【短編】新年早々!?今年空真が一番長い日~謎の金曜会~
こちら私のエッセイとの連動企画。
理系ロジックだけでコメディ短編は書けるのか!?
で書いてみました。
年始の資料管理室は、資料整理のシーズンだ。
他部署が落ち着いて、部署間の資料も減る。
だから俺たちは、やっと“本来の業務”に戻れる。
俺(空真)は年明けから、資料倉庫の整理に明け暮れていた。
倉庫は資料管理室の隣――
扉一枚でつながった、ミニ図書館みたいな場所だ。
整理して、片づけて。
ゆっくりと流れる穏やかな時間。
気が緩むほどの静けさ。
気づけば、俺はいつの間にか昼寝していた。
どれくらい時間がたっただろう。
ガチャ、扉一枚向こうのドアが開く。
俺は、目をこすりながら意識を戻す。
正月早々、俺の「今年いちばん長い一日」が始まる――
そのことをまだ俺は知らない。
ガチャ、隣の部屋のドアが開く。
見えない声色から白木先輩と有村が
賑やかに元気に話している。
有村が
「いや~年明けちゃいましたね」
「あっという間だったね!」
「先輩年末年始何していました?」
「結局設定資料とかの参考文献のチェック。
宗教とか、悪魔とか、中世民話とか、まとまった時間ないと
勉強できないんだよね」
「あ~分かります。
私も、年末大学の同級生からめっちゃ
誘われていましたけど、
ガン無視かまして
結局ずっと絵、描いていましたよ。
あけおめLINEうざいですよね~!」
扉の向こう側の俺は思う。
有村無自覚に、白木先輩あおってる。
有村先輩は
「それ分かる。ウザいよね。」
「先輩はめちゃくちゃ男受け
良さそうじゃないですか?
でも、男のにおい“全く”感じないっすね。」
「そんな“子供”ぽいの
もう卒業しちゃったかな。」
俺は、感じる。
有村、白木先輩の負けず嫌いに
無自覚に
踏んでる!踏んでる!そこ地雷!
「わかる!なんか男って
ガキっぽい。私も、なんか
乃木坂よりAKBっぽいとか、
結構失礼なこと言われて、
ムカついたりしてますよ。
おまえら、誰様相手に
言っているんだっつて。
ウチら可愛いの、もはや常識だって。
テスト出るから。
でも、なんか白木先輩って
AKBより乃木坂って感じですよね。
男受けMAXって感じ。うらやまし~」
おいおい。
有村何処まで天然なんだよ。
それとも本気であおってるのか?
「乃木坂って言われないかな。
浜辺美波とか清原果耶って言われることおおいかな。
最近だとえっと~、福原遥って。
人と比べるのデリカシーないの
分かってない、男子おおいよね。
有村さんの気持ち分かる~。」
懸念が確信に変わった。
白木先輩、完全に戦闘モードだ。
有村、気付け!気付け!
「白木先輩、福原遥って言われるんすっか?
それ、ちょっとガキっぽいですよね。え~わかんない~。
だって白木先輩大人女子だもん。」
これ、天然じゃない。
AKBくらいから、有村も戦闘モードだったんだ。
これ、外にでられん。
どんな顔して出て行けば分からん。
いわば扉の向こう側に、
前門の虎と狼が激しく笑顔で
ガチバトルしてる。
出るの無理、無理!
その時、事件が発生した。
俺の、こ......後門に悪魔が忍び寄る。
トイレに行きたい......
やり場のない苦しみ。
俺は冷静に原因を推測する。
あれだ!
それは大晦日。
有村がおせち作りすぎたって、
珍しく、俺んちに
芋きんとんと、鶏の甘露煮を持ってきた。
その時はかわいいとこあるじゃんって
有村のこと思った。
でも、その鶏の甘露煮は
やけに酸っぱかった。
腐った甘露煮に、芋きんとんの炭水化物が
ブーストをかけ、俺の悪玉腸内フローラを
咲き誇らせたに違いない。
悪魔のような花畑。
冷静な分析の向こう側、
二人のバトルは加速する。
「そういえば。聞いたわよ。
有村さん、おせち、作って
空真君にプレゼントしたって。
すごいな~。私料理全然だもん。
しばらく家では料理作ってないかな。
いいお嫁さんになるね。
私、全力で二人のこと応援しちゃえる。」
「あれは、クウマに
残飯処理させただけっすから。
クウマと私とじゃ、
全国の私ファンが黙ってないでしょ!」
扉の向こう側でも分かる有村の鼻息。
俺はその残飯処理のおかげで
俺は今黒い花畑に襲われてるのに...
「話は変わりますけど、
白木先輩だって、金曜会後の午後、
マスク、二重につけてますよね。」
「あら、それは有村さんもよね?」
「いや、ぜんぜん違う。
私は、いろんな人と打ち合わせがある。
いわばエチケット!
でも白木先輩は、基本、空真君と
ふたりっきりじゃないっすか。
私ならば空真君とならば、
金曜会のあとも、
マスクなんてつけないっすよ。
白木先輩こそ、あいつのこと、
意識してるんじゃ、ないっすか?
やっぱり、二人っきりなら
ほっとけなくなっちゃう系?
意識しちゃう系?」
金曜会?最近金曜日の午後、
たしかに・・・マスクつけている。
謎のワードがいっぱい飛び交う。
混乱――!
「それに、白木先輩アレおいしいからって、
あんまりがんばらない方が
いいんじゃないっすか?
私も、就職してから、基礎代謝落ちちゃって。
まだ“新人”なんすけどね。」
「それは......野菜も食べているから、
プラマイゼロなんだよ。
それに、ジムの先生も、
チートデーは大切だっていってたもん。
ところで、有村さんも鍛えた方がよろしいのでは?
基礎代謝、落ちたって言ってたでしょ?
この業界、油断するとすぐに女子力下がっちゃうから。」
有村がぼそっと、
「……まっ、そっすね。」
一拍。
空気が、ほんの少しだけ戻った。
なんか、よくわからん。
ただ、いろいろ襲ってくる。
確かにいえることは、
この扉あけらんねぇ。
「でも、所詮クウマっすもんね。
ウチらの相手じゃないっすもん」
「それ。わかる~有村さん。
なんかごめんね。」
部屋中が笑顔に包まれる。
俺は扉の向こうで冷や汗が止まらない。
少しふるえているかもしれない。
「ところで、有村さん。
駅前に新しく、フルーツタルトの
店出来たの知ってる?」
「あ!それかなり気になっていました。」
「甘いものは完全に別腹だもんね。」
「それな。白木先輩は完全小悪魔っすね。」
それから、30分。
オチのない共感だけで作られた
お菓子の話。なぜ、めちゃくちゃ盛り上がる。まるで“あっち”は春のようなポカポカな空気。
扉の向こう側、完全にタイミングを逸した俺にとっては虚無と苦しみ。
俺の正月早々、“今年いちばん長い一日”は、まだ始まったばかりだ!
実験は成功しましたか?
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