一章 31 野営
話のテンポが相変わらず遅くて申し訳ありません(´・ω・`)
パチパチと焚き火が爆ぜる
日も暮れてクリスティア達は現在野営をしている
周りを見ると同じく野営をしてる物がチラホラ見受けられる
その焚き火を囲みながらクリスティア達は食事中だ
「もぐもぐ、美味しいです~」
「メアリー、食べながら喋ったらダメですよ」
「は~い、もぐもぐ・・・」
クリスティアはメアリーに注意しながらも、やはり美味しい食事に機嫌が良さそうだ
「まさか野営でこんな美味いものが食えるとは・・」
騎士団でも野営訓練と言うものをするようで、その時の食事はもっぱら固い干し肉と水らしい
そのグリットがガツガツ食べながら唸る
そもそも旅と言うのは基本は保存食がメインになる
町に寄れるならまだしも、野宿を挟むとなると新鮮な食べ物はまずない
食べれても道中狩りで仕留めた動物くらいだろう
それが今狐太郎達は焚き火を囲み(テールは流石に悪目立ちするので出していない)、それぞれの手元には手のこんだ料理が出来立てで置いてある
それはフリッグ領で頼み込み出来立て料理を狐太郎のポシェットに入れてきたものである
「俺も最初は信じられなかったぞ」
何かの肉のソテーを口に運びながらウェルキンは答える
「いったい何者なんだコタローは」
がっつきながらグリットが疑問を口にする
「召喚士、でいいのではないのでしょうか」
答えに迷っている狐太郎にクリスティアが助け舟を出す
「召喚士!?コタローも精霊を召喚できるのか?」
グリットが驚いたような顔で狐太郎を見る
『まぁ、うん。大した精霊は召喚できないけど・・』
周りが召喚士で納得するならそれでいいかと思う狐太郎だが、先程の大した精霊は召喚できないと言う発言は失言だったと内心焦る
もちろんクリスティア達にではなく精霊達にである
周りをキョロキョロ見渡し近くに精霊がいない事を確認しホッとするも、実は近くに精霊がいた
隠れてたわけではないのだが、遠くから眺めていたその土地に住む土の精霊
これが精霊の村に報告をする事でちょっとしたひと悶着があるのだが、それはまた別の話
「しかもクリスティア様まで精霊を召喚できるなんて驚きました」
「コタロー様にもらった精霊の腕輪のお陰ですよ」
「それでも凄いことですよ」
グリットの言葉にウェルキン以外は同意の表情だ
それにニコニコしながら答えるクリスティアだが、それが面白くないのかウェルキンは狐太郎を睨んでいる
未だに腕輪の時の事を誤解してるのか、狐太郎はそんなウェルキンの目からビームが出るんじゃないかってくらいの視線を素知らぬ振りをして食事を続けるも、頬を冷や汗が伝う
「そうですな。腕輪が壊れなかったと言うのは精霊に主と認められた証。後は経験だけですぞ」
ロイザードも手放しで褒める
『あーうん。主と認めたかはわからないけど、クリスティア様なら大丈夫なんじゃないかな』
狐太郎はともかくクリスティアも薄々は気づいてる可能性はあるが、主従関係と言うより苦楽を共にする仲間と言う扱いをした方が精霊は喜ぶ
昔師匠が「精霊と仲間として扱え」といっていた意味が今ならわかる
精霊にも感情はあるのだ
それを精霊の村で身を持って体験しているクリスティアやメアリーは大丈夫だと狐太郎は思っている
「いえ、召喚できたと言っても私はまだまだ未熟ですから・・」
慌ててパタパタと手を振るクリスティアだがグリットはとんでもないと首を振る
「昨今召喚士が現れたとは聞きませんから。これは凄いことです」
手放しで褒めるグリットにクリスティアは素直に「ありがとうございます」と礼を言う
見れば先程まで狐太郎を睨んでいたウェルキンが我が事の様にそうだろうと満面の笑みで頷いている
ちなみに1度精霊を召喚しただけでは召喚士とは呼ばれない
腕輪があれば誰でも1度は召喚できるからだが、そこは精霊との相性と言うことにしておこう
「ちなみに王都までは後どのくらいでしょうか?」
気恥しいのか話題をすり替えるクリスティア
「そうですね。急げは1日と掛かりませんが普通に行けば1日半くらいでしょう」
「急ぎたいのもわかりますが、後からフリッグ様達も来るので慌てないで行きましょう」
クリスティアの気持ちを見透かしてか、グリットはそんな言葉を掛ける
頷くクリスティアに一同も同じく頷く
そんな話をしていると、他所で野宿をしていたであろう2人組がこちらへ歩いてきた
2人ともそれなりに恰幅がよく身なりもそれなりでおそらく商人なのだろう
「あー、あんたらちょっといいか?」
「はい?何でしょう」
答えたのはデュラインだ
美味そうな匂いに釣られて来た、というわけではなさそうだ
クリスティアは少し2人組の影になるようにメアリーの後ろへ寄る
おそらくバレはしないと思うがクリスティアの顔を見たことがある人は少なくないのでバレればまずい
夜中というのと明かりは焚き火の明かりだけなのでなんとかバレずに済みそうだった
「もしかして王都に行こうとしてるのか?」
2人組の1人はデュラインに言葉を掛ける
「ええ、ちょっと用事がありまして」
デュラインがそう答えると2人組は苦い表情をする
「やめた方がいい。今はあそこは・・」
「おい、それ以上は・・・」
2人のそのやり取りにデュライン達は訝しむ
「王都で何かあったんですか?」
デュラインの言葉に2人は黙り込んでしまう
言いたくないのか、言えないのか2人組はしばし沈黙する
「お願いします。教えてください。」
声を上げたのはクリスティアだった
先程までメアリーの影に隠れて座っていたのだが出てきた
「ま、まさかクリスティア様・・・?」
焚き火の明かりに照らされるクリスティアの顔を2人組は凝視すると、驚き固まっていたのも一瞬で地面に頭を擦りつけた
「よくご無事で・・」
1人は涙を流している
「何があったか教えていただけますか?」
「は、はい。クリスティア様がいなくなってからしばらくは変わらない日々だったんですが、いつからか街に魔物が出るようになりまして」
「魔物?レッサーデーモンか!?」
「あ、いや魔物の名前はわかりませんし、自分達は実際見たわけじゃないんですが、見た人の言葉によると悪魔のようだったと」
ウェルキンや狐太郎達は視線をかわし頷き合う
「街に被害はでたのですか?」
「いえ、その魔物に襲われたと言う話は聞きませんでした」
「幻じゃないのか?」
「自分達もそう思ったのですが、街の自警団がたまたま発見して斬りかかったらしいんですが、跳ね返されて魔術による反撃を受けたらしいんです。幸い怪我はなくてそれ以降攻撃もしてこなかったみたいなんですが」
「仕掛けなければ襲ってこないのか?」
「上の方々はそういう結論に至ったらしく手を出すなと御触れが回ってました」
デュライン達は黙って聞いている
「しかしいくら襲ってこなくても街に魔物がいるなんて恐ろしくて・・いつか襲ってくるんじゃないかと夜も眠れない状態で・・・先日家族と話して王都を離れようと・・・・」
「すいません」
再び2人組は擦りつけるよう頭を下げる
「頭を上げてください。あなたがたの判断は間違っていませんよ。私も街に住んでいたら同じ決断をしたでしょう」
2人組は顔をあげホッとする
「色々聞けて助かりました」
「いえ、クリスティア様も王都へ向かうなら十分お気をつけ下さい」
「有難うございます。それと私の事は内密にお願いします」
「わかりました。クリスティア様が無事でいられるよう願っています」
クリスティアの言葉に意味を察したのか2人組は大きく頷くと2人組は去っていった
「どうりで王都方面からこちらに流れてくる人が多いわけだ」
「思ったより事は重大みたいですね・・」
去っていった2人組をしばらく見つめていたクリスティアはデュライン達に向き直る
「まさか王都内にレッサーデーモンが出てるとは・・王都の騎士団は何をしてるのだ!」
「被害が出てないなら静観するしかないのかもしれません。悪魔の数がどのくらいかわからない上に街中では被害が出る恐れがありますから。それに・・・」
「王宮内に魔族が入り込んでいる可能性もあり、うかつに対策を練れないのでしょう」
再び沈黙が辺りを支配する
「それでも、行かないわけには行きません」
沈黙を破ったのはクリスティア
その力強い言葉にウェルキン達も表情を取り戻す
「そうですね」
「わ、わたしもがんばりますよー」
「ああ、レッサーデーモンなんぞもう物の数じゃねえ」
「某も研究の成果をみせてやりましょう」
「まさか錬金の研究じゃないだろうな?」
「--!!ばっ、馬鹿を言うな。ちゃんと魔法の研究なのだ」
「今慌てましたね」
『うん、慌てたね』
「慌てました」
「慌ててましたね」
ウェルキンのツッコミに慌てたロイザードに追撃をかけたのは順にデュライン、狐太郎、メアリー、クリスティアである
ロイザードに味方はいなかった
「そ、某よりウェルキンやコタローはどうなのだ!?かなりのスパルタだったらしいではないか」
これ以上詮索されるのを嫌ったロイザードは話題を変えた
「ああ、魔剣の扱いもバッチリだ。次レッサーデーモンが現れても問題ないぞ」
『ウェルキンはまだ魔剣を完全に制御しきれてない感じだけどね』
「うるさい!!それを見分けられるのはコタローやごく一部だけだ」
『俺は経験を増やすためにひたすら模擬戦だったよ。疲れはしてないけど寝不足だったよ』
「あれで疲れないってどんだけタフなんだお前は」
『師匠との特訓の方が何倍もキツかったからね・・』
「コタローの師匠って・・・」
言葉を続けようとしたウェルキンだったが、狐太郎が遠い目をして現実逃避しているのに気付き言葉を噤んだ
「まぁでも2人共もの凄く強くなったって事ですよね?凄いです」
手放しで褒め称えるメアリー
「しかしあの地下施設は凄かった。さすがラグアニア王国筆頭騎士団なだけある」
『マキシムも魔剣持ちだったしね』
「ええ!?そうなんですか?」
狐太郎の言葉にデュラインは驚く
『うん、なんだったかな。魔剣フォティア?』
「ああ、俺も驚いた」
『魔剣てそんなにホイホイあるもんなの?』
「バカ言うな。そんなに簡単に手に入ったら魔剣じゃなくなる」
狐太郎の言葉に目を向くウェルキン達
『でも俺まだ持ってるよ。村に帰れば倉庫にも--』
「それだけ持ってて簡単に譲渡するコタローがおかしいんだ」
『あ、じゃあ返--』
「もう俺のもんだ!!」
2人のやり取りに笑いがおこる
「でもこう言っては何ですがコタロー様は簡単に道具を渡しすぎかと。もちろん感謝してますけど」
クリスティアの言葉に頷く一同
『それだけ信用してるって事で。初めてクリスティア様に会ってからあまりに真っ直ぐな目をしてたから信用できるかなって』
狐太郎の若干照れた言い方にクリスティアも顔を赤くして「あ、有難うございます」と小さくなる
ウェルキンはむぐぐと歯軋りしながら狐太郎を睨んでいた以外はほんわかした雰囲気だった
「話を戻したいのですが、フリッグ領騎士団の訓練場はそんなに凄かったのですか?」
このままではウェルキンがまた魔剣を抜きかねないと思ったデュラインは話を戻した
『うん、あの施設はすごいね。他の領地や国の騎士団の訓練場がどうなってるのかわからないけど』
「あの地下施設の訓練場は王都にもない。事が無事に済んだら作りたいもんだ」
「そんなに凄いのですか?」
「ああ。俺達はクリスティア様の専属護衛だからといって騎士団の奴らに遅れを取るわけにはいかん。怠けてはいられないな」
ウェルキンはやおら立ち上がると魔剣ファラムを手に持ち茂みの中へ消えていった
寝るまで鍛錬するのだろう
「某は怠けているとは思えないが・・・」
「相変わらずですね」
『それがウェルキンの強さの秘密でもあるんじゃないかな』
「単にクリスティア様の護衛を外されるのが怖いのであろう」
ロイザードが見も蓋もない言葉を返す
『それくらい一途って事なんじゃないかな』
狐太郎にそんな事を言われたクリスティアは暗がりではわからないが顔を赤くする
「まぁクリスティア様をお慕いする気持ちは本物でしょうね」
「それが頑張る原動力になってるなら何も言うことはないですな」
『原動力、か・・・』
狐太郎がポツリと呟くもあまりに小さい呟きだった為誰にも聞こえることはなかった
毎回お読み頂きありがとうございますm(_ _)m




