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車が上下に揺れ、後ろの荷物がぶつかり合う音がする。崩れないようにはしてあるけれど、これ以上大きく揺れたら心許ない。段差や石はなるべく避けて進んでいく。
揺れで驚いたホノカちゃんが小さく叫び声をあげ、後ろを振り向いた。
「……この道ってこんなに揺れましたっけ?」
「いや、ここまで割れたり崩れてなかったような気がする。地震のせいかな」
「ああ……ありましたね」
彼女は窓の外を眺めながら呟く。1週間前に少し大きめの地震があった。元々地震の多い地域だとは聞いていたが、あの大きさの揺れはこっちに来て初めて経験した。ホノカちゃん曰く、これくらいなら大丈夫で、もっと大きい縦揺れだと崖崩れや倒木だったりの被害が出ると言われた。
「こっちの方が揺れたんですかね……」
「そうかも。図書館の本落ちてそう」
「中央階段のは落ちてそうですねえ。棚のはギチギチだから大丈夫そうですけど」
私たちは例の図書館へあれから定期的に通っている。蔵書も豊富だし、綺麗だし、何より安全が確認されている。もちろん毎回警戒は怠らないけれど、心理的負担がかなり少ない。
もうすぐインフラが断たれて1年近く経つ。生存者もいたとしてもかなり絞られているだろう。ましてや、こんな地方へ来るはずもないのだが、万が一を考えると新しい場所へ行くのは心理的なハードルが高い。
東京方面はどうなっているんだろう。関東にもまだ生存者がいるのだろうか。自分が記憶している限り、私が日本へ出発した時点で海外の主要な都市はほぼ壊滅的だった。例に漏れず東京も壊滅しているかもしれない。生き残りがいる可能性は低そうだ。
気になるけれど、情報源は無い。自分たちで行って確かめるしかない。でも確かめる必要性も特に今感じていないので、行動を起こそうという気にもならなかった。いつか確認しに行ければいい。
「……バリケードも片付けたやつ崩れちゃってますね」
「あーほんとだ。……?」
最初に来た時に除けたはずのガラクタが下に散らばっていた。でも奇跡的にそうなったのか、車が通る部分には落ちていなかった。あるいは、誰かが片付けたのか。
……奇跡的なわけがない。こんな風に私はガラクタを積んだ記憶はない。ハンドルを握る手に力が入った。
「……誰か来たかな」
「え?そうなんですか?何で?」
「これ、地震後に車通れるように誰か片付けたんじゃない?こんな片付け方した記憶ない」
「……本当だ。気づかなかった。レイさんさすがですね」
ホノカちゃんの、のんびりとした返事が聞こえてきて少し肩の力が抜ける。でも警戒を怠ってはいけない。
「気をつけて。誰かいるかも。ホノカちゃんの方が目がいいし、周り見てて欲しい」
「分かりました」
人目のつかない死角に車を一旦止める。
「……引き返そうか。危険冒してまで行く必要ないし」
「ええーー?!もうここには来ないってことですか?!」
「そうだね」
「私お気に入りだったんですよ!場所も素敵だし、読みたい本もあるし!」
「私もだよ。残念だね」
「行きましょうよ!私図書館行きたいです!」
ホノカちゃんが身を乗り出して私にそう言う。私は肩をすくめた。
「図書館の周りってビルだらけでしょ?高所から狙われたらひとたまりもないよ。無理」
「そんなところで生存者来るかも分からないのに張りますか?この市街地への入り口に見張りがいないなら大丈夫そうな気がしますけど」
一理ある。こんなところに来るなんて、十中八九物資狙いだ。人がいること・来ることは恐らくほぼ想定してないだろう。
「それに、感染者かもしれない相手に近付きますかねえ。ここまで生き残ってきた人間が。遠隔から私たちを撃ち抜いたところで、死体のせいで大事な物資に近付けなくなるじゃないですか。脅して車から離すくらいじゃないですか?命までとられるかな」
「……言いたいことは分かるけど、全員が全員合理的な行動取るわけじゃないよ。想定の範囲外の行動をするような人間なんてたくさんいるし。ホノカちゃんいるのにリスクある行動取りたくない」
私がそう言うと、ホノカちゃんは首を傾け考える。
「でも生存者と情報は交換したくないですか?村にいたって、外部から人間が来る可能性なんていくらでもありますし、極論リスク同じですよ」
「まあ、うん、そうだけど……」
「じゃあ行ってみましょうよ。何か得られるかも」
「ええ……嫌だな……」
「大丈夫ですよ。ダメそうだったら一緒に逃げましょう?ほら、レイさんくらいのスペックの人間なんてそうそういないんでしょ?頭脳で蹴散らしてくださいよ。私も頑張ります!」
ホノカちゃんが握り拳を作って私に訴えかけてくる。圧がすごい。記憶が戻る前のホノカちゃんならきっと大人しく引き下がってただろう。彼女なりに私と一緒に歩もうとしてくれているのだろうか。
悩む。彼女に何かあったら、私は生きていけるのだろうか。でも正直、情報が得られるのは大きい。
「……レイさん、私のこと、大事?」
「大事だよ」
「特別?」
「うん、特別」
「えへ、私もですよ」
ホノカちゃんがニコニコ笑って私の腕にしがみつこうとしてきた。それを素早く肩を掴んで止める。
「ああー惜しかった!」
「いや、もう分かるよ。流れが」
「……レイさん、私何も考えてないわけじゃないんですよ?ほら、生存者グループから連絡が来てるって言ってたでしょ?そのグループのこと、聞けるかもしれませんよ。それ次第で返答考えられるじゃないですか」
「ああ……そうだね」
「自分の身は自分で守りますよ。危ないこともしません」
私は腕を組んで考える。まあ、市井の図書館に有用な物資があるなんて考える生存者は少ないかもしれない。それこそ何かを調べてる私みたいな人間か。……図書館だけなら行ってもいいのかも。
組んだ腕を解いて、肩をすくめた。
「……図書館だけだよ。そこだけ行って、帰ろう。もう出て行った可能性だってあるし」
「やったー!!よかった!!」
再度ホノカちゃんが抱きついてこようとするので、私は窓側へ体を寄せて回避した。不服そうだけど、こちらも易々とパーソナルスペースを侵されるわけにはいかない。緊張が必要な場面で、煩悩まみれになったら困る。
「いつもとルート変えるね。裏から回ろう」
「分かりました。外見てますよ」
私はアクセルを踏んだ。
警戒しながら進んだけれど、裏の道に人の気配はしなかった。というか、誰かが先に通った形跡が全くない。廃れた住宅街が、荒れて緑で覆われていた。
「……見た感じ人はいなさそうですね」
「そうだね。やっぱ表の大きい道通ったのかな」
「ふーん、そっかあ」
私たちは建物の裏の離れた場所に車を隠し、警戒しながら降りた。図書館の裏門にも入られた形跡はない。
「表も見てみよう。後ろお願いね」
「はい」
ホノカちゃんも少しソワソワと周りを見ている。怖いのだろうか。
音を立てずにメインの入り口まで回る。
「あっ……」
「……車、あるね」
旅をするには小さな車が、入り口に停まっていた。軽ではないけれど、後ろに荷物を積んでいるので乗れたとしても運転席と助手席の2人が限界だろう。大人数ではないというのが分かり、少し安心した。軍隊出身のプロ相手が何人もいたらお手上げだけれど、2人ならやりようはある。
ホノカちゃんが私の服の裾を握る。でもすぐに手を離し、深呼吸をした。彼女なりに頑張ろうと必死なのかな。
「……扉も開いてるね。あんまり警戒心高くなさそう。何でだろう」
「友好的なのかな?」
「それか自信あるか。怖いね。予測できないタイプの方が来たのかも」
「ひえ〜……」
私は少しだけ扉から顔を出して中を覗く。中央階段のど真ん中に座っている人影が見えた。私の視力では人影としか認識できず、どんな人物かも分からない。
「……誰かいる」
「え?」
「私の視力じゃ、これ以上分からないや」
「じゃあ私が見ますよ」
私は一歩下がり、ホノカちゃんに場所を譲る。私と同じようにホノカちゃんは中を覗き込んだ。
「……子供?」
「え?」
「あ、でも座ってるから分かんないな。めちゃくちゃ童顔男性かも……」
「1人?」
「ここから見えるのは1人ですね。それ以上は見えません」
ホノカちゃんは私の方を振り返る。どうします?と言うように。
「……武器とか持ってそう?」
「うーん、手元とか足元には無さそう?背中は分かんないなあ。本読んでますね」
「呑気だなあ……」
「うーん、私たちも人のこと言えないかも?」
「安全確認してるのに」
どうしよう。1番よく分からない相手だ。私たちは感染について考慮しなくていいのはアドバンテージだけれど、相手にとっては危険人物に変わりない。警戒されるだろう。ノコノコ出て行って優雅に話し合いができるとも思わない。
私が悩んでいると、ホノカちゃんは様子を見ながら口を開く。
「なんか、私いけるかも。話してきてもいいですか?」
「え」
「あの子、多分本当に中学生くらいじゃないかな。大人には見えない……」
「いやだからって無警戒に話しかけるのは……」
「もちろん気をつけますよ。この距離なら、銃弾も当たりませんよ。大声で話しかけてみます」
「いや、でも」
ホノカちゃんは私へきちんと向き直り、天使のような清らかな微笑みを口元にたたえ、私を見つめる。
「信じて、レイさん」
「う……」
私は思わず一歩後ずさった。この子の時折見せる、圧倒される感じは何なんだろう。
いつまでも悩んでいるわけにもいかない。私は溜息を吐いた。
「……危なかったらすぐ逃げるからね」
「わーい!レイさんありがとう!」
私はホノカちゃんに何かあってもすぐフォローできるように、すぐ横に控えた。
ホノカちゃんは入り口に立ち、息を吸って声を出した。
「こんにちは!私ホノカって言います!少しお話ししませんか?」
澄んだ声が響く。そこまで大声ではないのに、反響してどこまででも届きそうな声だ。図書館なら尚更だろう。
彼女が言った後、すぐに返事が返ってくる。
「――俺、感染者だけど?」
声変わり中のような、低いけれど男性にしては高めの声が聞こえてくる。
ブラフ?私もやったことがある。仮に感染者だったとして、私たちには何の問題もない。
ホノカちゃんは私に一度視線を寄越してから、話を続ける。
「大丈夫だよ!お話しよう!そっち行ってもいい?」
「……ご自由に」
随分素っ気ない。気乗りはしてないのだろうか。
「もう1人いるけど、その人と行くね!」
ホノカちゃんは私を見る。先に行こうとするのでそれを制して、私が前に出て中へ入る。
中央階段には本が散らばっていた。地震の影響だろう。そのかなり上段の部分に、少年が座っていた。画集のような大きな本を広げ、それを熱心に眺めている。
私たちがゆっくり階段を上ると、チラリと視線を投げてくる。
「……ふぅん?2人?」
「そうだよ。ここ、何度も通ってるけど生きてる人に会えるのは初めて。この辺りで暮らしてたの?」
「まさか。東京にいたんだ。集団で暮らしてたけど、感染者が仲間に出て瓦解した」
「東京?!待って、1人で運転してきたの?!」
「もう1人いたけど、途中で死んだ。そこからは俺1人」
ホノカちゃんが私を見る。私は肩をすくめた。
「……そっちの人は?彼氏?」
少年は本を閉じ、顔を上げる。線が細く、背も高そうに見えない。こんな世界で生き延びてこれたのは、集団に属していたからだろう。
「違うよ。えっと……」
「……ヒカリです」
私はそれだけ言い、黙る。ホノカちゃんに任せた方が無難だろう。
「ヒカリさんと一緒に暮らしてるんだ。お兄ちゃん、名前は?」
ホノカちゃんがそう言うと、相手は顔を顰め首を振る。
「いや、歳が近いはずだろう?何で子供扱いするんだ?」
「え?私21だよ?」
「4つしか違わないだろ。俺は17だ」
「ええ〜〜?!」
その叫びは失礼だと思ったけれど、何も言わなかった。
思った通り、不愉快そうに眉を顰める。
「……失礼な女だな。もっと年相応の振る舞いを身につけた方がいい」
「うーん、高校生に指摘されちゃいましたね」
ホノカちゃんは私を見るけれど、肩をすくめるだけで返事はしなかった。
「シュウだ。……2人は感染者の俺に近付いても平然としているけれど、何で?」
「抗体があるから」
ホノカちゃんがあっさりそう答えると、シュウは神妙な顔をして黙る。
「……シュウくんは感染しちゃったの?発症もしてる?」
「してる。薬で痛みを抑えてるだけだから」
「そ…っか」
「別にいいんだ。死ぬ前に来たかったこの図書館にも来れたし」
「ここ?東京の方がたくさんあるんじゃない?」
「祖父が設計したんだ。最後の仕事だったんだ。最期に見たかった」
「え!そうなの?!ここすごい素敵だよねえ。暖かい雰囲気で、人がたくさん来ることを想定してたんだろうなって。居心地良くて大好き」
ホノカちゃんがそう素直に口に出すと、シュウは驚いた顔をした後に目を細め微笑む。私はそれを見て顔を顰めた。彼女が他の人間の好感度を高める行為を目の当たりにして、胸がざわつく。
……何も考えないようにしよう。
「……俺もそう思う」
ホノカちゃんはシュウのその返事を聞いて笑みを浮かべ、隣に腰掛ける。服が触れ合いそうなくらいの距離だ。
……近い!会って数分の他人との距離がこんなに近いとは!また言って聞かせなければ。私はホノカちゃんの一段下に腰を掛けた。
案の定シュウは顔を顰め少しホノカちゃんから距離を取る。
「距離が近いな。無防備すぎないか?感染してるって言ってるだろ」
「抗体持ちだって言ったでしょ?大丈夫だよ」
そういう問題でも無いんだけどな〜……と思いながら私は2人の会話を背中で受け止める。入り口から目を離すわけにはいかない。また誰か入ってくるかもしれない。
「……2人はこの辺りで暮らしてるのか?」
「そうだよ」
「じゃあ、これから会う人間がいたとしても自分が抗体を持ってることは言わない方がいい」
「え?何で?感染しない相手って、安心できるんじゃない?」
「そうか、本当に何も知らないんだな……。血清が効果があることは知ってるだろ?」
「うん。作ったことあるよね?ヒカリさん」
私は前を向いたまま頷いた。
「なら想像付かないか?ワクチンが欠陥品だったってことは感染せずに生きていくにはどうなるか」
「……抗体のある人から血をもらって、血清を作るってこと?」
「穏当に言えばな。抗体持ちの人間って稀少だろう?東京に生存者が続々集まってきても、数人しかいなかった」
「どうなったの?」
シュウは淡々と話を続ける。
「まず、各グループで抗体持ちや血清を作れる拠点の奪い合いが始まった。血清を作れる技術者なんかも。結局バラバラだった小さなグループは、大まかに医者と軍隊のグループの二つに収斂した」
「しゅうれん?」
「まとまったってことだよ」
私がそう言うと、ホノカちゃんはああ、と納得したように呟いた。
「嫌がろうが何だろうが、大勢が生き残るためには抗体持ちから血を抜かなければいけない。抗体持ちは捕まり次第眠らされ、管理される。血液を抜き取るためだけに。家畜扱いだったよ」
「え……?」
「…………」
何となく想像していた。ワクチンが無い世界でどうなるかって。大勢が生き残るためには合理的な選択だったのかもしれないが、吐き気がした。法が及ばない世界ではこういうことも起こり得る。
「まあ、それで新しく地方から来た親子連れの子供の方に抗体があって。親の方は感染してたから縋る思いで子供を託したのに、そんな扱いをしてるってどこからか知ったんだろうな。部屋に忍び込んで、抗体持ちと自分の子供を含め全員殺して、ゲームオーバーだ。一元管理が仇となったな」
「…………」
「俺は医者の方のグループに属していたけれど、それでほぼ崩壊。敵対してた軍隊の方に合流できたやつもいたのかは知らない。そもそもあっちの方も内部のいざこざで瓦解寸前だと聞いていたし、長くは持たないだろうな。ノウハウもなくて抗体持ちを死なせてたって噂もあったし」
「な、なんか……壮絶だ……」
シュウは鼻で笑った。
「こんなもんだろ世界中」
「…………」
「日本の外とも連絡取れてるってこと?」
私は初めてシュウヘ質問した。
「ああ、同じように生き残りグループが海外にもあって、そことは定期的に連絡を取ってたらしい。2つだか3つだか。戦争でも始まりそうな雰囲気だったって」
「え?戦争をできるほど生き残りがいるってこと?」
ホノカちゃんが声を上げる。
「いや、そうじゃない。ただ、物資や土地の奪い合いはあっちの方が酷いみたいだ。そういう意味で、戦争っていう」
「ああ……なるほど」
私は考える。
……聞いた話から推察すると、私たちが外部と連絡を取らずに生活していたのは正解だったかもしれない。関わるメリットが今のところゼロだ。何かあった時のためにどこか繋がりがあった方がいいかと思ったが、こんな世界なら繋がらない方がマシだ。ワクチンを渡したところで、それが新たな火種になりかねない。
というか、家畜扱いだなんてゾッとする。ナリタさんたちは東京へ辿り着いたところで地獄だったんだ。ホノカちゃんもリカコさんも、どうなってたんだろう。想像したくない。私はきっと助けには行けなかった。
私たちが今ここにいるってバレるのもまずい。ここまで探しに来はしないだろうと思っていたけれど、拠点として活用していそうな場所なんて限られる。
「……今、本当に1人?他の人間と連絡を取る手段は?」
「無いね。もうあいつらと関わりたくない。連絡も一切取る気も無い。追跡対策も万全なはずだ。2人のことを東京の人間に伝える気も、ない」
「…………」
「根拠に乏しいって?ならここで殺してくれたっていい。どうせ死ぬんだ。ここに来れたし心残りはもうないね」
「ちょっ……」
ホノカちゃんが声を上げた。背後でオロオロしている様子が手に取るように分かる。
私は後ろに一瞬だけ視線を投げ、肩をすくめる。殺すつもりはない。
「ここまだ使いたいんだ。読みたい本もあるし、死ぬなら他所で死んでくれない?」
「参ったな。死に場所に決めてたのに。運転ももう、出来やしない」
「……私たちのところに一緒に来る?」
「ダメだよ。万一に備えて場所なんて教えられない」
私がそう言うと、ホノカちゃんは溜息をついた。不満なんだろう。でも譲れない。
「ヒカリの心配は最もだな。抗体持ちが家畜扱いされるなんて聞いたら、警戒するに決まってるだろう。ホノカが無警戒すぎる」
「でも、シュウくんが私たちを騙そうとするなら、そんな素直に話しないと思う。何も言わずに連絡しちゃえばいいじゃん」
「……合理的な人間ばかりじゃないって言う話は?」
「だって、シュウくんめちゃくちゃ合理的そうじゃないですか!」
私は笑ってしまった。シュウも呆れたように笑っている。
「……とりあえず、ヒカリさん、一旦本探しに行きませんか?シュウくんも館内見て回りたいかもしれないし。また後で話そうよ」
「俺はここにいる。さっき一度見て回ったし、もう歩き回れそうもない」
「……分かった。また後でね」
私は無言で立ち上がり、上階を目指した。ホノカちゃんが後を付いてくる音が背後から聞こえた。




