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21.確率

2023年7月1日(月)17:30

聖帝十字病院の血液内科では魚念医師が空子の来院を待っていた。

昨日と同じよう要領で総合受付で受付票を貰い、血液内科の受付に行って受付票を提出するとすぐに診察室へ招かれた。

中では魚念医師が複雑な表情でパソコンの画面のデータを眺めている。

「クー先輩。あなたはいったい。宙子さんの何なのですか?」

「何って言われても昨日の夜に話した通りや」

「ですが、HLAはおろかDNAレベルまでほぼ同一人物ですよ。こんなことは確率的にあり得ない」

「そっか、やっぱり科学的に検証してもそうなるんやな」

空子は魚念からデータをもとに説明を受けるが驚く様子はなく当然の如く受け入れている。

「ですが、HLAが移植できる最低の一致であっても確率は数万分の一、全く同じなんて数十万分の一ですよ。ましてや遺伝子レベルで同じなんて一卵性の双子でもない限りありえないです」

「まあ、そうやろうなぁ」

「しかも、そんな会ったこともない他人でこんなに一致する確率なんて、どうやっても考えられないです」

「でも、現実として起こっているんやろ?」

「はい。。。でも、僕たち医者の仕事は確率の上で成り立っています。こんな奇跡みたいなことがこの世の中で起こるなんて・・・」

「そうやなぁ。奇跡としか言いようがないわなぁ」

「奇跡とか偶然なんて信じていたら医者の仕事が成り立ちません。だからこうやってデータを見ても信じられないんです。たとえ、双子並みに同じ人間がこの世に居たとしても、こうやって出会う確率なんて・・・」

「そんでもな、魚念君。どうして宙子さんはこの病院に入院している?魚念君はどうしてこの病院に勤務している?そしてどうしてあたしと知り合いだった?昨日だってどうしてあんなに早く帰れた?おそらく多忙の魚念君には19時半に帰れる日なんて滅多にないやろ?そもそもが出来過ぎで繋がりすぎて居るんや。その繋がりの歯車の中には魚念君も入っとる。それはどんな確立や?」

その言葉に魚念はハッとした。

「そうですね。おそらく僕もあり得ない確率の歯車の一つです」

「それで移植は可能なんか?」

「もちろんです、クー先輩は宇野 宙子さんにとって、これ以上ない提供者です」

「そか」

「ここからは宇野 宙子さんの主治医としてのお願いになります。青野 空子さんドナーとして宇野 宙子さんを救ってください。知っての通り骨髄移植はドナーになる提供者の方が移植を受ける患者よりもリスクは高いです。それでも受けてくださいますか?」

「当然や、そのために来た」

「ありがとうございます。それでは同意書を用意しますのでよく読んでサインをお願いします」

「一つ聞いてええか?厚労省のサイトには骨髄移植のドナーになって不慮の事故は日本では起こっていないって書いてあるけどホンマか?」

「自分の知る限りでは本当です」

「知らない所ではわからないってことやな?」

「それじゃ、もう一つ聞くけど、魚念君の施術で何か起こったことはあるか?」

「それはありません。100パーセント成功しています」

「そっか、なら安心やな。その確率は信じるわ。信頼して全て任せるよ。【ひげ先生】」

空子は笑顔を浮かべるとペンをとって同意書にサインした。


同意書を受け取ると魚念が

「可能であれば今から入院していただけますか?出来るだけ万全のコンディションで手術をしたいので」

「分かった。ホテルの部屋に荷物はまとめてある。ここに運んでくれるか?スーツケース一つや」

「分かりました。こちらで手配をしておきます。チェックアウトの手続きと昨日の宿泊費は病院側でやれせてもらいます」

「そっか、何から何まですまんな」

「こちらこそ」


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