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突撃!! AHOの子ロボ分隊!  作者: 高階 桂
Mission 04 中央アジア内戦突入回避せよ!
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第二十五話

「諸君、ご苦労だった。一時はどうなるかと思ったが、事態はなんとか収束してくれたようだ。

 長浜一佐が、無事帰国したAI‐10たち五体を労う。

「一佐、もっと褒めてやってくださいー。こいつらの臨機応変の才は、たいしたものですー。いくら学習機能に優れているとはいえ、あれだけ困難な状況で適切な判断を下し、それに基いて行動するのは、訓練された工作員でも難しいはずですー」

 畑中二尉が、そう口添えする。

 オカルトビル……もとい、岡本ビル四階の、例の事務室に一同は集まっていた。無事帰国できたAHOの子たち五体と、畑中二尉。別ルートで帰国した三鬼士長。留守番組だった長浜一佐。そして応援に駆り出された越川一尉と石野二曹。それに加え今日は、西脇二佐も顔を見せている。

「そのあたり、どうもよく判らないんだよね」

 頭を掻きつつ、その西脇二佐が口を挟んだ。

「アサカの技術屋さんとも話をしたが、諸君らの言動その他は通常のAI‐10の能力を若干上回っているとしか思えないのだ」

「色々とカスタマイズしたせいではありませんか?」

 スカディが、言う。

「いや、その分を考慮しても、諸君らの能力は『異常』だ」

 西脇二佐が、言い切る。

「推定だが、尋常ではあり得ない経験が学習能力を飛躍的に高めたこと、そしておそらくは五体が同一行動を取ることにより相互に刺激し合い、学習効果をさらに向上させているのではないか、とわたしは想定している。アサカの方でもこの点に注目して、対照実験として五体のAI‐10に共同生活をさせるという試みを開始したそうだ。これが成功すれば、人工知能の後天的学習に関してなんらかのブレイクスルーが得られる可能性が……ないでもない」

「なるほど。人工知能が切磋琢磨するわけだ」

 亞唯が、うなずきながら言う。

「まるで合宿ですね! アニメでも、合宿の後は急に技量が向上したり連帯感が増したりしますからね!」

 シオはそう指摘した。

「一緒に炊事したり、大浴場で入浴したり、夜中に後輩が本音をぶちまけたりする必要があるんやけどな」

 雛菊が、突っ込みを入れる。

「ところで、神田元総理はどうしていますの?」

 スカディが、訊いた。

「今のところ大人しくしているようだなー。帰国後の記者会見でも当たり障りのないことしか言わなかったし、民主連盟党の公式発表もカバーストーリーの枠内だったー。このまま黙っていてくれれば、いいんだがー」

 首を傾げつつ、畑中二尉が答える。

「では、解散としよう。本当に、よくやってくれた。まあ、ウズベキスタンとの紛争が収まったのは、運が良かったわけだが。では最後に、西脇二佐から今後の改造計画と居残りの発表だ」

 長浜一佐が、西脇二佐に合図する。

「諸君らは本来は家事兼愛玩ロボットだ。したがって、バッテリー容量はそれほど大きくない。これは、軍事用としては……もとい、警備用としては大きな弱点となる。そこで、諸君らに新たな動力源を標準搭載することにした」

 西脇二佐が、居並ぶ五体を眺め渡しながら言う。

「おおっ! ついにあたいたちも原子炉搭載型に進化するのですね!」

 シオは思わず身を乗り出した。

「いや、いっそのこと核融合エンジン搭載で」

 亞唯が、悪乗りする。

「うちは螺旋エンジンがいいで」

 雛菊が、笑いながら言う。

「どうせなら、無限力で動くというのはどうでしょう~」

 ベルが、そう提案する。

「みなさん夢を見すぎですわ。ポリマーリンゲル液くらいが、現実的でしょう」

 スカディが、たしなめる口調で言う。

「……いーかげんにしろ、お前らー」

 畑中二尉が、呆れたように突っ込む。

「……あー、言い方が悪かったな。バッテリーを一部外して、発電用のマイクロガスタービンを組み込むだけだ。液体燃料用の、小さなタンクも併装する」

「ガスタービン。発電用としては、単体ではあまり燃料効率が良くないと聞きますけれど?」

 スカディが、質問口調で言う。

「熱回収を行わない場合は、その通りだ。だが、静音性と多種燃料対応を考えて、ガスタービンを採用した。基本は液体燃料仕様だが、各種の可燃性のガス……メタンやプロパンなどでも発電可能だ。液体の方も、ガソリン、軽油、灯油、A重油、エタノール、メタノールなどが使える。ただし、普段はできる限り使用せず、通常使用する場合でも自動車用ガソリンを使ってほしい。メンテナンスが面倒だからね」

 身振りを交えながら、西脇二佐が説明する。

「たしかに、発展途上国でまともな電源や発電機を見つけるよりも、ガソリンや軽油を手に入れる方が簡単だからね。この装備は、ありがたいよ」

 亞唯が、言う。

「まあ、いくつか問題はあるがね。一番は、バッテリーそのものの数が減るせいで、稼動時間が一時間程度減少することだ。もちろん、タンクにガソリン満タンで発電を行えば、減ったバッテリーの充電量よりもはるかに大きな電力を得られるわけだが。二つ目は、空気だ。発電時には当然給排気が行われる。ガスタービンの排気は比較的クリーンだが、それでも窒素酸化物などの有害物質が含まれている。酸素も大量に消費するから、密閉度の高い空間で発電する場合、人間や動物には充分に配慮すること。三つ目は、排熱。諸君らの体内に熱がこもらないように、強制排熱するシステムは組み込む予定だが、発電中は大量の熱を放射することになるだろう。赤外線対策が必要な場合は、発電はしないように。四つ目は、騒音。ガスタービンの駆動音は静かなものだが、しょせんはエンジンだ。電動にくらべれば、はるかにやかましい。このあたりも、留意してほしい。五つ目は、これが違法改造だということ。マスターにも、改造を悟られてはいかん」

 内蔵バッテリーや電力ケーブル接続で駆動するいわゆる『電動ロボ』と、内燃機関搭載型(これには純然たる発電機搭載タイプも含まれる)『エンジンロボ』は、法律上で厳密に区別され、規制されている。勝手な改造はもちろん、違法である。

「まあ、腕にスタンガン仕込んどる時点で違法やけどね」

 雛菊が、肩をすくめる。

「注意はそんなところかな。改造開始は、三週間後を予定している。その時にまた、集まってくれ。それから、居残り組みだが……スカディ、残ってくれ。特別改造を行う」

「わたくしですの?」

 スカディが、自分を指差しながら意外そうに言う。

「そうだ。主に音響系の改造を受けてもらう」

「音響改造? カラオケ機能とかつくんちゃうか?」

 雛菊が、笑う。

「ソナー内蔵だろ。泳ぎながら、潜水艦探せるようになるんだ。凄いな」

 亞唯が、半笑いで羨ましそうに言う。

「耳コピ機能とか、便利そうですねぇ~」

 ベルが、言う。

「おおっ! ついにスカディちゃんボーカ○イド計画が開始されるのですね! これは本気で羨ましいのです!」

 シオはその場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

「……お前ら、言いたい放題だなー」

 畑中二尉が、呆れる。




 シオは適量の米と水を入れた炊飯釜を炊飯器にセットし、蓋を閉めた。『炊飯』のスイッチを入れ、赤いパイロットランプが点灯したことを確認する。

「炊飯器セット、OKなのです!」

 自分の仕事に満足したシオは、キッチンを出た。もうすぐ、『妖精ブローチ』が始まる時刻である。

 テレビの前には、聡史とミリンが仲良く並んで座っていた。画面に映っているのは、政治討論番組であった。

「またつまらない番組など見ているのですね!」

 シオはミリンをたしなめた。

「いや、今日はなんだか面白いぞ。馬神田が左翼連中に噛み付いてる。宗旨替えしたのかな」

 空になったビールの缶をもてあそびながら、聡史が言う。

 番組内では、ちょうど神田元総理が発言中であった。シオも見覚えのある反核活動家として有名な大学教授を相手に、熱弁を揮っているところだ。

「わたしも、核兵器の廃絶には原則的に賛成だ。だがそれは、紛争解決の手段としての武力行使を容認するという立場から、大量虐殺兵器の使用を極力防ぐための方策として、核廃絶を求めているに過ぎない。究極の目的は平和であり、武力行使が小規模かつ人道的であればあるほど、平和の回復がた易いことは自明だろう。ところがどうだ。あなたが先月出した著書は、核兵器の即時廃棄を唱えているだけで、核廃絶後の世界の安全保障体制について、はっきりとしたビジョンを打ち出していないではないか。現状で安易に核兵器の即時廃棄などすれば、第三次世界大戦を惹起しかねないぞ。これは、国際秩序に基く平和に対する挑戦ではないか」

 『仲間』だと思っていた神田元総理からの予期せぬ攻撃にうろたえた大学教授が、しどろもどろに反論を始める。

「だいたい、あなた方は本気で平和を求めようとしているのか?」

 支離滅裂な言い訳を遮って、神田元総理が畳み掛けた。

「核廃絶は平和への一階梯に過ぎない。だが、あなたを含む一部の反核活動家は、核廃絶を究極の目標に据えてしまい、平和という物をないがしろにしているのではないかな? 核兵器がこの世から無くなるためには手段を選ばないし、結果にも責任を持たないつもりなのでは? いわば、核廃絶原理主義者だろう。平和など二の次、とにかく核兵器さえ無くなれば、それでいいと思っているのではないか?」

「あー、それは俺も思ってたなー。反核や反戦平和を訴えてる連中の中に、目的と手段を取り違えている奴が多いよ」

 聡史が、神田元総理の言葉にうなずきつつ言う。

「どういう意味ですか? よく判らないのですが」

 ミリンが、小首を傾げて聡史を見上げる。

「反核も反戦平和も、目的は平和のはずだ。だけど、連中の中には核兵器廃絶だの米軍基地撤退だの平和憲法護持だの、自分たちの運動にのめり込むあまり、平和の維持を妨害する行為を平気でやっちまう奴らがいる、ってことさ。平和を得るための手段のひとつでしかない運動の成功を、究極の目的と思い込んでしまうんだな。馬神田が言うとおり、原理主義だよ、これは」

「だいたい、平和憲法とはなんだね?」

 画面の中では、神田元総理が矛先をがりがりに痩せた憲法学者に向けていた。

「真の平和憲法とは、平和を希求し、平和の維持のために尽力する国民と、彼らに支えられている国家をサポートすべきものなのではないかね? 憲法が、国民に守られてどうする。憲法は、国民を守るべきものだろう」

「神田さん、では、あなたは現行憲法を……」

 若禿げ小太りで眼鏡を掛けた右傾ジャーナリストが、期待を込めた視線を神田元総理に向ける。

「人によって多様に解釈できる現行憲法は、不備があると言うべきだ。憲法を解釈するのは、政治家でも役人でもましてや憲法学者でもない。国民がやるべきだ。まともに基礎教育を受けた国民が読めば、同一の解釈しかできない簡明平易な、極めて悪用しにくい憲法を新たに……」

「ちょっと。あー、花沢さん。あんたも何か言いたそうだ。花沢さん、どうぞ」

 雲行きが怪しくなってきたことを見取った司会者が、強引に在日疑惑イケメン小説家を指名する。

「平野の奴、また盛り上がってきた所で切りやがった」

 聡史が、司会者を貶す。

「スポンサーの意向とか、あるのでしょうか」

 ミリンが、言う。

「もう政治的には死に体の元首相の話などどうでもいいのです! 『妖精ブローチ』の時間なのです!」

 シオは強く主張した。

「わかったわかった」

 面倒くさそうに言った聡史が、シオにリモコンを渡した。空のビール缶を手に、お代わりを求めてキッチンに向かう。

 シオはさっそくチャンネルを切り替えた。小説家相手にまたも熱弁を揮い始めた神田元総理の顔が消え、チョコレート菓子のCMが映し出される。

「さあ、ミリンちゃん立つのです! 一緒に『妖精ストレッチ』を踊るのです!」

 シオは手を貸して、ミリンを立ち上がらせた。

『妖精すとれ~っつちぃ~。さん、はい!』



 Mission 04 色々迷走したけどとりあえず成功?

これにてMission04終了です。お読みいただきありがとうございました。次回よりMission05開始となります。お待たせいたしました。いよいよ次回からは実在国家での活躍となります。舞台は中華人民共和国、ネタは軍用ロボットと極秘データ争奪戦となる予定です。

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