間の問題だろうと、狐太郎達へ視線を投げかけ、驚愕に固まる
「--何だありゃあ・・」
狐太郎達の頭上に灼熱の炎が浮かび上がってるのを見たマキシムは、頭で考えるよりも早く駆け出していた
・・・・・・
巨大な火球が着弾しクリスティア達の身を焼き焦がす瞬間、爆発で辺りが白に包まれた
瞬時に目を瞑ってしまったが、火球の衝撃は伝わってこなかった
・・・爆発の余波が次第に収まると訝しみながらデュライン達はゆっくりと瞼を開ける
「--!?クリスティア様!」
自分たちが無事なのを悟ると、主の安否を心配しクリスティアの方へ駆け寄る
否、寄ろうとした
「なんとか間に合いましたね。クリスティアよくできました」
聞きなれない声、いや聞いたことあるような声に慌ててクリスティアの方へ振り向くと、そこには無事な姿のクリスティアが変わらぬ姿でいたのだが
隣にはつい先日見た光の精霊ミルワースが佇み、そしてそのミルワースに頭を撫でられて恥ずかしそうにしているクリスティアがいた
「光の精霊・・」
誰かが呟いた驚愕の光景に狐太郎は逆にホッとした
「あの・・突然お呼びして申し訳ありませんでした。ミルワース様」
ミルワースの手から解放されたクリスティアは未だ恥ずかしそうにミルワースに話しかけた
「ふふふ、大丈夫ですよクリスティア。それで私は何をすればいいのかしら?」
言いながら辺りを見回すミルワースにクリスティアは再び声を掛ける
「防御結界を。檻を中心に10m程の規模なら私の魔力でもそうとう持つと思います」
クリスティアの言葉にミルワースは満面の笑みで答える
「徐々に自分のできる事とできない事が分かってきたみたいですね。いいでしょう、合格ですよ」
「ふふふ」と出来の良い弟子の成長を喜ぶかのようなミルワースにクリスティアは嬉しそうにありがとうございますと礼を言う
「テラフアーダルミエル」
ミルワースが精霊特有の魔術を唱えるとシャルロス達の檻を中心に結界が施された
それは以前狐太郎が精霊の森で野営の時に使った結界に似ていた
「--!?これ、コタロー様の・・」
「よく気づきましたね。コタローの使った結界はこれを元に作られた物ですよ。もっとも強度はこっちの方が上ですが」
ミルワースの言葉にクリスティアも納得する
先程からレッサーデーモンが火の玉を散発的に打ち込んできているのだが、すべて結界に阻まれ消失している
「今回の私の仕事はこれでいいのかしら?」
「はい。本当はコタロー様達の援護にもと思ったのですが、私がまだ未熟なせいで・・」
そう言って俯くクリスティアにミルワースは優しく声を掛ける
「クリスティア、顔を上げなさい。そう自分を卑下するものではありませんよ。そもそも最初から我々精霊の全てを理解しうる者はいません。むしろ1度の召喚で終わるケースが大半。クリスティアは素質があるのですから自信を持ちなさい--私のお気に入りなのですから--」
最後の言葉はよく聞き取れなかったクリスティアだが、精霊に素質があると言われ立ち直ったようだ
「はい、頑張ります」
「昔のコタローも今のクリスティアと同じく最初はうまくいかなかったのですよ」
ミルワースの言葉にクリスティアは「え!?」と驚きの声を上げる
「ふふ、今はご覧の通りですが」
言われてクリティアは悪魔と斬り結んでいる狐太郎に視線を送る
「コタロー様が・・」
「その話は今はいいでしょう。聞きたいのならいつか話してあげましょう」
ミルワースは言いながら再び周りを見回す
「問題はグレーターデーモン。少し数が多いわね。そして--」
視線を動かしたミルワースの先にアゼル達が映る
「一番危険なのはあのローブの男ね」
ミルワースが見つめる先にはアゼルや大臣と一緒にローブの男が立っている
未だに動くそぶりも見せないのは参戦する気は無いのか、悪魔らが負けるとは思ってないのか
「今はまだ動かないでしょう。その間に悪魔達を殲滅できればいいのですが」
「クリスティア様!!」
声の方へ振り返るとマキシムがこちらへ駆けて来た
「ご無事でしたか」
「はい。マキシム隊長も怪我はされてませんか?」
「私は大丈夫です。こちらの兵も徐々に押し始めているので大丈夫でしょう。問題は--」
マキシムが言葉を続けようとした刹那、北側と西側で爆発が起こった
「--な、なに!?」
マキシムが爆発に驚き振り返る
「せっかく僕らの出番がなくて楽できそうだったのにー」
「お前は怠けすぎなんだ。少しは体を動かせ」
聞きなれない軽そうな声と、低い張りのある声が爆発の中に響き、爆発が収まると北側と西側の場所に見慣れない人物が立っていた
マキシムの魔剣は散々悩んだ挙句、魔剣サブルムに落ち着きました
決めて進めていくうちに、あれ?これ某忍者漫画の砂のガ⚫ラ?
的な魔剣になっちゃう?
と思いましたが時すでに遅しでした(´・ω・`)
パクったわけではない、と思いたいです
いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m




