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幼馴染は好感度が見えるメガネを手に入れた!!

作者: 佐橋 りん

誰もが雲ひとつないと形容するであろう、この夏の朝に俺、月影奏はなくなく学校へと向かっていた。気温のせいか、日差しのせいか、道端の雑草も萎びて見える。

「あー、俺の周りだけ冷やせるクーラを誰か開発してくれよ。助けてよード◯えもん」

じわじわと体力がそがれていくのを感じながら、漫然と通学路を歩く。


「おっはよー」

背中に軽い衝撃が走る。振り向いてみれば幼馴染の駿河鈴音だった。

我が校一の美少女と名高い彼女は、肩まで伸びる艶やかな黒髪、整った小さな顔、凹凸のない体、そう胸以外は完璧なのだ。


「うわ、さいてー。朝っぱらから胸凝視すんなし。」

「いや、お前みるほども…」

彼女の持つラケットが見惚れるほど綺麗なフォームで俺の脇腹へと吸い込まれる。

「いってー。まじで容赦ないな」

「次そんなことを言ってみな、全国大会に行けるぐらい練習でこき使うからな」


凍てつくような瞳から目を逸らす。なんでラケットを持っているのかと言うと、学校一の美少女様はその美貌だけでなくテニスの実力も県内トップクラス、天は二物を与えずとはなんだったのかとおもわんばかりの完璧暴力美少女なのだ。そして、俺の好きなひとでもある。まあ10年以上片思いなのだが。


学校にむけて歩き始めると、隣に並んできた。

「随分と元気だね。何かいいことでもあったのかい?」

「その言葉絶対受け売りでしょ、全くかっこよくないよ。いやさ、今日は朝練がなくてゆっくりできるし、  

愛しい幼馴染と朝から会えたからね」

この幼馴染ときたらほんと。こっちがどんな気持ち抱えてるか知らないくせに。


「奏はさ、この夏に何か予定はないの?ほら夏といえば海とかプールとか色々あるじゃん」

「俺みたいなホモサピエンス引きこもり亜種は家から出ると死んじゃうんだ」

「なにそれ」

涼音は目を細めて笑っていたかとおもったら、イタズラな笑顔をうかべて、

「じゃあ、奏は家で彼女といちゃいちゃするんだ。かわいい幼馴染は外で部活してるのに」

「いや、彼女なんているわけないだろ。もはや最近学校で存在を認知されてるのかわからんぐらいだぞ」

「へー、彼女いないんだ。でも、隣の席の月城さんとは仲がいいんだってね。風の噂で聞いたよ」

「あいつが彼女って、そんなわけないだろ。俺が好きなのは…。ってかそりゃ隣の席だから仲良くはするよ」


居もしない彼女について好きな人から聞かれるのは、なんて地獄だよ。なんとか話題をそらさなければと思って、彼女をみると見慣れないメガネをかけているのが目についた。

「あれ、涼音ってそんなメガネかけてたっけ」

「おっ気づいたか。なんとこれはー好感度の見えるメガネだよ」


ふーん、好感度が見えるメガネか。好感度が見える。は?

「こ、こ、好感度が見える!?」

「そうだよー、好感度が見えるメガネなんだよ」

「本当に?」

「本物だよ」

「どうやって手に入れたんだよ」

「なんか朝起きたら机の上にあった」

「なんだよそれ、てかなんでバラしたんだよ」

「いやー、なんか言ったほうが面白いかなとおもって」

「いや、信じられないな。じゃあ俺の好感度見てみろよ」

「おー、みえるみえる。ふむふむ」

「教えろよ、気になるじゃんか」

「いやだよー教えない。でも私の数字を見てもいいよ」


妙に機嫌のいい涼音は俺にメガネを渡してきた。

頭の上には”100”と数字が浮かんでいる。

「なんだよこれ。本物じゃねえか」

「でしょでしょ、だから本物だって言ったじゃん」

偽物だとおもっていたけど、え?おれが鈴音を好きなことがバレた?てか100ってどのくらいなんだ。

シャツが背中に張り付く感覚。


「私にはね、このメガネいらないから貸してあげるよ」

なぜか涼音は満足げな表情を浮かべている。

いらないってどう言うことなんだ。とりあえずメガネはもらって、数値について調べるしかない。

「いらないならもらうぞ」

「いいよ、でもすごい必死だねぇ」

「そ、そんなことなだろ。ほら学校行くぞ。遅刻するから」

「わかったよ」


学校に着いたはいいが、このメガネが気になって何も手につかない。

このメガネの数値はどのくらいが普通なんだ。そもそも何で涼音はこれを手に入れられたんだ。

ただこのメガネは本物だ、これさえあればこの片思いだって。


「奏、おはよ」

突然話しかけられて、現実に戻る。

「高畑か、おはよ。今日はまじで暑いな」

「そうだな、もう朝いえから出たくねえよ。しかも今日めちゃくちゃ難しかった数学のテスト返ってくるんだろ?もう最悪」

「うわ、そうじゃん。なんでこんなに世間は高校生に厳しいんだ」


なんて話をしているうちに担任が教室に入ってきて、高畑は席に戻って行った。

あれ、あいつの頭には数字が浮かんでなかったよな。何が違うんだ。てか高畑だけじゃなくクラスメートたちにも浮かんでないな。今朝、涼音の数字が見えたのはどういうことだ?


朝礼が終わり、また考え込んでいると今度は隣から脇腹を突かれた。

「ねえ奏、メガネかけてるじゃん。急に目が悪くなったの?」

「いや、このメガネは、」

好感度が見えるんだと言いかけて口をつぐんだ。あれ、こいつにも数字がないな。

「そう、急に目が悪くなってね」

「数学のテスト勉強のせいだね。きっと」

月城は笑いながら言う。

「いやほんとそれぐらい勉強しとけばよかったよ」

「めっちゃ難しかったからねぇ。どうなの点数には自信があるの?」

「いや全くないよ。ほんと帰ってこないで欲しいね」

「またまたそんなこと言ってどうせ点数高いんでしょ。みせてもらっちゃお」



気づいたら数学の時間になっていた。

「今回のテストはちょっと難しかったか。平均点がかなり低かったぞ。もっとしっかり勉強するように。では返すぞ」

やっぱり今回は難しかったようだ。帰ってきたテストの点数ときたら、もう目も当てられない。こりゃ今月のお小遣いはないかもな。

「ねえねえ、点数どうだった?」

月城が聞いてきた。

「10点」

「ぷぷっ、目が悪くなるまで勉強したんじゃないの。10点って。ふふふ、あーあ私も点数よくないんだよねー。 奏、私の点数気になるでしょ。どう?見たい?見たいでしょ?」

彼女は非常に楽しそうだ。

「いやだね。俺より高いやつの点数なんて見たくもないね」

「私はまだ一言も奏よりも点数が高いなんて言ってないよ。どう興味湧いてきた?ほらほらお願いしてみて。「月城茜様、点数を見せてください」ってね。」

「くそっ、点数見せろよ。」

「仕方がないなぁ、ほら



”私のをみてもいいよ”



差し出されたテスト用紙をひったくって見る。解答用紙の右上には大きく”98”と書いてある。

「ふざけんな、ほぼ満点じゃねえか」

「ぷぷっ、あれれ月影くんはお勉強が苦手なのかなぁ?」

やつは容赦なく煽ってきた。なんだこいつは、許さん。ニヤニヤとした顔から目を逸らしたとき、見えてしまったのだ”80”と頭上に浮いた数字が。

え?見えるようになってる?

これならみんなのが見えるようになったのではないかと思って、クラスを見渡しても見えない。

月城の上だけに浮いている。

数字が見える月城とクラスメイトとの違いはなんだ。

朝の状況を思い出せ。涼音はメガネをかけていたが、あった瞬間から数字が見えていたのか?

よく考えたら、数字について何も言ってなかったな。ただ途中から見えているような雰囲気ではあった。

朝の状況と今の状況の共通点はなんだ?



そうか!


とある可能性に思い当たった。俺の読みが正しければ、確かにこれは「好感度が見えるメガネ」だ。

思いつきを確信に変えるべく、涼音に連絡をする。



涼音のテニス部の練習が終わったあと、家の近くのカフェに来た。

「いやあ、遅くなってごめんね。思ったより練習が長引いて」

「全然大丈夫。涼音がテニスが好きなのはよく知ってるし」

「あとさ、今朝くれたこのメガネだけどやっぱりいらないや。返すよ」

「えー、これがあれば奏が女の子を攻略できると思ったのに。彼女欲しいんじゃなかったの?」

「そうだな、確かに彼女は欲しい。でも誰でもいいってわけじゃねえんだよな。」

「ふーん、で奏の本命の子の好感度はどうだったの?」

「そうだなぁ。多分付き合えるぐらいの好感度はあるんじゃないか?」

「へー、じゃあその子と付き合うんだ」

彼女は揶揄うように言う。

「その子に告白したらいいじゃん。成功率100%だよ、きっと」

「そうだな。」


「涼音、お前のことが好きだ。付き合ってくれ」

「もちろん♪」



ーーーーーーーーーーーー

「涼音はもし俺が本当にすきじゃなかったらどうしてたんだ?」

「うーんそうだね、少なくともこのメガネは渡してなかったね。あとこのメガネをつけたまま、奏の好感度を稼ぎに行ってたんじゃないかな。実質乙女ゲーだね。」

もしかして、こいつヤバいやつなのでは?

「ううん、やばくないよ。一途な乙女の愛らしい行動でしょ。」

「ナチュラルに思考を読んでくるなよ。そして返答がこええんだよ」

「ふふ、奏の考えなんて全てお見通しだよ。もう逃がさないからね」

こりゃ尻に敷かれるんだろうな。

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