第二十二話
「完璧な証拠です。これで、大手を振って軍事行動に踏み切れます」
大統領首席補佐官が力説する。
ホワイトハウス西翼にある大統領執務室には、安堵の空気が立ち込めていた。シラリアの独裁者モーゼス・エサマ大統領に下される米英両国による鉄槌……戦闘爆撃機による誘導爆弾攻撃……を行う大義名分を支える確たる証拠が、ついに手に入ったのだ。しかも、サリンの前駆物質の現物という形で。
「すでにドイツが、サリン分析を行うことを承諾してくれました」
国家安全保障問題担当大統領補佐官が、説明する。
「イギリス政府の要請に応じ、オランダ、ポーランド、スウェーデンの三カ国が、オブザーバーを派遣し、ドイツ連邦軍施設におけるサリン分析に立ち会うことを決定しました。アル・ハリージュ・テロで撒布されたサリンのサンプルも、イギリスの手によってドイツに提供されます」
「よろしい。望外の結果だな。テオ、君の提案を採用して良かったよ」
タッカー大統領が、上機嫌で国家情報長官を褒めた。
「恐れ入ります。……しかし、思った以上に高性能ですな。この日本のAI‐10というロボットは」
「見た目はとても高性能には見えませんがね。どうも、日本人の感性はわからない」
副大統領が言って、笑う。
「あら。ポ○モンみたいで、可愛いじゃないですか」
女性国務長官が、笑顔で言い返す。
「もともとこのAI‐10というロボットは、我々の『シルバーシード・プロジェクト』の模倣から生まれたロボットだそうじゃないか。どうだね、CIAでも何体か買ったらどうだ」
冗談だとはっきりと判る口調で、大統領が言う。
軍事予算抑制のため、調達費用と維持費用の嵩む高性能軍事ロボットの採用は少数に止め、戦時には軍事転用を前提として開発された民間用ロボットを大量徴集し、低性能軍事ロボットとして活用する……。いわゆる『ロボットの徴兵制』を行うことを目的とし、合衆国政府と三軍、ランド・コーポレーションを始めとする各研究施設、合衆国ならびにカナダの三大ロボットメーカー……マレット・インターナショナル、モス・ロボット・インダストリーズ、ヘルソン・ロボティクス……と、軍用ロボット専門企業であるMRTが共同で進めつつある『シルバーシード・プロジェクト』は、すでに二種類の軍事転用可能な民間ロボットを開発し、大量生産していた。ひとつは、マレットが開発した家事ロボットMk5。もうひとつは、モス開発の作業用汎用ロボット、スカラブである。
「性能から言えば、マレットMk5やモスのスカラブの方が上です。しかし、アメリカ製のこれらロボットは、見た目が『武装していない民間ロボット』ですからね。たしかに、あのような隠密作戦に投入するには、不適切です」
CIA長官が、言い訳するように言う。
「シルバーシードとは直接関係ありませんが、現在MRTが開発中のGR‐60はかなりリアルな人型ロボットで、かつ高性能です。このような作戦にも、使えるでしょう。CIAでも、導入を前提として研究を行っています」
「それは楽しみだな」
大統領が、うなずいた。同時にちょっとした身振りで、首席補佐官に次の議題に移るように命ずる。
「またロボット関連です。中国で消息を絶った陸軍の偵察用ロボット、HR‐2000のデータ回収を目指していたエージェントからの連絡が、完全に途絶えました。中国側に捕縛された可能性が高いようです」
淡々と、首席補佐官が説明した。
「良い知らせの後には、悪い知らせが来るものですね」
女性国務長官が、天井を仰ぐ。
エネンガル共和国大統領、ダニエル・ロデ氏には悪癖があった。
油彩を描く趣味である。
その趣味自体は、別に悪いことではない。それどころか、高尚な趣味と言えよう。イーゼルを据え、風景や静物や人物を描く。文化的で、かつ芸術的。五十過ぎの男性が行う趣味としては、極めて優雅な部類に入ろう。
しかし、ロデ氏のこの趣味には二つの問題点があった。ひとつは、彼が一国の大統領という高い地位にあるということ。もうひとつは……絵筆を握ってからもう三十年近く経とうというのに、一向にその腕が上達していない、という点である。……はっきり言おう。下手糞なのだ。
比較的富裕な階層に生まれ、地元エネンガルで高等教育を受けて、パリに遊学した若き日のロデ氏。言うまでもなく、パリは芸術の都である。ルーブルを始めとして、数多の美術館が存在し、多数の巨匠の作品が収蔵、展示されている。その中でも、油彩の質と量は世界一と言える。
数々の名作を目にして、ロデ青年は油彩に魅せられた。そして、自ら絵筆を握ることになる。
幸いなことに、ロデ青年は自分の画才がたいしたものでないことをすぐに悟った。だが、彼は描くことの喜びの虜にもなっていた。学業に専念しつつも、彼は趣味として絵筆を握り続け……そして駄作を生み続けた。
エネンガルに帰国してからも、その趣味は続いた。鉱山技術者として仕事を得、さらに労働運動に関わって政治家としての素質を開花させ、地方議員に当選してからも、なお暇を見ては絵筆を握り続けた。やがて下院議員、次官、大臣と要職を歴任し、ついに大統領選挙に打って出て当選する。
ここまで高い地位を得ると、駄作にもそれなりに価値を見出す人が出てくるものである。元々気前のいい性格だったから、描き溜めた駄作の多くは、欲しがる人……めったにいなかったが……の手に渡っていた。それらが、『大統領の描いた絵』として珍重されることとなる。
かくして、エネンガルとその周辺国の美術館や大学、大企業や有名ホテルのロビーなどに、下手糞な油絵が数多く飾られるようになった。ロデ大統領は、談話として自分の作品のレベルの低さを率直に認め、他の場所はともかく美術館に展示するのはやめて欲しいと述べたが、効果はなかった。
今日も早朝から、ダニエル・ロデ氏は戸外でディレクターズ・チェアに腰を下ろし、絵筆を握っていた。一週間の予定で急遽取った休暇を、海岸近くにある別荘で過ごしながら、油彩を描く。ロデ大統領にとっては、至福の時間である。
イーゼルの上に乗っているキャンバスには、もうかなり色が載せられていた。別荘の海側に広がる湿地帯を、描いたものだ。海水が入り込んで塩分が多く、植物はほとんど育たないそこは、貝類を中心とする海棲生物の宝庫であり、それを狙ってやってくる海鳥たちの天国でもあった。一見灰色一色の陰気な風景に見えるそれだったが、天候や光の具合によって様々な様相を見せてくれる面白い画材であった。……問題は、それをキャンバスに写し取るだけの力量がロデ大統領にないことであるが。
「ん?」
気配に気付いて、ロデ大統領は筆の動きを止めた。
いつの間にか、誰かが背後に立っていたのだ。絵の具をキャンバスに載せることに夢中になっていたので、気付かなかったのだろう。
「お久しぶりですな、ムッシュ・ロデ」
聞き覚えのあるしゃがれた声が、言った。
振り向いたロデ大統領は、驚きに目を見開いた。
立っていたのは、隣国シラリア共和国のナンバー2、ジェームズ・ドランボ国防相だった。しかも、迷彩戦闘服に身を包み、ピストルベルトを下げるという物々しい姿である。その後ろには、シラリア人の陸軍士官が付き従っていた。こちらも迷彩戦闘服姿だが、武装はしておらず、なぜか手に小型のビデオカメラを持っていた。そのレンズは、ロデ大統領とドランボ将軍にぴたりと向けられている。どう見ても、撮影中であった。
「ドランボ将軍……。なぜ、ここに?」
彼がエネンガルを公式訪問する予定などないはずである。仮にあったとしても、この別荘に招待した覚えはない。
にこやかに微笑みながら、ドランボ将軍が数歩近付いた。小柄な身体をわずかに折り、キャンバスをじっと見つめる。
「なかなか見事な抽象画ですな」
「風景画です」
ロデ大統領は、不機嫌そうに応じた。下手なのは自覚しているが、皮肉を言われれば腹が立つ。
「ところで、何のご用件ですかな? それと、撮影はやめていただきたい。許可した覚えはない」
絵筆を置きながら、強い口調でロデ大統領は申し入れた。
「歴史的瞬間ですからな。記録するのはご容赦願いたい。単刀直入に申し上げましょう。閣下を保護拘禁させていただきます」
「……将軍。お持ちの地図が間違っておいでのようだが。ここは、エネンガルであってシラリアではないぞ」
「ニヤ大統領のご命令です」
「カレンダーも間違っておられるようだ。大統領選挙は来年の三月だが。それに、マスコミの調査ではラミ外相が圧勝するという予測が出ているが」
「ご存じないようなのでお伝えしておきますが、今から十分ほど前にパトリック・ニヤ国防相は大統領就任の宣言と非常事態宣言を行われました。今現在、この国はニヤ大統領によって暫定統治されております」
……馬鹿な。
ロデ大統領が、後継者にラミ外相を指名する意向であることがはっきりした時点で、次期大統領選挙においてニヤ国防相が勝利する目は皆無となった。それゆえ、ニヤ国防相による暴力的な政権奪取……つまりはクーデターが起こるという噂は根強く流れていた。だが、その成功の可能性はゼロに等しいと、ロデ大統領は看做していた。国防相の肩書きを持つとは言え、海軍出身であるニヤは陸軍を掌握できておらず、仮にクーデターに打って出たとしても兵力不足によりすぐに鎮圧されることが明白だからだ。わずか一個大隊の規模でしかない海兵隊と、陸軍の一部、それに内務省の一部程度しか実働戦力を持たないニヤ派など、首都警備の陸軍一個師団だけでも一日あれば殲滅させられるはずだ。パトリック・ニヤ自体は、ロデ大統領が一時は後継者として考慮したことがあるほど、有能な政治家である。野心家ではあるが、成功の見込みのないクーデターを起こすような愚か者ではない。
「いったい君は……」
言いかけたロデ大統領は、ことの真相に気付いてはっと口をつぐんだ。
なぜ隣国の将軍がここにいるのか。ニヤ国防相が以前より説いていた『エネンガル‐シラリア連邦化』案。実働戦力不足のクーデター。
絵の腕前はひどいものだが、ロデ大統領の政治手腕は確かである。石油収入の後押しがあったとは言え、エネンガルを西アフリカ有数の豊かな国に押し上げ、高支持率を背景に長期政権を維持してきた。当然、頭も切れる。
「お判りになったようですな」
ロデ大統領の顔色が変わったことに気付いたドランボ将軍が、笑みを深めた。
「ニヤ大統領は、兄弟国家であるエネンガルとシラリアの連邦化を提案し、シラリア人民共和国大統領モーゼス・エサマ氏はこれを受け入れました。すでに、シラリア議会の承認も受けております。国際法上の承継国家はエネンガル。つまり、シラリアがエネンガルに吸収される形ですな。ニヤ大統領は、閣僚名簿の発表も行いました。ニヤ大統領は新国家の大統領となり、副大統領に元シラリア共和国内務大臣エリオット・マアベ氏を指名しました。不肖わたくしも、国防次官を拝命しております。ニヤ大統領は、エネンガル憲法に基き、前政権の主要メンバーの保護拘禁を、わたくしにお命じになられました」
早口で説明したドランボ将軍が、すっと手を伸ばすとロデ大統領の手首をつかんだ。
「ダニエル・ロデ前大統領。エネンガル憲法第七十二条に基き、あなたを政治的に好ましからざる人物として、保護拘禁させていただきます」
「保護拘禁。狙いはなんだ?」
短いが逞しいドランボ将軍の腕に引き上げられるようにして、ロデ大統領はディレクターズ・チェアから立ち上がった。
ドランボ将軍が、ビデオカメラの士官に合図する。士官が、撮影を中断した。
「どうか、ご協力いただきたい。ニヤ大統領は、無血クーデターを狙っているのですよ。エネンガル人の血が流れることは、避けたいのです」
「……わたしに、政権を譲れと言うのか?」
「そうしていただければ、ありがたい。すでに、元シラリア陸軍第6旅団が、クーデター支援のため南下し、旧国境に迫りつつあります。陸軍は、我々があなたの身柄を押さえているあいだは動けないでしょうが、元シラリア陸軍が旧国境を越えれば交戦を開始する可能性がある。それを止めるには、閣下が国民に政権禅譲を表明するか、陸軍に抵抗しないように命じていただくしかありません。どちらかを、お願いしたいのです。……血を流さないために」
「虫のいい話だな」
「閣下のご協力がなければ、エネンガルは内戦状態となり、これにシラリアが介入する、という形になりますよ」
ドランボ将軍が、そう指摘する。
「パトリック・ニヤのやり口ではないな。……シナリオを書いて、ニヤをけし掛けたのは君か? それとも、エサマか? エサマのピースはこの醜悪なジグソー・パズルのどこに当てはまるんだ?」
「モーゼス・エサマ元大統領は、大統領顧問としてニヤ新大統領を補佐するお立場です」
「大統領顧問……。陰でニヤを操るつもりか。君はエサマと組んで、最終的にエネンガルを乗っ取るつもりなのだろう?」
ロデ大統領は憤然としてドランボ将軍に詰め寄った。身長は、たっぷり二十センチはロデの方が高い。だが、ドランボ将軍は毛筋ほども気圧された様子は見せなかった。
「その質問には、お答えできませんな。では、参りましょうか」
ドランボ将軍が、士官に合図した。
ビデオカメラによる撮影が、再開された。
「晴天の霹靂、やなぁ」
ホテルの窓から街路を見下ろしながら、雛菊が言う。
人通りは、極端に少なくなっていた。車の流れも激減しており、時折通り過ぎる警察車両の姿がやたらと目立つ。
とりあえず、サン・ジュスタン市は平穏を保っていた。クーデターが起きた都市にありがちな、交差点に駐車する軍用装甲車と立哨する兵士、などという光景はないし、銃声も聞こえてこない。
一同は困り果てていた。空港が閉鎖されてしまったので、メガンとアルのCIAコンビは帰国できなくなってしまった。デニスも、出国できなくなった。日本勢も、チャーター機を呼んだとしても着陸許可が出るわけがないので、動きようがない。
昨晩はルイの手配で、石野二曹を除く人間勢全員が個室で眠ったが、クーデター発生を受けて皆がAI‐10たちと石野二曹が『泊まった』続き部屋へと集まっていた。
シオたちAI‐10は、リビングで情報収集中であった。テレビ一台、ポータブルラジオ二台を使い、頻繁に放送局を切り替えて、役に立ちそうな情報を拾い集めていたのだ。
デニス、メガン、アル、越川一尉、それに石野二曹は、寝室にこもって鳩首協議中である。
その寝室から、疲れたような表情のデニスが出てきた。
「すまん。誰かコーヒーを淹れてくれないか」
「お任せ下さいぃ~」
床に座り込んでラジオを聴いていたベルが、すぐに立ち上がった。
「で、新しい情報は入ったか?」
デニスが、他のAI‐10たちに尋ねた。
「今のところ、ないようですわね」
代表して、スカディが答えた。
「しかし……シラリアを巻き込むとは恐れ入ったね」
亞唯が、故障している腕をさすりながら言う。
「元々ひとつだったことを強弁して連邦化。クーデター戦力の足りない分を、シラリアに出させるとは。このパトリック・ニヤという人物、相当の悪人だよ」
「……いや、シナリオを書いたのはモーゼス・エサマの方じゃないかな」
デニスが、そう言った。
「シオとベルが聞いた大佐の電話の内容からして、今回のクーデターにドランボ将軍が関わっているのは明白だ。となれば、当然エサマ大統領も噛んでいるだろう。ニヤをけし掛けてクーデターを起こさせ、自身は大統領顧問という目立たない地位に納まって、ニヤを操る。貧乏国家のナンバー1よりも、豊かな国のナンバー2の方が、色々とおいしいはずだ」
デニスの言葉を受けて、スカディがうなずいた。
「エネンガルとシラリアを足せば、ナイジェリアに次ぐ国家規模ですからね。西アフリカでは、大国と言っていいでしょう。確かに、おいしい地位ですわ。……しかし、国際法上はどうなるのでしょうか?」
「クーデター政権でも、国際承認が行われれば合法政権だ。ニヤ政権が国際社会を敵に廻すつもりがなければ、各国はこれを承認せざるを得ない。連邦化も、シラリア側は一応まともな手続きを取っている。シラリアがエネンガルを飲み込むのは違法と言えるが、シラリアがエネンガルに吸収合併を願い出る、という形だから、国際法上は問題ないよ。表向きはね」
デニスが、答えた。
「なんだか納得がいかないのですが! 不正義がまかり通っているように見えます!」
シオは正直に感想を述べた。
「国際法の基本は、平和の維持だ。正義の戦争よりも、まやかしの平和の方が尊ばれるのが、国際社会だ。正義と平和は、両立するのが難しい概念だからな。正義を貫くには、対立を避けることが不可能だ。平和には繋がらない」
デニスが、皮肉な笑みを浮かべる。
「せやなあ。でも、クーデターの只中にいるとは、今だに信じられんわ。マスターの友達で、タイで新婚旅行中にクーデターに巻き込まれたカップルがいるんやけど、そのせいで成田離婚になったそうやし」
雛菊が、珍しく不安げに言う。
「まあ、ホテルの中にいれば大抵は安全だ。嵐みたいなものだよ。待っていれば、そのうち収まる」
宥めるように、デニスが言う。
「以前にも、経験していらっしゃるのですか?」
スカディが、訊いた。
「四回目、かな。大きな声じゃ言えないが、うち一回はわたしが煽動した」
にやにやしながら、デニスが言う。
「さすがにSIS! えげつないのです!」
シオは囃すように言った。
「で、今回のクーデター、成功するのかい?」
亞唯が、訊く。途端に、デニスが難しい顔になった。
「最初は失敗すると思っていたが、エネンガル陸軍の動きが鈍すぎる。どうやら、ロデ大統領の身柄をクーデター勢力が押さえたせいで、動けなくなっているらしいな。彼の身が危険に晒されるくらいなら、ニヤに政権をくれてやった方がいい、と陸軍は考えているようだ。ロデは長期安定政権を維持できたほどの人物だからな。半ば神格化されているといっても、過言じゃない」
「実質的には人質、というわけですわねぇ~」
コーヒーをカップに注ぎ分けながら、ベルが言った。デニスが、うなずく。
「いまのところ、ニヤは穏健路線を取るつもりらしい。バックはともかくニヤ自体はまともな政治家だ。陸軍としても、無理に抵抗して内戦状態に陥るのは国益に反する、という判断だろう。今のところ、交戦のニュースも入っていないのだろう? ひょっとすると、このまま無血状態で政権移譲が為されるかもしれない」
「イギリスとアメリカはどう動くのでありますか?」
シオは訊いた。
「積極干渉は難しいだろうな。サリンの問題でエサマを揺さぶってみても、シラリアという国家が無くなってしまった状態では効果は薄い。エサマとドランボがより強い権力を握るのは歓迎しないが、静観せざるを得ないね」
諦め顔で、デニスが言う。
「なんだか、今回の任務がすべて水の泡になってしまったようで、悔しいですわね」
スカディが、言う。
「同感だね」
デニスが言って、肩をすくめた。
第二十二話をお届けします。




