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実家に帰りました。

お父さんがお母さんになりました。


何を言っているかわからないと思います、私もそう思います。


お父さんは中小企業に勤める50代のサラリーマンです。


特殊という言葉とは程遠い人生を歩んできた普通の人間です。


普通が故に安心感があり、普通に素敵。


そんなお父さんが大好きですし、お母さんもそこに惹かれたんだと思います。

私は既に実家を出ていたので最近は会えていませんでしたが、定期的にラインでやり取りをしていました。


<久しぶりにそっちかえるよ、何かお土産いる?


という私の文面に


<お疲れ様です、楽しみにしていますね☺️


お父さんは特にほしいものはないのでお母さんの好き❤️なケーキを買って来てあげてください


と返す普通のおじさんだったはずなのです。


飲んでいたコップが手から滑り落ちました。

コーヒーが机にぶち撒けられ真っ黒ですがそんな事はどうでもいいです。


勢いよく扉を開けた人物は私のよく知らないお父さんでした。

背格好が変わっているわけではないですが、ラウンジで男性をもてなしている女性が着るような服を身に纏い、豪華な赤いつけ爪が目を惹きます。




そんな格好の上にお父さんの顔がついている事実はただただ私を困惑させました。

こう言う時って案外変なところに思考がいくもので、

『ちゃんと足の毛剃ってるんだぁ』などと思ってしまいました。




「おかえり、よく帰って来たな娘よ。」


お父さんはいつもより芝居がかった調子で私に話しかけて来ました。




この状況に関しては特に触れないんだ、


そう当惑しながらできるだけいつも通りを意識して返答しました。



「...た、ただいま。お父さん、げ元気にしてた?」


「息災よ、我が娘よ。」




格好だけではなく語彙も語尾もおかしくなってしまったらしいです。




「言われてたケーキ買ってきたよ、冷蔵庫に入ってるから食べてね。お父さんの分のモンブランもあるよ。」


「私はモンブランが好きだ、ありがとう。」

「うん、知ってるよ。」


会話が途切れてしまいました。


本来は別に途切れたとしても距離感的に気まずいなんて感情は湧かないものですが、今は全く掴めていません。



「娘よ、話があります。」


「でしょうとも。」


全面的に同意を示します。



「明後日はお母さんの誕生日だがプレゼントをまだ買えていないんだ、何がいいだろうか。」


「そっち!?」



思わず全力で突っ込んでしまいました。

娘の初めての反応に驚いているようですが、知ったことではありません。



「ごめん、回りくどかったな。咲の言いたい事は分かってる。」

「それなら良かったです。」




私の全力の返答に対してお父さんは頭を掻きながら答えます、真っ赤なつけ爪が髪の薄いおじさんの


頭に当てられる光景を見る事は今後ないと思います。


「驚かないで聞いてほしい、お母さんなんだが-



そう言い切るより前に先ほどお父さんが開いた扉の向こうから懐かしい声が聞こえて来ました。


「あら、咲ちゃん!!もう帰ってたのね、だったらメールしてくれればいいのにー。」


「ごめんお母さん、メールわすれて...?


私は先ほどのお父さん(仮)で人生一の衝撃を受けたのですがたった今更新されました。



お母さんのような内容を喋った声の主ですが少年の姿をしていました。

もっといえば現在は東京で仕事をしている弟の幼少期の姿そのものでした。


は?


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