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18.民宿いごっ荘 第六夜

空子が一人でいごっ荘に戻ってきたのは18時になった頃だ。

途中からまた激しい雨が降りだしていたが、悪天候になる前には飛行機は飛んだはずだ。

平日木曜日、今日の宿泊は空子一人だ。

明日からは他の訪れるらしいが、今日は一人だ。

巧司がいた昨日と一昨日と違って風呂の時間も決められていない。

『ゆっくり、風呂にでも入ろう』

着替えをもって風呂場に着くと服を脱いで体を洗って湯船に浸かる。

緊張が少しだけほぐれた。今朝の早起きも手伝ってコクリコクリと舟を漕ぎだす。

何度か意識が途切れたが、夢を見ることもなく宙子も現れない。。。

ただ、昼間のあの時、竿が折れた瞬間の

「巧司をお願い」

その言葉だけが何度も何度も頭の中でリフレインしている。

でも、何度目かのリフレインの後、頭の中の言葉を払いのけた。

『何がお願いや!』

『お願いなんてされてやらん!』

「よし!」

意思は決まった。

「明日あたしも東京に行く」


風呂から上がると美和子のいる居室を訪ねる。

「美和子さん、悪いんやけど。。。」

「明日でチェックアウトするんでしょ?」

「何でわかるんや?」

「だから、分かっちゃうのよ。おねえさんにはね」

「すまんなあ」

「良いわよ、明日からは他のお客さんも来るしね。それじゃ、今晩はパーッとやりましょ」

「いや、今晩は酒は飲まん。いや、1週間くらい酒は飲めなくなるかな」

「えー?クーちゃんがお酒を飲まないなんて。。。おねえさんにも、分かんないことはあるものね」

美和子は微笑んでいる。

「そうやな、どんなことでも分かったら、それこそ本物の魔女や」

空子も笑い返した。


その晩はカフェで普通の晩御飯を用意してくれた。

お酒を飲まずに食べる普通のご飯はいつもの宴よりも繊細な味付けで口にするもの全て感動があった。

「ごちそうさま」

晩御飯を食べ終わると美和子が声を掛ける。

「食後のコーヒーはいかが?」

「いや、今日は寝酒も飲んでいないのでカフェインはやめとくわ」

空子が返すと

「それじゃほうじ茶でも入れるわね」

美和子との何気ない会話も気ごころを共有するようで心地がいい。


「巧司君無事に着いたかな?」

「とっくに着いているやろうな」


夕方振り出した激しい雨は今のところやむ気配はない。

その後、旗野から連絡があって仁淀川も大雨でダムも放水をして大増水になったらしい。

川の地形も変わりそうな大増水で妖竿は「跡形もなく砕け散っただろう」ということだった。



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