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突撃!! AHOの子ロボ分隊!  作者: 高階 桂
Mission 05 中国軍用ロボット技術情報回収せよ!
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第六話

 【お詫びと訂正】 南昌市にあります国家森林公園は『梅峰』ではなく、『梅嶺』と表記することが正しい、と判明いたしましたので、お詫びするとともに訂正させていただきます。

「ご無沙汰しております、フェン上校」

 アリシア・ウー中校が、ぺこりとお辞儀する。

「何のご用ですかな、中校」

 むっつりとした表情で、フェンは人民解放軍総参謀部第二部の女性を迎え入れた。

 狭い部屋であった。南昌市に駐留する武警部隊の指揮所の一部屋を、間借りしているのだ。つい先日までは、一番広い会議室を借りていたのだが、事実上の作戦失敗を受けて、慇懃に『移動のお願い』をされ、ここに押し込められてしまったのである。

「失礼ですが、顔色が良くないようですわね」

 嫌味にならない程度に微笑みつつ、アリシアが言う。

「ちょっと、体調が優れませんのでね」

 フェン上校は、正直に言った。心労からきた高血圧と胃痛が、フェンの身体を蝕んでいたのだ。

 アメリカのスパイロボットが隠したと思われるデータカセットの回収作戦。これは、完全に失敗に終わっていた。二日前に、梅嶺国家森林公園内で捜索を行っていた人民武装警察の一隊が、いったん掘り返された地面を埋め戻したと思われる跡を発見したのだ。まだ柔らかい土を掘ってみたところ、地表より三メートルほどの位置まで掘り返されていたことが判明した。さらに詳しく調べた結果、土に人工的な何かを押し付けたような跡が発見され、それがデータカセットの外形と完全に一致することが判明した。……何者かが、そこにデータカセットを埋設し、誰かがそれを掘り出したのだ。

 そして昨日、武警総隊から、アメリカ側がデータカセットを回収した模様、という連絡が届いた。出所は定かではないが、おそらくは人民解放軍総参謀部か国家安全部がそのような情報を入手したのであろう。

 完敗である。

 上官は、当然失敗の全責任をフェン上校に押し付けてくるだろう。これで、退役まで冷や飯を食らうことになるのは確実である。……血圧が上がり、胃が痛くなるのは当然だ。

 とりあえず上官からは、作戦終了と後始末の指揮を任されている。フェン上校は、漢方薬を服用して血圧と胃を宥めながら、大量の雑務をこなしている最中であった。

「で、何のご用ですかな」

 フェン上校は、不機嫌な表情のまま再度訊いた。どうせ、出世の道は断たれてしまったのだ。ここで、軍情報部のエリートに嫌われても、後の人生にたいした影響はあるまい。

「実は、南昌国際展覧センターで近く行われるロボット展示会で、ZTが何かを企んでいる、という情報がありまして」

「ZTですか」

 アリシアの言葉に、フェンは意外そうな表情で応じた。

 自由天使……ジーヨウティエンシー……略称ZTズィーティー。外国においては、英語名Freedom AngelからFAとも略されることもある組織は、現代中国における非合法反政府組織のひとつである。

 中国における反政府・反共産党活動は、活発ではない。これは、中国共産党による徹底した厳罰主義と、厳しい情報統制、そして優れた情報操作によるものだ。

 特に、情報操作と国民世論の誘導に関しては、中国共産党は極めて優秀であるといえる。共産党はその揺籃期から常に『外』に敵を作り、左翼ナショナリズムを煽り立て、国民を誘導してきた。国民党と日本。アメリカ。ソビエト。インド。ベトナム。再び日本。そして、またもやアメリカ。

 もうひとつ優秀と言えるのが、常に『内』にも敵を作り、それを攻撃することで共産党を『正義』の側に立たせて来た、という点である。手っ取り早く友人を作る方法として、『共通の敵』を設定する、というやり方がある。友人としたい人物が最も嫌っている相手を調べ、『俺もあいつは大嫌いだ』と公言するのである。つまりは、『敵』の『敵』は『味方』の状況を作るわけだ。共闘の姿勢を見せれば、友人となれることは間違いない。

 国家運営にも、これは応用できる。そして中国人は、それが極めて巧みである。歴代王朝も、適宜国内あるいは辺境に敵を作り、これを叩いて大衆の支持を得ていた。中国共産党も、この手法を踏襲している。資本家、地主、富農、反革命主義者、知識人、儒家、修正主義者、右派分子……。そして最近では、汚職役人や宗教家、少数民族の活動家などが槍玉に挙げられ、見せしめ同然の粛清の対象となっている。このような国家を挙げての『擬似闘争』キャンペーンにどっぷりと浸かり、常に『正義の戦い』を行っているからこそ、中国人民は共産党の一党独裁体制という『異常』に違和感を覚えつつも、これを受け入れているのである。

 そんな中で勢力を秘かに伸ばしてきたZTは、憂国の団体でもあった。巨大化した共産中国が、その体制ゆえに世界各国と共存するのは無理である。民主化以外に、生き延びる術はない、と考える一部知識人に共感した若者が中心として立ち上げられた団体だと、世間一般では信じられている。

 いまや経済大国となった中国だが、更なる発展のためには致命的な欠陥を抱えている。『エネルギー』の不足である。

 工業化が進み、国民の生活水準が向上したとはいえ、中国の国民一人当たりのエネルギー消費量は先進諸国よりもはるかに少なく、日本の約二分の一、アメリカの四分の一程度に過ぎない。にもかかわらず、中国はエネルギー資源の自給ができておらず、大量の原油をサウジアラビア、アンゴラ、ロシア、イランなどから輸入しているのが現状だ。そしてその量はアメリカを抜いて世界一位となっている。……一応、産油国であるにもかかわらず。石炭に関しても、中国は世界一の産炭量を誇っているものの、同時に世界最大の輸入国でもある。かつてのソビエト連邦が、エネルギーに関してはほぼ自給体制にあり、その他の鉱物資源等に関してもかなりの割合が自給できていた、または同盟国からの輸入で賄えていたことを思い起こせば、中華人民共和国の大国としての『脆弱性』は一目瞭然である。

 中国政府は、石炭のさらなる増産、原子力発電所の増設などに努めてはいるものの、凄まじい速度で拡大する経済の前には焼け石に水状態であり、石油・天然ガス類の輸入量は毎年増大し続けている。幸い今のところ、原油価格は安定しているし、それを買い付けるカネにも不自由していない。

 だがしかし、地球が生み出せる化石燃料には、限りがある。

 もし仮に、中国の全国民がアメリカ合衆国の国民と同程度のエネルギーを消費すると仮定すると、なんと全世界が生産するエネルギー資源のすべてをアメリカと二カ国で分け合っても、まだ足りないという試算となる。中国が日本と同レベルの省エネ技術を普及させ、その一人当たりエネルギー消費量を日本と同程度に抑えることに成功したとしても、全世界が生み出す資源エネルギーの過半を一国で独占することになる。……人類の五分の一を占める中国が、エネルギーの半分を『奪う』形となるのである。もちろん、今後大幅に経済発展を遂げるであろう国家……インド、ブラジル、メキシコなどのエネルギー消費が増大するのは確実視されている。アジア・アフリカ諸国も、豊かになればそれだけエネルギー消費は増える。

 結論として、中国が名実ともに先進国の仲間入りをするには、何らかの方法で資源エネルギーの大量安定供給を図るしかないのは、明白である。そしてその手段は、三通りしかない。世界経済の秩序破壊を承知で買い漁るか、武力行使を含む政治力で強引に奪い取るか、アメリカ合衆国や西欧諸国、日本、インドなどの大口消費国を没落させ、エネルギー供給に余裕を持たせるか……。

 どれを選択しても、第三次世界大戦は避けられないだろう。

 現状で、中国の友人は多くはない。それに引き換え周辺国家は敵ばかりである。アメリカ合衆国を筆頭に、日本、インド、ベトナムを始めとする東南アジア諸国、オーストラリア……。これもみな、強引な外交姿勢と軍備拡張、そして共産党独裁を正当化するための『外敵』維持プロパガンダの賜物である。上海協力機構の設立、アジアインフラ投資銀行の運用開始などを通じて、中国は信頼できる友好国家を増やそうと努めており、中央アジア諸国や韓国の取り込みに成功しつつあるが、現状で他国と戦端を開くようなことになれば、アメリカを中核とした連合国の前に敗北するのは必至である。核兵器に頼れば、敗北は免れるだろうが、その後の東アジア情勢を考慮すれば、まだ素直にアメリカに負けたほうが賢い選択だ、と言えるだろう。中国が一回でも本気で核兵器の使用を仄めかせば、周辺諸国は自衛のための核武装を選択せざるを得なくなるからである。日本、韓国、ベトナム、さらにはフィリピンまでもが核兵器を保有する未来の東アジア……。中国にとっては、悪夢でしかない。通常戦力だけであれば、指先で捻り潰せるほどの弱小国家フィリピンが、北京まで届く核ミサイルを保有すれば、大国中国を跪かせることも可能になるのだ。東アジアにおける核の水平拡散は、中国の政治力と軍事力の相対的地位を急速に低めることになる。つまりは、建国以来営々と築き上げてきた『大国』としての立場を、一瞬で失うことになるのだ。中国にとって、核兵器は文字通りの最終兵器であり、使用はもちろん核恫喝さえ『自滅覚悟』で行わなければならぬ諸刃の剣だ。共産党存続の危機にならぬ限り、持ち出すことはできないだろう。

 ZTは、中国が平和裏に先進国入りするには、共産党政権を倒して民主化し、拡大指向を放棄してアメリカや日本との協調路線を選択する以外にない、と主張していた。軍縮を行い、先進国から省エネルギー技術や再生可能エネルギー技術を大幅に取り入れれば、資源エネルギーの消費も抑えることができる。国民生活のレベルも、台湾程度の『準先進国』レベルに抑えれば、一人当たりのエネルギー消費も少なくて済む。将来的に新たなエネルギーの安定供給が確立されれば、本当の意味での先進国になれるであろう。

 もちろん、中国共産党は政権を『帝国主義者の走狗ども』に明け渡すつもりなどなく、ZTに関しても厳しい姿勢で臨んでいた。だが、ZTは狡猾であった。徹底した細胞構造を維持し、連絡にはインターネットしか使わず、検閲に引っ掛からないように巧妙な手段……頻繁に変更される暗号や隠語などが多用された……を用いており、時折政府や軍のコンピューターに対しクラッキングを仕掛けてくる。また最近では、政府施設や産業施設に対する放火などの破壊工作も行うようになった。

 そのZTが、この南昌で何らかの行動を起こす、とアリシアは言っているのだ。

「しかし……あれは単なるロボットの展示会でしょう。ZTが贔屓にしている日本や西欧諸国のメーカーも出展している。これに、破壊工作を行うのですか?」

 フェン上校は訝りながら訊いた。

「標的は、会場そのものではなく、視察に訪れる党関係者や人民解放軍関係者でしょうね。外国のメディアも注目していますから、そこでトラブルを起こすことが目的化と。ですが、第二部としては、ZTが大きな問題を起こすとは予測していません。たぶん、国際展覧センターのホームページを改竄する程度でしょう」

「それなのに、わざわざ南昌まで出てきたのですか?」

 フェン上校は、アリシアの答えに内心で首をかしげた。軍情報部のエリートが、暇を持て余しているわけでもあるまいに。

「実は、ZT対策というのは偽装です。上校。アメリカ側が、例のデータカセットを回収した、という情報はもうご存知でしょうが……あれは、まず確実にCIAの謀略だ、と第二部は分析しています」

「なんと」

 フェン上校は、驚きに眼を見開いた。

「詳しくはお話できませんし、実はわたしも知らないのですが、総参謀部第二部はいまだCIAがデータカセット回収作戦を続行中である、という情報を得ています。これは、回収を果たしたという情報と矛盾しています。双方の情報の信頼度、さらに付随する細かい情報を分析する限りにおいては、回収は偽装であり、こちらの警戒態勢を緩めるための罠、と判断せざるを得ません」

「まずいですな。武警部隊は、引き上げを開始している。もうすでに、半数以上が南昌を離れてしまいましたぞ」

「撤収はそのまま続けてください。今回のわたしの任務は、データカセット回収に現れるアメリカのスパイの捕縛です。偽装工作が成功し、警戒が緩んだと思わせれば、敵も油断するでしょう。回収に人間が現れるか、ロボットが現れるかは、定かではありませんが」

「兵力が、足りますかな?」

 懐疑的な表情で、フェン上校は言った。

「人民解放軍部隊を使えるように、手配してあります。ですが……」

 アリシアが言葉を切り、やや婀娜あだっぽいしぐさでフェンを見上げる。

「もしよろしければ、武装警察の方にも手を貸していただきたいのです。よろしいでしょうか」

「もちろん、最大限の協力は惜しみませんよ」

 フェンは勢い込んで言った。主導を第二部に握られるのは悔しいが、アメリカのスパイ逮捕に手を貸せば、一連の失態は帳消しにできるだろう。これは汚名返上のチャンスである。

「ありがとうございます。では準備がありますので、これで失礼します。詳しいことは、後ほど文書にしてお届けします。では」

 アリシアが一礼し、部屋を出てゆく。

 フェンはさっそく電話の受話器を取り上げ、メモを見ながらキーを押した。関係各所に連絡し、第二部への協力体制を早急に作り上げねばならない。

 胃の痛みはきれいさっぱりと消え去っていた。




 四時間半のフライトを終え、アプリコット航空のボーイング767‐300Fは南昌市街地北郊の南昌昌北国際空港に着陸した。

 空港には、先乗りしていたアサカ電子のスタッフが、商務部機械・電子製品新出口司の役人や市当局の係官、南昌国際展覧センターの職員らと共に待ち受けていた。貨物機エリアに回された767から、すぐに貨物搬出が始まる。シオたちは、有本はるかの指示で搬出作業を手伝った。……すでに、ビジネスは始まっているのである。アサカ電子製ロボットの優秀さと汎用性を、中国人に見せ付けるのも、コンパニオン・ロボットとしてのお仕事なのだ。

 いったん貨物エリアの倉庫に運ばれた貨物は、その五分の一ほどがレンタルしたトラックに積み替えられた。とりあえずそれだけを会場に運び入れ、残る五分の四は郊外に借りた安いレンタル倉庫に順次運び入れる手筈である。すべてを一度に会場に運び込んでも、身動きが取れなくなるだけである。展示準備の進み具合を見計らって、ちまちまと運び込んだ方が都合がいい。

 シオたちも、第一陣のトラックのあとを追うように、タクシーに分乗して南昌国際展覧センターを目指した。高速道路の左右に見えていた、ところどころに大きな集落のあるのんびりとした田園風景はすぐに消え去り、左手に市街地や工場群、団地などが現れる。右側には、鬱蒼とした木々に覆われた山々が見え出した。

『あれが、問題の梅嶺国家森林公園ね』

 同乗している有本はるかに聞こえないように、スカディが赤外線通信で言う。

『緑が多い街なのです!』

 きょろきょろと窓外を見渡しながら、シオはそう言った。公園なのか、濃い緑色の木々が生い茂る緑地が、あちこちに見られる。三百万都市とはいえ、中国では『田舎』に分類される省の省都である。北京や上海よりは、環境は良さそうだ。緯度的には奄美大島と同じくらいなので、景観はやや南国チックだ。

 タクシーが高速を降り、大通りに入る。道幅は羨ましいほどに広かったが、交通量も多く、さらにその上交通マナーは最低レベルであった。すべての車が、高速道路並みの速度でびゅんびゅんと飛ばしている。急な進路変更や割り込み運転などは、ごく当たり前のことらしい。タクシーの運転手も、涼しい顔で曲芸じみた運転を楽々とこなしている。

 シオは横目で有本はるかの様子を窺った。怖がっているかと思われた臨時の上司は、意外なことに平然としていた。意外に肝は太いのか、それとも単に鈍感なだけなのだろうか。

 ようやく、タクシーが南昌国際展覧センター前に到着した。ゲート前で警備していた武警隊員に、有本はるかが空港で南昌市当局者から渡されたパスを提示し、通過許可を得る。タクシーは、駐車場内へと乗り入れた。有本はるかと、二台目に乗っていた越川一尉が料金を払っているあいだに、AHOの子たちはそれぞれタクシーを降りた。

「観覧車なのですぅ~」

 ベルが、北の方を指差す。近くに遊園地でもあるのか、巨大な観覧車が回っているのが見える。

「むっちゃでかいでー。天保山のやつよりも、一回りくらいでかいでー」

 雛菊が、呆れたように言う。

 一同は、展覧センター職員の案内で展示場内に入った。AHOの子たちは、それぞれ手分けして警備状況などを記録しつつ、歩んでいった。

 天井の高い展示場内には、広々としたアサカ電子用の展示スペースが確保されていた。いくつかの仮設ブースが設けられ、大型のプラズマディスプレイや展示大などがすでにセットされている。しかしまだ準備段階なので、そこら中に各種ケーブルがのた打ち回り、大小の段ボール箱やプラスチック容器が無造作に放置され、床には養生用のシートや目印用のビニールテープなどが張られたままだ。……さながら内装工事中のビルの中のようである。

「お隣は、キョンギ重工だね」

 左隣の展示スペースを見て、亞唯が言う。

 韓国最大のロボットメーカーとして知られ、トゥエンティ・ファクトリーズの一員でもあるGHI(キョンギ・ヘビー・インダストリーズ)である。アサカ電子よりは準備の進み具合が早いようで、すでに一部のブースではパンフレット類の搬入なども行われているようだ。中央には、先ごろ韓国陸軍での制式採用が発表された新型ミディアム・アーマード・ロボットが、これ見よがしに鎮座している。

「『ジェビ』ですねぇ~。中国に、輸出でも狙っているのでしょうかぁ~」

 ベルが、首を傾げる。

「できるわけありませんわ。国産を謳っていますけれど、中身は半分くらいMRTの技術でしょう。アメリカ政府が、許可するわけありませんわ」

 スカディが、鼻で笑う。アメリカのMRT……ミリタリー・ロボット・テクノロジーズが、キョンギ重工に技術支援を行っているのは、広く知られている。

「反対側は、ファルケルですね!」

 逆サイドを眺めながら、シオは言った。FDEの略称で知られる、ファルケル・ディフェンス・エレクトロニクスは、スイスのバーゼルに本社を置く、主にドイツ資本による多国籍防衛関連企業である。もちろんロボットにも強く、ヨーロッパ各国ならびに世界各国に主に軍用ロボットを輸出している。

「アメリカ勢がいないせいで、ちょっと寂しいけど、それでもこれだけ揃うと壮観だね」

 辺りを見回しながら、亞唯が言う。日本からも、アサカ電子のライバルでもあるチノハマ重工や、据え置き型産業用ロボットで世界的に有名な安川電機、ファナックなどが出展している。

「ではみなさん、着替えてくださいな。そのうえで、搬入のお手伝いをお願いします」

 ぱんぱんと手を打ち鳴らしながら、有本はるかが指示を出す。

「もう少し何とかならなかったものかしらね。例えば、アサカのロゴ入り法被とか、着物姿とか」

 ぶつぶつと言いながら、スカディがバッグから例のチアガール衣装もどきを引っ張り出す。

「あまり日本風を全面に押し出しても、中国人は喜ばんからなぁ。難しいで、中国人相手のビジネスは」

 雛菊が、苦笑する。


 第六話をお届けします。

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