不倶戴天:本当のネームド
気付きました。1話2000〜3000文字じゃ無理だ、2700〜3500文字ぐらいだ、と。
いやー……にしても疲れた。頭がグワングワンする。確実に酔ってる。恐るべし弾性の力。そしてそれに耐える詩遥さんの身体。
「あんだけ跳ねてよく疲れませんね詩遥さん…」
「まぁ慣れてるからね。テント君は大丈夫そう?」
「まぁ…なんとか?」
若干の傷と若干の酔いを犠牲に上級悪魔討伐と考えれば結果オーライと言うべきだろう。ってか潜水に続いて2連続上級撃破って学会所属(仮)したばっかにしては結構凄いのでは?
「思ったより上級も大した事ないんすね」
「個体差があるから一概に大した事ないとは言えないけどね」
「超級より強い上級とか稀にいるからねぇ〜」
「それはもう超級なんじゃないか?」
超級より強い上級、矛盾してるとしか言いようがない気がする。ただ何と言おうと上級は上級。あんなに悪魔に怯えてた頃とは打って変わってとんでもない成長を遂げたとも言える。
「そういえば…テント君って意思能力なんだっけ?」
「サース…?あ、真秀さんがそんなこと言ってた気がする」
「そ、なら伸び代があるね。これからの成長が楽しみになってくるね」
「どゆことっすか」
「能力にはね、大まかに"意思能力"と遺伝能力"の二つに分かれているの。意思と遺伝。テントくんはその内の意思能力の方」
「ちなみに私と詩遥さんは遺伝能力だよ!総長も!」
「その意思と遺伝って互いにどんなメリットデメリットがあるんですか?」
「遺伝能力はね、生まれつき備わってる能力の発現の事を指してて、メリットは家系通して同じ能力を継ぐから分かりやすいし扱いやすい。デメリットは固定観念が根強く残ってるから能力の融通とか応用があんまり効かない事かな」
「逆に!意思能力は遺伝能力と真逆で自分だけの能力だから幅を利かせやすいし応用も効くけど、0からのスタートだから扱いにくい所があるの。ただ能力に慣れれば遺伝能力より格段に強くなる可能性はあるよ!」
「成程?」
とりあえずこういう時はゲームで例えてみよう。その方が俺には分かりやすい
○意思能力
・レベル1スタートで序盤はキツいがステータスやスキルポイントを自由に振っていける。
○遺伝能力
・レベル30スタートで初手からある程度戦かえるがステータスやスキルポイントは振り分けられててやる事が限定される。
って所か?こう考えるとRPGの主人公か仲間みたいな感じがするな。
「要は意思能力の方が強いケースが多い?」
「んー、実はそんなこともないんだ。遺伝能力は基本的に強いとされる能力が継がれてきてるからね。総長なんかは良い例だよ」
「学会にいる能力者の人達も基本遺伝ですもんね」
「へぇ…そんなもんなんだなぁ」
「ま、つまりテントはこれからもっと強くなるって事!だから頑張ってね!」
「そりゃま最悪命持ってかれるんだから頑張るけどさ」
「……ね、テント君。」
「はい?どうしました?」
畏った感じで口を開く詩遥さん。今何か地雷踏んだのかとも思ったが…そんなことはないと信じたい
「テント君は何で悪魔狩りを始めたの?死んじゃうかもしれないのに」
「うーん…俺の場合は流れでなっちゃったとしか…」
能力が発現してから何やかんやで今に至る、正直言えば本当にその通りなのでそれしか言えなかった。ただそうだな
「ありきたりですけど、強いていうなら…人を助けたいからですかね」
「ヒーローみたいなこと言うじゃん」
「だってしょうがないだろ?」
「良い理由だと思うよ、私は。それで、助けたいって言うのは?」
「元々この能力を発現させたのって超級にやられた入瑠を意地でも助けようとしてそん時に発現したんですよ。だからこの能力は出来る事なら人助けに使いたいなって」
「…ふーん、そっかそっかー」
入瑠がそっぽを向いた。事実を述べただけだそんな聞いてて恥ずかしい事だったか?んまぁちょっと恥ずかしい事言った自覚はある。
「詩遥さんはどう言った理由で?」
「元々親が学会所属だったからってのもあるんだけど……一番は暴食を殺すため」
「暴食って、グーライーターだっけ?」
「そそ、覚えてて偉い!」
「俺を何だと思ってる?」
「バカ」
「お前にゃ言われたくないな…それで、暴食を殺すっていうのは?」
そう聞くと詩遥さんは一瞬、遠くを見た。
「……私のお母さん、殺されたんだ。グーライーターにね。だからその復讐。報いを受けさせる事が私が悪魔狩りをする理由。正直……今でも思い出すの、あの時のこと」
「あの時?」
そして、淡々と話し始めた。
◆◆◆
「ただいまー」
「詩帆?お母さん?いないのー?」
変だな、余りにも物静かだ。いつもなら「お姉ちゃん!」って飛びついてくるのに、リビングかな?そう思いドアを開ける
「詩帆?いるなら返事し……」
《……ウゥア、だれダ?》
「……あっ、あぁあああっ」
聞き慣れない、濁った声。
《…………》
「…詩帆?…お母さん?うそでしょ?」
床一面に鮮血が飛び散っている。そこにいたのは、娘を庇うような姿勢で、身体の一部が無くなっていて、抜け殻のようなお母さんと、酷く落ち着いていて怯えている詩帆がいた。
《…殺シタ。スマンな…ならば、俺を殺ス、俺ハ殺せ。》
「どうして…どうしてッ!!!」
《……得てシテ、悪魔ダ》
それだけを告げると、血に濡れた手を下げた。……その姿は、ただの餓えそのものだった
「…あ…あぁぁぁぁ!」
◆◆◆
「それからはあんまり覚えてない。幸い妹は死ななかったけど重症を負った。私の人生を壊されたの。だから、それが理由」
「……随分と、苦労したんですね」
いやー………うん。何と言うか、想像以上にキツい。悪魔による被害の実体験を直に聞く経験なんてなかったから心にくるものがある。この話を聞いた後だと俺の理由がアホらしく思えてくる。
「ごめんね、こんな暗い話しちゃって」
「いえ、全然。寧ろ気持ちが固まったような気がします。俺も手伝います。てか手伝わせてください。協力します」
「……そう?嬉しい、ありがとう。でもそれは万が一の時ね。テント君はこれからなんだから」
「それは……分かりました」
恐らく、実力が足りないからだろう。足手纏いになりかねないから、それにこの件は自分自身の事だから、と言う事なのだろう。人を助けると言っておきながらこの醜態は惨めだな……上級を倒しただけで満足してちゃ駄目だ。もっと…もっと強くならないと
「……もう!何でこんなにお通屋ムードなの!もっと気楽に行きましょ気楽に!せっかくネームド倒したんですから!ね!」
「ちょっおまっ」
マジかコイツ、あの話からそのテンションってマジかコイツ。詩遥さん怒ってないと良いけど
「……ふふっ。ありがと、入瑠」
「え?どういたしまして?」
「はぁ…まったく」
良かった。場が和んだだけで。本当にデリカシーを宇宙へ放り込んだのかコイツは。まぁしかし、入瑠の言う通りでもある。クヨクヨしてられないな。そう思いながら、拳を握りしめ決意を固めた。
暴食の発言、実は結構重要だったり。




