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『第8話:0(ゼロ)と1の境界線』

第7話、兄弟対決への熱い反応ありがとうございます!

「……兄上。貴様の目は、俺が『死を恐れない』という変数を……見落としているぞ」

最強の「目」を持つ兄・皇を前に、孤独王は自らの肉体を壊しながら戦うという禁じ手に打って出ます。

そして、絶体絶命の瞬間、零の「完全記憶」が兄の隠された「弱点」を見抜き――。

物語は、逃亡劇から「反撃」の第2章へ。

二人の絆が、ついに最強の兄を動揺させる第8話。

どうぞ、その目でお確かめください。

【本編】

「……カハッ、……ガッ……!」

 肺からせり上がる血の塊を吐き捨て、俺は兄の剣を掴んだまま立ち尽くしていた。

 兄・こうの『神の目』が、驚愕に細められる。

「……計算外だな。手の肉が削げ、指の骨が砕ける痛み。それらすべての電気信号を、脳が無視しているというのか?」

「……無視、ではない。……優先順位を、最下位に……設定しただけだ」

 俺の脳内では、未だかつてない速度で「死の演算」が続いていた。

 兄の目は、筋肉の弛緩や視線の動きから未来を予測する。ならば、俺の脳が反射や本能さえも演算で制御し、わざと「ありえない動き」を肉体に強要すれば、その予測はバグを起こす。

 だが、その代償は俺の肉体の崩壊だ。

 視界が明滅し、脳細胞が熱で死滅していく音が聞こえる。

「おじさん、もうやめて! 死んじゃう……おじさんが死んじゃったら、私……!」

 ぜろの悲鳴が、ノイズだらけの俺の意識を繋ぎ止める。

 零は、兄の瞳を見つめたまま、涙を流して叫んだ。

「……見える。見えるよ、おじさん! その人の目……瞬きする直前、ほんの少しだけ、左の瞳孔が揺れる。……お母さんが、私を捨てた時と同じ……『迷い』の形をしてる!」

「……何だと?」

 皇の眉がピクリと跳ねた。

 零の『完全記憶』。それは過去を記録するだけではない。一度見た人間の微細な癖、感情の揺れを、データベースとして照合し、正解を導き出す「真理の鏡」でもあった。

「……迷い、か。なるほどな、兄上」

 俺は口元を歪め、血に濡れた笑みを浮かべた。

 皇。完璧な処刑人であるはずの兄。だが、彼は俺を「失敗作」と呼びながらも、致命傷を避けていた。無意識か、あるいは――。

「……その『迷い』の0.01秒。俺には、それで十分だ!」

 俺は掴んでいた剣を自らの体にさらに深く引き込み、兄の懐へ踏み込んだ。

 予測不能の自己犠牲。兄の『神の目』が、初めて俺の影を見失う。

 俺の拳が、兄の端正な顔面へ直撃した。

 衝撃波が納屋の空気を震わせ、最強の兄が初めて地面に膝をつく。

「……ぐ、おぉ……ッ!」

「零、走れ! ……立ち止まるな!」

 俺は動揺する兄を置き去りにし、零の細い手を掴んで、夜の闇へと駆け出した。

 後ろを振り返る余裕はない。背後から感じる兄の殺気は、先ほどよりも鋭く膨れ上がっていた。

「……追ってくる確率は、100%。だが……勝機が……0%ではなくなった」

 走りながら、俺は零の手を強く握る。

 零もまた、泣きながら俺の手を握り返した。

 俺の脳には、新しい数式が書き込まれていた。

 それは、世界を滅ぼすための方程式ではなく――二人で生き残るための、あまりに不確実で、愛おしい計算式だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

最強の兄・皇に一矢報いた第8話。

孤独王の無謀な演算と、零の鋭い洞察。

二人が合わさることで、初めて「最強」に対抗できる力が生まれました。

「迷い」を指摘された皇。彼は再び、冷酷な処刑人として戻ってくるのか。

それとも、兄弟の血に隠された別の「真実」があるのか。

次回、第9話。

逃亡の果てに、二人は孤独王の「原点」へと辿り着きます。

「……第9話:鋼の檻、逃亡の果て」

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