狼の王は弾かれる:取り憑く悲願
想像以上に長くなってしまった。あと更新遅くて申し訳ないです
詩遥さんをよそに、テンペストが動いた。黄色い瞳が俺らを捉える。鋭利な爪と獣の本能めいた俊敏さで襲ってくる。
「動きは単調だねって力つんよ!」
獣主の膂力に少し仰け反る入瑠。流石は上級と言ったところか。せめぎ合いの末入瑠が押し返したところに飛感撃を当てる。だがほんの少し蹌踉めく程度でダメージをダメージを負っているようには見えない。
「グルルrrゥゥ…mだダナ…」
微かな呻き声が聞こえる。ってか地味に今喋ったか?…まぁいい。牽制するテンペストを他所にチラと上を見る。さっきから隙を伺って跳ね続けていた詩遥さんがテンペストの後ろからものすごい勢いで接近する。それに対して死角からの攻撃だというのにテンペストは後ろ蹴りで攻撃を軽くいなした。
「後ろに目でもついてるのかコイツ」
「いや、多分だけど観察眼がすごいね。獣としての本能なのか気配察知にたけてるんだと思う。」
要は常に秘心を持ってるようなものか。自然界においては殺気に気づかなければお陀仏だし言わんとすることはわかる。ただ狼の能力を持つだけでここまで長けるものなのか。能力は不思議なものだ。
そう思っていると獣主が雄叫びをあげ威嚇してきた。闘志を震え上がらせているのか、秘心で見てみると黄色の強い炎。てっきり真っ赤に燃えていると思っていたが理性があり落ち着きつつも野生の闘争心があるような感じだった。
咆哮が終わると、気付けば周辺には小さな影がぴょこぴょこと蠢いていた。まるで獣の群れを成している。
「悪魔を従えてる?下級…中級もいるね。数十体ぐらいかな」
「群れで襲ってくるって狩りみたいですね」
入瑠が吐息混じりに答える。けど、その声に怖さはほとんどない。ホントこいつは戦いになれば頼りになる。
まず詩遥さんが跳んだ。床に付与された弾性を利用して、空中でバネのように勢いを溜める。その姿は機械的ですらあり、ピョンピョンと着実に距離を詰めていく。俺は再び軽く秘心を発動した。控えめに。テンペストの周りに血のような赤がちらつき、冷たい青がベースに混じる。好戦性と警戒心。色の揺れで次の動きを読み、拳の合わせどころを微調整する。
「周りの悪魔倒しつつ詩遥さんに合わせるよ、テント」
入瑠が短く合図する。頷くと、ドルフィナーレの充填を始めた。やる気満々だな。
詩遥さんが放った最初の蹴りは獣主の腕に命中する。それを振り払い鋭利な爪で詩遥さんに襲いかかるが弾性の力を使いたくみに避けている。少し距離を取った後、獣主は低く身をひねり、側面から爪を振るい下級を呼び寄せる咆哮を上げた。呼吸を乱されそうになるが、詩遥さんは飛びながら冷静に状況を読み、すぐに次の手を組み立てる。
「下級の相手お願い」
「了解!」
掛け声と共に入瑠が咄嗟に技を解放する。眩い光と衝撃波が弾け、周りの下級悪魔が吹き飛ぶ。その後も複数の中級相手に小火力のドルフィナーレを撃ち続ける。視界が一瞬開いたそのタイミングで、詩遥さんが壁を使い接近する。テンペストの圏内に潜り込もうとした時、けたたましい咆哮に煽られて吹き飛ばされる。
「詩遥さん!」
「うーん…ちょっと厳しいかも」
弾き飛ばされた詩遥さんは壁に接触する。その壁は既に弾性に満たされており、触れた瞬間、巨大なバネのように跳ね返り体制を整える。
(スピードだけじゃ太刀打ちできない…もっと火力と判断力があれば…………)
(……あっ、そうだ。)
「テントくーん!」
「はいなんでしょう!」
「手出してー!」
「手?」
詩遥さんの声が空気を切る。手を出すって手を挙げればいいのか?と思い獣主から距離を置いて手を挙げた。
「『他気怨』、はいタッチ」
「え?ハイタッ……つぁぁぁあ!?」
手が触れた瞬間ものすごい勢いで後ろに引っ張られた。不思議と手に痛みはないがジェットコースターに乗っている感覚がした。そしてその勢いのまま地面に衝突して……
「……ん?」
痛みがない…それにフワッとした感覚……ってかなんか地面遠くね?
「…………コレ飛んでる!?」
「詩遥さんいつの間にそんな技覚えたんですか!」
「最近身についたんだ。性質を具現化して憑依させる。要は弾性の付与だよ」
「へぇ〜」
「んなこと後でいいのでとりあえずどうすればいいかだけ教えてくださいマジで!!!」
「テントくんは何とかしてその弾性を蓄え続けて!2人で隙作るから!」
「あっはい!」
横向きスカイダイビングってやったことあるか?要はそういう感覚だ。ってか蓄え続けるってどうすりゃいいんだよ、と思いながら壁にぶつかり跳ね返される。詩遥さんが想像以上に弾性を溜めててくれたからか勢いは止まらないがこのままだと地面に正面衝突確定で草も生えない。
「とりあえず……真似てみっか?」
分からなければなんとやら、と言うやつだ。詩遥さんのやっていたように壁に足をつけ衝撃と言う名の弾性を足に集中させる。重力で落下しない原理がよく分からんがそう言うもんなんだろう。
「せー……のっ!」
一気に放出するように思い切り足を蹴ってみると比じゃないレベルでスピードが出た。成程理解、これを繰り返せって事か。なかなか骨が折れそうだがこれの速さなら十分勝機はある。
「言われた通り、溜め続けてやんよコンニャロが!」
「あれぇ…テントくんもう慣れちゃった?」
「飲み込み早いんですよねーテント」
「凄いね彼…私たちも頑張らないとね」
「はい!」
頭上で跳ねるテントを横目にテンペストと再び視線を交わす。とにかく隙を作らないと。
「私が引きつけるからブースターかフィナーレ当ててくれる?」
「分かりました!」
そういうと詩遥さんはテンペストと対峙した。悪魔の力もあるのか弾性の能力を使って互角に戦いつつ牽制してる。タイミングを作ってくれるのは嬉しい……けど、このままじゃ火力的に詩遥さんも巻き添えになっちゃう。うーん…なら強引に作っちゃえ!
「ごめんねテント!『ドルフィナーレ』!」
上目掛けてドルフィナーレを打つ。かなりの威力を無駄にしたけ2人の視線をコッチに向けることに成功した。一か八か、テントに当たってないといいけど!
「…ガァ?ナ…nDA?」
「『ドルフィアブースター』!」
テンペストに向けてビームを放つ。咄嗟の出来事にテンペストは迫り来るビームに反応するも大きく体勢を崩す。その隙に詩遥さんが追撃を入れる。それを咆哮で引き剥がす…がしかし
「よし…テント!」
「とんでもない合図だよったく!」
テンペストとほぼ同じ視線の所で壁に足をつける。あまりにも勢いが強すぎて壁が少し凹んでしまうレベルだ。
「秘心で見なくてもわかる。心が乱れてるぞ獣主さんよ!」
「グg…glAaaァアAA!!!!」
「最大スピード喰らえや!」
テンペストの咆哮に対して溜めに溜めまくった弾性で一直線に突っ込む。効かないことがわかったのか防御の姿勢に入るテンペスト。拳に最大限力を込める。圧倒的速度+落体の火力上昇+飛感撃の前に太刀打ちできるかってんだ。
「爪で構えたって無駄だ!『飛感撃』!」
「グ…ガァ…」
流石のネームドの上級悪魔クラスでもバフてんこ盛りの攻撃を喰らえば立ってはいられないらしい。地面に足をつけその場に倒れ込んだ。周りに少しいた小級悪魔が逃げていく。秘心で反応しないのみるに死んだ振りとかではない。
「勝っ……たぁぁ…」
「お疲れ様。テントくん。それに入瑠も」
「うん!咄嗟の判断ができてよかった!」
「あんな合図二度とゴメンだ!爆風モロに喰らって死ぬかと思ったぞ」
「ありゃ、喰らってた?」
「狙ったかってぐらいのタイミングで真上にいる俺にクリティカルヒット。運良く壁に足付けれて助かったけど」
「ま、終わりよければすべてよしってやつじゃん?」
「お前なぁ…」
「ふふっ、面白いね2人とも」
「詩遥さんまで!?」
「よっし!さっそく報告しにいこー!」
「……おう」




