『第7話:神の頭脳、悪魔の証明』
第6話、温かい応援をありがとうございました。
「……計算するまでもない。あの男が、動いた」
休息の時は、終わりを告げました。
孤独王の前に立ちはだかるのは、かつて彼が一度も勝てなかった壁。
すべてを見通す「最強の目」を持つ、腹違いの兄・皇の影。
孤独王が「計算」するより先に、その男の「瞳」はすべてを予読し、未来を確定させる。
絶望的な実力差を前に、孤独王と零はどう立ち向かうのか。
因縁の幕が開く第7話、どうぞお楽しみください。
深い眠りから覚めた俺の脳は、冷徹なまでの冴えを取り戻していた。
だが、隣で俺の手を握ったまま眠る零の体温を感じた瞬間、脳内の計算式がわずかに熱を帯びる。
「……起きろ、零。計算外の客だ」
俺の声に、零が跳ねるように目を覚ます。
納屋の薄暗い隙間から差し込む光。その光を遮るように、一人の男が立っていた。
漆黒の軍服。そして、こちらを射抜くような、異常なまでに透き通った瞳。
俺の心臓が、忌まわしい記憶と共に激しく脈打つ。
「……兄上。いや、今は国の『処刑執行人』だったか」
「久しぶりだな、失敗作の弟よ。相変わらず泥を啜って生きているのか」
男――俺の腹違いの兄、**皇は、冷ややかに笑った。
彼は生まれながらにして、筋肉の微細な動きから「次の一手」を完全に見通す『神の目』**を持っていた。
「そのガキが、噂の完全記憶か。ゴミがゴミを連れて歩くとは、面白い計算違いだな」
「零をゴミと呼ぶな。その言葉を取り消す確率は、今この瞬間から0%になる」
俺は零を背後に隠し、構える。
脳内で数万通りの攻撃パターンを演算する。だが、そのすべてに「失敗」の赤文字が刻まれる。
俺が動こうとする「予備動作」を、兄の瞳はすべて読み切ってしまうからだ。
「無駄だ。お前の脳が電気信号を発した瞬間、俺の目にはお前の『未来』が映っている」
皇が指を鳴らした瞬間、俺の肩を不可視の衝撃が貫いた。銃声すら聞こえない超高速の抜刀。
「ッ……ぐ、あ……!」
「おじさん!」
崩れ落ちる俺を見て、零が叫び、皇の前に立ちはだかった。
「……やめて! おじさんを、いじめないで!」
「ほう。壊れた人形が、意志を持ったか。不快だな」
皇が零に向けて、冷酷に剣を振り上げる。
俺の脳が、絶望的な予測を弾き出す。間に合わない。
「やめろ……やめろぉぉぉッ!!」
その時、俺の視界が真っ赤に染まった。
脳内の演算領域が限界を超えて拡張していく。
兄の「目」が未来を読み切るなら、俺はその未来さえも「計算」で上書きするしかない。
「零に……触れるなぁぁッ!!」
俺は血を吐きながら立ち上がり、兄の剣を素手で掴んだ。
掌から血が溢れる。
「……なんだと? 俺の軌道を見切ったというのか?」
「……兄上。貴様の目は、俺が『死を恐れない』という変数を……見落としているぞ」
俺の瞳に、激しい計算式の奔流が宿る。最強の目を持つ兄と、最凶の脳を持つ弟。
地獄のチェスが、今始まった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ついに現れた最終ボス、兄・皇。
「計算」VS「洞察」。全く異なる最強の才能がぶつかり合う、絶望的な戦いの幕開けです。
傷つきながらも零を守ろうとする孤独王。その姿を見て、零の中にある「何か」も目覚めようとしています。
次回、第8話。二人の絆が、ついに最強の兄を動揺させます。
「……第8話:0(ゼロ)と1の境界線」
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改めて、この第7話の内容でよろしいでしょうか?




