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プロローグ

「ダイアン君、君に新人教育を頼みたい。」


午前8時、琴吹病院の一室に声が響く。声の主は琴吹病院院長 神代 楠雄(じんだい くすお)。まるで白衣を着た暴力団のボスのような風貌の坊主は胡散臭く無い爽やかな笑顔で部下にものを頼む。

声の向けられた先はベッドの上で食パンを頬張っている人間 大安宮 詩音(だいあんぐう しのん)。此奴はこの病院に勤める医師であり、かなりの給料を貰っている…

はずであったが、あろうことか「給料はいいので住むところをください。」とこの相談室を自分の帰る所として装飾している。見渡すと患者のものと遜色のないベッド、PC、4Kテレビ、本棚(中身は漫画)、カーキャンプで使うような調理器具、その他もろもろのグッズが置かれている。もとは相談に来た患者やその家族等関係者を入れるためだけに作られた部屋なので非常に狭い。そこにまるでパズルでもするかのように詰め込めるものを綺麗に詰め込んだものであるからベッドの上以外に本来人が座るor立つ場所は無い。厳つい風貌の院長だが、このような前例の無い我儘を通すとは重度のお人好しのようだ。


「新人ですか?私に頼むということはつまり私と同じ難病科の医師が来るということ。この病院の難病科の医師がついに2倍になるということですね?」

「ああその通り。0から1程では無いが、1から2は大きな進歩だ。まあ君だけでドクター100人がいるようなもんだが。この新人も君レベル!いや、君以上の医師に君自身で育ててやってくれ!」


そう意気揚々と目の前の堕落した生活スペースで飯を貪る者を激励する神代院長


の後ろに佇む1人の青年。

いや、静止画で切り取ればそう見えるかもしれないが、実際は莫大な運動エネルギーを持った若い男が坊主の後ろに迫ってきていた。そして衝突する。


《運動量保存則》

質量と速度の積である運動量。外部から力を受けない限り、ある物体間で力を及ぼしあってもその物体の運動量は保存される。

謎の爆走男をA、院長をBとすると

M(A)V(A)=M(A)V(A)'+M(B)V(B)

[M:質量、V:速度]


つまるところ、二人の男が衝突し、この狭い室内のベッドの上に飛んできたということだ。


「初めまして!今日からこの病院で働かせて頂きます!新人の即妙院(そくみょういん) 浅葱(あさぎ)です!よろしくおなしゃす!」


か弱い華奢な体を下敷きにし暴力団員のような大男を組み伏せ、先程までの大運動が無かったかのようにこの青年、もとい琴吹病院難病科所属医師即妙院浅葱は自己を紹介する。恐らく小児科所属の医師でもこのような破天荒ボーイは見たことが無いだろう。

半生き埋め状態となった詩音はギブアップを告げるかの如く上の野郎共を叩く。

素直な爽やかボイスの「すいません!」とこの事態に参っているような低い「すいません…」の声と共に2人は狭い床に降りていく。


「残念ながら…じゃなくて。この子が今日から入ってくる新人です。うん。元気があっていいね。うん。」


このハイテンションに圧倒され先程までの威勢は吹き飛んだようで乾いた声で新人君を紹介する。


「はい!元気しか取り柄がありませんが頑張ります!よろしくお願いします!」

「よくもやってくれましたね…その唯一の取り柄も短所のようです。まあ…不本意ではありますが、これからよろしくお願いします。」

「じゃあダイアン君、頼んだよ。さあ!今日は仲間が一人増えためでたい日だ!気を取り直して始業といこうか!」


あっけらかんとした即妙院浅葱

皮肉っぽくそれを受け入れる大安宮詩音

気を取り直し陽気な院長に戻った神代楠雄


風邪をひきそうな程の対比と共に今日の業務の開始が告げられた。

ファンタジー医療小説となります。

拙い文章と高校範囲すら怪しい科学知識と共にお送りさせていただきます。どうか読んでいただけたら幸いです。

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