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超短編

ぬしがみさま。

作者: しおん

「ああ、こりゃ"ぬしがみさま"に噛まれたな」


ぬしがみさま。

それはこの土地に伝わる妖怪のようなもので、けして人が見ることはかなわないが、ぬしがみさまの住処があるとされる村の南に位置する山に勝手に足を踏み入れると、何時の間にか体の何処かを噛まれているのだ。

噛まれるというのはそのままに、噛みつかれているという意味で、まるで狼にでも噛みつかれたかのような深い傷跡が何時の間にかついているのだ。

それはもう、血が溢れ出し傷口が膿んでいても気がつかないほどに。ごく自然と傷口が生み出されているんだ。


ぬしがみさまがなぜ噛んでくるのか。その理由は未だにわからない。

若い血が欲しいのか、なにかものを要求しているのか、自分の住処に近づくものを退治しようとしているのか。

思いつく限りのことは実行したのだが、噛み跡がなくなることはなかった。


ぬしがみさまの噛み跡は遥か昔からあるようで、村の神社の古文書のどれをみても南のやまにただ噛み付いてくる正体不明の化け物がいると表記されているだけだった。だれがいつ、ぬしがみさまと呼びはじめたのかすら、明確には書かれていなかった。それに、体に傷はできるが、毒があるわけでもなく、死ぬわけでもない。時期になおってしまうのだ。それはもう傷などなかったかのように。




私が幼少期に祖父から聞いたぬしがみさまの話は、一言も違わぬまま年老いた今でも語り継がれている。きっと私の孫が私と同じぐらいになってもそれはかわらないだろう。


最近では、山にはいるのだってそう頻繁なものでもない。他の山では補えないものをとりに行く程度であり、そんなちょっとの傷がつく程度のことで悩んでいるのは馬鹿馬鹿しいと最近では噛みつかれることを気にもしなくなっている。



ぬしがみさまはいったいなにがしたいのか。それは未だに謎である。


読んでくださって、ありがとうございました。

感想などいただければ幸いです。

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