一章 23 処刑場
書くのが遅くてすいません(T^T)
広場は明け方はまだ閑散としていたが
日が昇るにつれ徐々に人が集まり出す
何やら新領主のダムルからのお触れが出回ったらしく領民は家事、あるいは商売の手を止めてこの広場へ集まっている
逆らう領民はいない
逆らえば牢屋行きか悪ければ見せしめとして処刑される
領民は覇気もなく気だるそうに広場に向かって集まっている
今度は何が始まるのか戦々恐々としている
『段々人が集まりだしてきてるね。にしてもよく処刑なんて見に来るな』
「領主がお触れを出したのさ。それに逆らうと牢屋行き、下手すりゃ処刑されるからな。嫌でも集まるってわけだ」
『公開処刑なんて趣味悪いし』
「まぁ見せしめって意味合いが強いからな。逆らうとこうなるぞってな。今のご時世は効果的なんだよ」
『嫌な世の中だね』
「まったくだ・・・」
屋根上のベランダにて軽く朝食を取りながらマキシムと狐太郎は広場を見つめていた
まぁ朝食と言っても干し肉を齧る程度だが
マキシムはハシゴがある建物の壁に寄りかかりながら、狐太郎は椅子に座りながら
『そういえばマキシムは行かなくていいの?』
「俺は昨晩は外門の見張りだったからな。引き継ぎ終わらして今日は非番なんだ」
『そうなんだ、助かったよ』
「ふん、礼はいらん。俺達も機を伺ってたしな。それにこれが失敗すればどの道終わりだからな」
『大丈夫、うまくいくよ』
「お前のその自信がどこから来るかはわからんが、動き出した時は止まらない。やるだけだ」
まだ日が出てから間もないからか若干肌寒く、狐太郎は自前のローブを羽織っている
フードは後ろに流しているが
対するマキシムは仕事が終わったからなのか、白銀の鎧は脱いでおり動きやすい軽装だ
話しながらも2人の視線は広場から動かしてない
こうして話している間も処刑場の広場には人が途切れなく集まってきている
しばらく無言でそれを眺めていると広場に向かって1台の馬車が走っていくのが見える
『あれは・・・』
「王女様・・だな」
狐太郎の呟きに答えるマキシムは苦笑いだ
「(考える事は同じか・・・)」
2人の視線は同じ馬車、しかし同じ場所でも見てる物が違うようだ
馬車と言っても王族が乗るような豪華な馬車ではなく、せいぜいが幌付きで日差し除けがついている程度で傍から見れば誰が乗ってるか一目瞭然だ
『良かった。無事だった・・・・』
「流石にいかなる理由があれど王族以外が王族に危害を加えれば裁かれる。王族を裁けるのは王族だけだ」
『それってどうなんだ?』
「言いたい事はわかる。しかし昔からこの国はそういう風にやってきている。幸いとして今まで王が愚者だったって事はないようだが」
王族を裁けるのは王族だけ
身内だけで裁くなんて処罰が甘くなると思うのは自分だけだろうか・・・
『それで今回は一番のピンチってわけだね。愚者が王になろうとしているから』
「あまり他人がいる前でそういう話をするなよ。仮にも王族に愚者などと言えば処刑されかねん」
『気をつけるよ・・・』
そんな話しているうちに王女を乗せた馬車は広間に到着したようだ
「さて、それでは俺達も移動するとしようか。時期に処刑人達も到着するだろう」
『・・・そうだね』
マキシムに悪気はないのだろうが狐太郎は仲間を処刑人と言われ若干顔を顰める
下に降りるマキシムに続いて狐太郎も続く
寝室に降りたマキシムはベッドの下から一振りの片手剣を取り出し腰に差す
『それ、普通に出回ってる安物の剣?兵士って支給されるものじゃないの?』
「支給された剣はダムルが領主になった時に没収された。反乱を防ぐ為だとな。お陰でこんな安物の剣を使う羽目になった。まぁこれもバレたらヤバイんだが・・・大丈夫だろう」
『それってまた領主が元に戻れば返ってくるの?』
「・・・ああ・・・・」
狐太郎の質問に、気難しそうに答えるマキシム
そうなる可能性は今は五分五分だ
ダムルを打倒してもフリッグ伯爵の体調が戻らなければ意味はない
現にフリッグ伯爵は今も衰弱していってるのだ
手遅れになる前にダムルを打ち倒す
そして解毒剤を手に入れる
五分五分と言ったが、かなり分が悪いかもしれない
それでも停滞し続けるよりはましだとマキシムは言い聞かせる
待ってれば事態が好転するなんて事はない
よしんばあったとしてもフリッグ伯爵の命というタイムリミットがあるのでは待てるはずはない、今が絶好の好機だ
「では行くぞ」
『え?鎧は着なくていいの?』
「非番の日に鎧姿で出回る方が怪しまれるだろう。それに鎧姿は目立つからな。こうして普通の服装ならあまり目立たんさ」
それでも帯剣してるのは目立つと思うけどと狐太郎の視線で気づいたのかは知らないが、入口にある洋服掛けから薄手の外套を羽織る
「これで剣も隠れるだろう」
ニヤリと笑うマキシムに狐太郎もつられて笑う
『用意周到だね』
「これも普段着だ」
狐太郎は狐太郎でポシェットから黒鞘の日本刀を取り出し同じく腰に差す
シェリーからのお手製のローブを着直し、フードを被る
「ほぅ、あまり見ない剣だな」
『うん、師匠お手製さ』
「一体何者なんだその師匠は」
『化け物だよ』
狐太郎は笑いながら答えるとマキシムは意味がわからないと言う顔をする
そして刀がローブに隠れて見えないのを確認する
「では行こうか」
言いながらマキシムと狐太郎は扉を開けて外へ出た
外へ出ると多少の人だかりがあるものの喧騒や賑やかさはない
みな同じように広場へ意気消沈とした顔で歩いていく
『暗い・・』
「仕方ない事だ。領民には抗う気力は残ってないさ。最初に全部絶たれたからな」
『最初?』
「ダムルが反乱を起こした時にな。無論俺達も対抗すべく向かったが、10数体の黒騎士に返り討ちさ。何人かは命も落としてる」
『マキシムも適わなかったの?』
「俺は他数人の兵士と一緒にフリッグ様の近辺の護衛だったんだ。だから黒騎士の実際の実力は見ていない。その報告を聞いた時にはすでに遅くてな。周りを黒騎士で固められたよ。一対一なら遅れは取らんと自負しているが、多勢に無勢だった。見かねたフリッグ様が自らと引き換えに騒動を収めた」
狐太郎は粛々と話すマキシムの話に大人しく聞いている
「それを奴は、実験と称してフリッグ様におかしな薬を飲ませやがった。そこからフリッグ様は衰弱していくばかりだ」
『毒?』
「わからん。通常の解毒薬や回復魔法も全て効かなかった。だから奴らを倒して解毒薬を、もしくは解毒法を聞き出す。もう時間がない・・・最後のチャンスだ」
マキシムは決意を感じさせる表情で行先を見据えている
それを隣で聞いていた狐太郎もマキシムの並々ならぬ覚悟に気持ちを新たに引き締める
『部外者の俺にそこまで話してくれるとは思わなかったよ。俺は正直、王女様達を助けるのが最優先だった。最悪助けたらここから逃げる手も考えてた。でもそれだけじゃ王女様に先がないのも確かだし。最後まで付き合うよ』
その言葉にマキシムは多少の驚きの表情を狐太郎に向け、ニヤリと笑う
「なら一蓮托生だ」
『毒を喰らわば皿までってね』
「ガキのくせに難しい言葉も知ってるな」
『ガキは余計だよ』
そんな話をしているうちに処刑場の広場へ到着する
「さて、それじゃ何処で待機するかね」
『んーまずはウェルキン達を助けなくちゃ行けないから処刑台の近くに行けないかな』
「構わんが、王女様の方はいいのか?」
『そっちは多分大丈夫だと思う。ウェルキン達を助けたらすぐに行こうとは思うけど』
「そうか・・・まぁコタローがそう言うなら大丈夫なんだろうが気をつけろよ」
『わかってる』
狐太郎はクリスティアに別れ際に渡した身代わりの護符と精霊の腕輪が頭に浮かぶ
それを持っていてくれれば少しは時間が稼げる
マキシムはマキシムで他の要因が浮かんだのだが・・
そんな事を話しながら2人は処刑台の近くへ移動する
「場所はこの辺りがいいだろう。何かあってもすぐ動ける。ダムルのいる場所からは見えずらいしな」
『それじゃここで時間まで待機?』
「そうだな。あまり他に割く時間もなさそうだしな」
マキシムが言いながら視線を他所に移す
狐太郎もつられてそちらを見ると
馬車が近づいてくるのが遠目でもわかった
ウェルキン達を乗せた馬車が到着する所だった
・・・・・・
クリスティアとメアリーを乗せた馬車はゆっくり広場へ到着した
周りの人だかりも王女がいるのはお触れで知ってるのか、ざわつきはするが騒動にはなっていない
御者のボルグが馬車を止め、王女と侍女に手を貸しながら馬車から降ろす
一部領民は王女に懇願するような視線を向ける者もいるが、次いで登場した馬車を見て大人しくなる
ダムルが乗った馬車が到着したのだ
来た馬車は豪華さで言えば先ほど王女が乗っていた馬車に比べて圧倒的だった
無駄に煌びやかで豪華な装飾がされた馬車は馬も3頭だ
まぁその内実は2頭立ての馬車ではダムルの体重に馬が長時間耐えられなかったからだが、そんな事は誰も知らない
紫と赤の鎧を来た私兵が御者を務める馬車はそのまま王女が止まっている馬車の横に止まる
荷台も外から見えないよう板で覆われており小さな窓には布が掛けてあり中は伺い知れない
そして王女達の馬車よりも重心が低く作ってあるのは重心が高いとダムルが乗り降りに苦労するからであろう
極限まで下げられた荷台は舗装されてない道だと擦りそうな感じだ
街中限定でしか使えなさそうである
そんな無駄に豪華な馬車から降りてきたのはもちろん現フリッグ領領主、ダムルである
御者が荷台の扉を開けると団扇で仰ぎながら登場する
荷台の中は流石に暑かったようで団扇をしきりに仰いでいる
まぁ等の本人のせいで荷台の狭い空間は湿度が高かったろう事は想像に難くない
馬車から降りて一息ついていたダムルは呼吸が整うと、クリスティアに大仰な挨拶をし始めた
「これはこれはクリスティア様、朝も早くからお呼び立てして申し訳ありません。本来なら王族であるクリスティア様にお見せするものではないのですが、クリスティア様を唆し誑かした輩ですから恨みもあろうと思い奴らの最後を見て溜飲でも下げていただこうと、こうしてお呼びした次第です」
いけしゃあしゃあと言い放つダムルにクリスティアは表情には出さないが不愉快そうだ
ダムルからは見えないが右手をギュッと握っている
「流石に危険なので近づく事はできませんが席を用意してますのでそちらからクリスティア様を誑かした輩の最後を見ていただきたいと思います。おい!」
ダムルの声に王女の御者をしていたボルグが動き出す
「席に案内します・・・」
抑揚のない声でボルグに促されクリスティアとメアリーは広場の端の一段高くなっている場所へ案内される
そこには簡易的は天幕が張られていて、また無駄に高級そうなテーブルと椅子が並べられている
少し離れて同じのが一式置いてあるのでおそらくダムルがそこに座るのだろう
ボルグに椅子を引いてもらい席に着く
そのボルグはクリスティアの少し後ろに控えるように立った
しばらくすると飲み物が運ばれてくる
ゆっくり寛ぎながら見ろとでも言うのだろうか
クリスティアが目の前に出された飲み物に顔を顰めていると遅れてダムルが歩いてきた
「いい場所でしょう。クリスティア様の為に最高の特等席を用意致しましたよ」
慇懃に、そして大仰にダムルは話し出す
それをクリスティア達は黙って聞いている
単に口を開きたくないだけかもしれないが
「もしよろしければ何か軽食でもお持ちしましょうか?」
「結構です・・・」
「そうですか、それではもうすぐ罪人が到着すると思いますのでしばしお待ちください」
クリスティアが即答で答えるとダムルは特に反論せずに自分の席に戻って行った
公開処刑を見ながら食事なんてできるわけがない
正気の沙汰ではない
移動したダムルの方へチラリと目線だけを移すと、彼のテーブルには軽食所ではない食事が運ばれてきていた
グラスにはワインだろうか
クリスティアは嫌悪感露にそれを食べ始めているダムルから視線を広場へ戻すと
街の方から1台の馬車が近づいてくるのが見える
檻が付いているのが遠目でもわかる
それがウェルキン達だとわかったクリスティアは一瞬立ち上がりかけたが大人しく座り直す
「(ウェルキン・・・)」
メアリーも、そしてボルグもただただ静かにウェルキン達を乗せた馬車が広場に到着するのを眺めていた
・・・・・・・・
ウェルキン達は地下牢から出された後はすぐ建物の前に馬車が用意されていて、それに有無を言わさず押し込められた
通常の馬車とは作りが同じだが荷台には格子で囲われていて、所謂護送者もしくは檻車と言うものだ
「完全に見世物扱いだな。せめて布で周りを覆って欲しいもんだな」
「すまんな・・・」
「いや、別にグリッドが悪いわけじゃない。気にしないでくれ」
「無駄話してねぇでさっさと乗れ!」
私兵が怒りを露にしながらウェルキンを蹴る
ウェルキンは一瞬ギロりと怒りを滲ませた顔で私兵を見たがすぐに表情を収め歩き出す
両手を後ろ手で縛られていて自由は効かない
全員乗り込むと出入り口の鍵をグリッドが閉める
「では出発する」
言葉少なにグリッドが御者台に乗り込み馬車は動き出す
私兵は付いてこないようでアクビをしながら建物の中に入って行った
「あの野郎、後で見つけたら真っ先にぶった切ってやる」
「落ち着いて下さいウェルキン。すぐにカッとなるのは悪いくせですよ」
「わかってるよ」
ウェルキンは小さく舌打ちをする
「それでグリッド殿、その処刑場まではどのくらいで着くのですかな?」
「あぁ、小半時もしないで着く」
小半時とは30分だ
ようするに30分も経たずに到着すると言うことだ
しばらくは馬車が揺れる音だけが辺りに響く
すると10分もしないうちに領民の生活圏に入ったらしく民家が周りに見え始める
「見てくる領民みんな辛気臭い顔してるなぁ・・・」
「以前も公開処刑と言うのはあったのですか?」
デュラインが領民を眺めながらそれとなくグリッドに聞く
「ああ、ダムル様が領主になった時にな」
「それでか。領民が怯えた顔をしてるのは」
「見せしめと言う意味合いが強いのでしょう。ダムルと言う男は私利私欲に凝り固まった人物で人望は皆無らしいですから」
「力で押さえつけるか・・・」
「見た目で民の為に動かない奴だってのはすぐわかった。あんな体型してるんだ。どんだけ贅沢してきたかって事だ」
「そんな奴をよく領主に据えようと思う輩がいるものだな」
「恐らくフリッグ伯爵が邪魔だったんでしょうね。真面目で裏表がなく人望ある人だと伺っています」
「詳しいな」
3人の会話に御者のグリッドが相槌を打つ
「それはまぁ・・とにかくその性格が今回の黒幕には邪魔だったのでしょうね。変えるなら兄のダムルでなくても良かったんじゃないかと思いますが、手っ取り早かったんでしょうね」
「迷惑な話だ。あの無駄に膨れた腹の肉を削いでやりたいくらいだ」
「某は魔法で黒焦げにしたいですな」
「あんたら頼むからそんな物騒な発言は本人の前では控えてくれよ」
グリッドはこちらを向いてないのでわからないが真面目に答えてるわけではないのはわかる
「これから処刑されるのに今更何を言っても変わらんだろう」
「本気か?」
今度は振り向くグリッド
本当に処刑される気なのかと驚きの表情だ
「まさか。せいぜい悪あがきはさせてもらう」
「規模は保証しないですが」
「2人共グリッドを驚かすのはやめてください」
デュラインが2人を宥めている
「まぁあんたらがタダで死ぬタマじゃないのは知ってるけどな・・・その悪あがきに・・・・・」
再び前を向いたグリッドの呟きの最後は3人には聞こえなかった
再び馬車の走る音だけが聞こえる中、しばらくするとグリッドが口を開く
「見えたぞ、あれが処刑場だ」
広さは民家6件分くらいの広さだろうか、周りを木々に覆われており外からは見えないようになっている
「ほぅ、なかなか広いな」
「元は噴水があるごく普通の広場だったんだがな」
「ダムルに変わってから処刑場になったと」
「あぁ、噴水も潰されてベンチも全て撤去されて閑散としてる」
「悪あがきするにはちょうどいい広さじゃないか」
ウェルキンが悪人もかくやと言うくらい意地の悪い笑みを浮かべる
よっぽど鬱憤が溜まっているんだろう
「みた感じコタロー殿はいませんな」
「いても簡単に見つかる場所にいるわけないだろう。あいつの事だ、いるならどっかに隠れているに違いない」
広場に入りキョロキョロと周りを見回しながら喋るロイザードにウェルキンは答える
「どうやら私たちが最後みたいですね」
「どういう事だ?」
デュラインの呟きに2人は視線をデュラインが見てる方へ動かす
「クリスティア様!」
「無事だったようですな」
「当たり前だ。もし何かあったら今すぐにでもあの肉ダムルを殺しに行く」
「無事だったんだから落ち着いてくださいウェルキン」
「横にいるのはダムルか。処刑場で飯食ってるぞ」
「信じられませんな」
「それについては同意します」
「あんたらもう少し立場を考えろよ」
広場について騒ぎ出す3人にグリッドは呆れた視線を向ける
そんなやり取りをしてる間に馬車は処刑台の近くに止まる
読んで頂き本当にありがとうございますm(_ _)m




