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16.民宿いごっ荘 第五夜

18時半、空子は中途半端な時間を持て余して囲炉裏端にやってきた。

囲炉裏端では勇夫が火起こしている。

「大将、まだ準備中のところ悪いんやけどなんか飲ましてー」

勇夫は空子の方を向くと親指を立てて、囲炉裏端に併設された厨房の中に入って行った。


流石に起こしたばかりで炎が上がる炭火の近くに座るのは暑い。

少し離れたテーブルの席に腰を下ろすと、勇夫が冷えた瓶ビールと小鉢に入ったイカの塩辛を出してくれ、空子にグラスを渡すと瓶ビールの栓を抜いて注いでくれた。

空子はグラスのビールを一気に煽ると

「ぷはー」

と息を吐いた。

「やっぱ、この瞬間が世の中で一番贅沢な時間やな」

そう言うと今度は手酌でグラスを満たす。

昼間は知らずのうちにだいぶ汗をかいていたようで塩辛の塩分を身体が欲している。

もっとも、この囲炉裏端に来るときは肴が楽しみなあまり、水分補給を我慢しているので大概は脱水症状で水分も塩分もミネラルも身体は欲しがっている状態だ。

乾いた身体に冷たい瓶ビールは凄く美味しいが、まだみんなが揃う前なので加減して飲むことにする。


18:50少し早いが巧司と旗野も現れる。

旗野は昨日の昼間に見せてくれたノートパソコンと巧司のニコンD6に負けない大きさのカメラを抱えている。

空子が興味を示す。

「その大きいカメラは?」

「そう、急くでない、こいつの話は今日のとっておきの酒の肴じゃからのう。皆がそろって少し口が潤ってからじゃ」

「そんなことより今日も写真を撮ってきたのじゃろう?ちょっと見せてみい」

「はい」

巧司はD6からメモリを抜きとると旗野に渡した。

旗野は受け取ったメモリをノートパソコンのリーダーで読み取ると今日撮った写真を次々に画面に映し出した。

朝の写真からページをめくるように写真を眺める。

「かずら橋に行って来たのか?ええところじゃっろう?」

「はい、凄くきれいでいい所でした。でも、クーさんは吊り橋が苦手だったみたいで」

「なんじゃ?せっかく行って渡らんかったのか?ん?こっちはかずら橋の上からの写真じゃのう」

「クーさん頑張って渡ってくれました」

「そうか、そうか、そいつは役得じゃったのう?」

「役得?ですか?」

「うむ、おそらくは「きゃー」とかって抱き着かれたじゃろ?」

空子と巧司は思い出して顔が赤らんだ。

「まあ、そんなもんじゃろうて。そんなことはジャーナリストじゃなくても簡単に想像がつくわい」

PCのモニタに表示された画像を次から次へと進めていく

「なんじゃ?今度は海か?ここは恋人の聖地じゃのう。恋人の聖地まで行って2ショットの写真はないのか?そういう意味では修行が足らんのう」

巧司は下を向いている。

「それにしても、こんな短期間にこれだけの写真が撮れるようになるもんかのう。嬢ちゃんの写真はもとより他の写真もちゃんとピントが定まっておる。巧司が撮りたいと思ったものに心のピントがあっておる」

「ありがとうございます。全部旗じいさんから教えてもらったおかげです」

「わしはなんもしとらん。ちょっと口をはさんだだけじゃ」

「いいえ、でもその口出しがなかったら今頃何も考えない写真を撮っていたと思います」

「そう言ってもらえると嬉しいがのう」


「そしたら昨日レクチャーできなかった現像方法だけ教えて終了にするかのう」

「メモリーの中にNEFって拡張子の写真があるじゃろ?ニコンの場合はこいつがRAWデータ。つまりは生のデータじゃの。一般的にはJPEGって形式の写真で出力するのじゃ。JPEGはカメラが自身で現像して見やすくした画像データじゃ。この現像は写真家の手で行う事も出来るんじゃな。こうやってソフトで生データ表示すると何となく味気ないじゃろ?そしたらこの辺のパラメータを変えることによって写真家のイメージに合う味付けができるのじゃ。恋人の聖地での嬢ちゃんの写真でやってみると。ここをこうしてとかこうして。。。どうじゃ?」

JEPGの写真と比べて見せてくれると旗野が現像した写真は何故かおとなしくギラギラしていない。空子の持っているキレイさがそのまま表現されているように見える。

「なんか、自然ですね」

「そうじゃろ?一般的にはくっきりはっきりの写真の方が好まれるからのう、デジタルカメラにはそういう味付けになるようなプログラムが入っておる」

「ありがとうございます。知らない事ばかりですね。こんな大きなカメラを持ち歩いているのにお恥ずかしい」

「知らなくても生活には何の支障もない事じゃ。じゃが、こういう事も出来るという事を知識として知っておくことは悪いことではないじゃろ?知識は持っていてもプラスになることは少ないかもしれんが、マイナスになることは決してないでな。まあ、巧司のこの旅が終わって家に帰った頃に思い出を振り返ることがあったらやってみればいいじゃろ」

「はい、落ち着いたらやってみます」


「どれ、わしも飲みたい、美和子さん酒をくれんかのう」

「はいはい、今日はクーちゃんと巧司君が買ってきてくれた最高のがあるわよ」

「ほう、楽しみじゃな」

「巧司君はどうする?」

「僕も同じのが飲みたいです」

「えー?巧司やめといたほうがええんちゃうか?昨日の今日やぞ」

「あら、巧司君だって味見くらいしたいわよね。いいじゃないの人数分グラス持ってくわね」

「美和子はん、ちゃっかり自分たちも飲むつもりやな?」

「いいでしょ?珍しいお酒ですもの。ほら、大将も手を止めて乾杯だけでもしましょう」

「分かった。そうやね」

美和子は持ってきた一升瓶を巧司に手渡すと

「師匠に注いであげなさい」

「はい」

巧司は一升瓶を受け取ると封を開け、まずは旗野の持つグラスに注いだ。

続いて、勇夫、美和子、そして空子のグラスに酒を注いでいく。

すると「注いでやるから瓶をよこせ」旗野はそう言って巧司が手にしていた一升瓶を奪い取った。

「ほう【心】じゃな天鷹酒造はわしの地元の酒蔵じゃ。良く手に入れたもんじゃのう。確かにわしには最高の酒じゃ、ありがとう」

そう言うと巧司の手に持ったグラスに一升瓶を傾けた。


「そしたら、旗じい乾杯の音頭取って」

「乾杯の音頭っていったい何に乾杯するんじゃ?」

「巧司君の送別会でしょ」

「送別会って言っても2・3日居っただけじゃろ」

「全く年長者がこれじゃ・・・クーちゃん代わりにどうぞ」

「そんな急に振らえれてもなあ」

「なんでもいいから早くするのじゃ、わしゃ早く飲みたい」

「分かった。それじゃ、前途ある巧司の未来を祈念して乾杯」

「かんぱーい」


「うーん。美味い酒じゃのう。那珂川で親父や領と鮎釣りをしていた頃を思い出すわい」

旗野は目を細めてしみじみと酒を眺めている。


空子は巧司に向かって

「なあ、巧司もう行くんか?もう少しゆっくりすりゃええのに。旗じいから教わることもまだまだいっぱいあろう?」

「そうですね。旗じいさんにはカメラの事や写真の事を、もっといろいろ教えて頂きたいです。でも。。。」

「でも?」

「でも、やっぱり彼女からの、、、宙子からのミッションを片付けて早く帰ってやろうと思います。実は、宙子は白血病の診断を受けています。自分が高知に来る前に入院しました。まだ、生活に支障となるような重い症状はありませんが、感染症のリスクは小さいに越したことがないそうです。だから、無菌病棟に移る前に仁淀川の青の写真を届けたいんです」

看護師を生業とする空子には何となく状況が理解できた。

「そっか」

でも、状況が理解できるだけに空子にはそれ以上の言葉を掛けることは出来なくなった。


「大丈夫じゃ、すぐ治る」

巧司の話に一同が重い空気に包まれた中で旗野がつぶやいた。


「旗じい、慰めのつもりかもしれんけど、軽々しく言ったらあかんやろ」

空子は旗野を窘めたが旗野は言葉を続ける。

「大丈夫じゃ、お前さんからは死の影を感じん」

そう言うと、旗野が持ってきたカメラを構えて巧司の方に向けた。

「うむ、やっぱりそういう影は見えん」

「旗じい!こんな話をしているときに軽口はあかんって・・・それにこんな神妙な話をする巧司の顔にカメラなんて向けてはあかんやろ!」

「別にわしは軽口をたたいている訳でも慰めを言っているわけでもないわい。カメラを向けるのはいつだって遊びじゃない。真剣に向かい合ってファインダを覗いておる。たとえどんな悲劇であったとしてもカメラを向けるのがプロの戦場カメラマンじゃ」

旗野はコップに入った酒を煽ると一升瓶を握って手酌で注ぎ、口にしながら語りだした。

「今日はその話を聞くためにみんな集まったんじゃろ?」

「少し長くなるが昔ばなしに付き合ってもらうぞ」


「昔、まだジャーナリストとしては駆け出しだった頃の話じゃ」

「戦場カメラマンと言っても戦場へのパスポートを持っているわけじゃないのでな、駆け出しの自分には実際に戦争中の国や地域に入る許可は下りんかった」

「だから、先ずはきな臭い国に目ぼしを着けて行っては取材活動を行っていたのじゃな」

「きな臭いと言っても、そっちこっちでドンパチやっとるわけじゃないでな。一見は平和じゃったよ」

「そんでもドンパチやってないからって取材をしないわけにはいかんからな、それなりに発言権のある要人に取材を申し込んでは話を聞いて、聞いた話で原稿を書いて過ごして居ったのじゃ、そうしているうちには気を許せる者も出て来てな。ある若い政治家とプライベートでも食事くらいはできる関係性を築くことができた」

「今から30年も前の話じゃ、わしも若かったし若い者同士で気が合ったのじゃな、そいつも古い権力や仕来たりに苦しんでおったしのう。わしも若さだけではどうにもならん壁にぶち当たっておった」


「そんなある日、そいつから連絡があってのう。娘の誕生日パーティをやるから出席してくれと」

「わしは取材半分、プライベートの息抜き半分の気持ちで参加することにしたんじゃ」

「5歳を迎える娘は活発で本当にかわいかった」

「同年代の子供達や大人たちらかたくさんのプレゼントをもらってはしゃいでおった」

「そして数刻が過ぎてパーティの盛り上がりが絶頂と迎えた頃に大きなケーキが運び込まれた」

「会場に居たみんなで娘の誕生日を祝う歌が歌われ娘は本当に嬉しそうじゃった」

「歌が終わり娘と母親がナイフをもってケーキに入刀したときじゃ」

「ケーキが爆発した」

「その部屋自体が吹き飛ぶほどの火薬が仕込まれていた」

「もちろん、一番近くにいた娘も母親も無事では済まされん」

「そんな母娘の姿を写真に撮ったものがいた。それがワシじゃ」

「もっとも、写真に撮った記憶なんかは残ってもいんじゃがな・・・」

「わしもその時近くに居った。爆発で宙に舞い激しく叩きつけられ激痛を感じたがその後の記憶はない」

「ただ、穏やかに笑みを浮かべる娘の顔と泣き叫ぶ母親の姿を見たような気がするだけじゃ」

「じゃが、記憶はほとんどないのに、記録にはしっかりと残っておった」

「そう、写真じゃ。無意識じゃったが、その母娘に向けてシャッターを切っておったのじゃ」


「後にわしが気が付いたのは病院のベッドの上じゃった。二日も経って居ったわ」

「じゃが、その二日のうちに状況は一変しておった」

「わしの撮った写真は現像され世界中に飛び交っていた。そしてその写真の中の悲劇は大衆の心を大きく動かしたのじゃ。若く力のある政治化を狙った爆弾テロは国内世論を二分して内戦に突入してもおかしくない状況じゃったが、その写真は内戦へと突入する前に暴力の愚かさを皆に伝えた。結果、内戦は回避されもっと大きな悲劇は生まれずに済んだのじゃ」

「わしはまだ若かったし、少女の死より内戦にならなかった事を戦争にならなかった事を良しとした。小の虫を殺して大の虫を助ける。いい言葉だとは思わんが真理だと思っておった。真理を招いた。それがジャーナリズムの力じゃと」

「その写真はその年の名誉ある賞も受賞して、わしは戦争を止めた英雄としてみんなからはミラクルフラッグと呼ばれ世界中で担がれ有頂天じゃった。フラッグは旗野の旗から名付けられたようだが誰が付けたかもわからん」

「じゃが、その後はミラクルフラッグの名は、どんな戦場でもジャーナリストとしてカメラマンとして受け入れてもらえるパスポートとなった。ミラクルフラッグの名前があればどこの戦場からも迎え入れられたのじゃ」

「そんな戦場を渡り歩く日々を過ごしていたがある時ファインダーの向こうの異変に気付いた。カメラのファインダーを覗いてみたときに黒いモヤのようなものを背負っておる人間がおる。最初はなんだかわからなかった、カメラの故障かとも思ったが、そのままシャッターを切っても写真には写らないことも分かった」

「そしてある時、黒いモヤを背負った人間が死んだ。その後もまた同じように黒いモヤを背負った人間が死んだ」

「それでモヤの掛かった人間を密着で取材してみた。そしたらその人間も死んだのじゃ、その時の取材結果はスクープとなり、世界中を掛けた」

「どうやら、”この”カメラのファインダー越しに黒いモヤが見えた人間は長くないらしい。その後もスクープを連発した。当り前じゃな、戦場で死ぬ人間がわかるのじゃスクープを撮る事なんて簡単なことじゃった。わしはこのカメラをジャーナリストとしての魔法のアイテムを手に入れたと思って浮かれたわ」

「その魔法のアイテムを使っていくと、どうやら死ぬ人間だけではなく、死ぬ人間の近しい人にもモヤが出ていることが分かった。近しい者からでも小さなモヤが見える。街でファインダーを覗いて居れば近いうちに死ぬ人間の近しい者が見つかる。その後を追えばスクープじゃ」

「じゃがな、そのうちには誰もわしの取材を受けてはくれなくなった。当たり前じゃのう、わしから取材を受けると死ぬんじゃからな」

「人々はわしの事を死神と呼ぶようになった。ミラクルフラッグはデスフラッグとなったのじゃ」

「最近はドラマなんかでも死亡フラグとか言ったりするじゃろ?まさしく死亡フラグじゃな」

「そして、わからなくなった。これまでの自分の行動は正しかったのか?。最初は真実を伝えたいと思って居っただけじゃったのだがな。気が付くとただ人の死を売りものにしていただけではないか?」

「そう思ったときわしは戦場から逃げ出した。逃げ出して日本に帰り途方に暮れた」

「日本に帰って気てしばらくは何もやる気にもならなかった。どうしていいかもわからなかった。そんなある日ふらふらと故郷へ帰ってみた。夏の暑い日でな何の気なしに川に行ってみると鮎釣り師が川に大勢入っておった」

「憧れだった【領】は既にいなくなって居ったが、【領】のオトリ屋はあった」

「領のオトリ屋の前で那珂川の釣り人を見ていると、汚れる前の自分に戻った気がして少しだけ気が楽になった」

「川を眺めていると心の汚れが洗い流される気がして、いろんな川を渡り歩いて旅をした」

「そして行きついたのが仁淀の青じゃった」

「わしの弱った心は仁淀の青を見ているうちに徐々に癒されて行った。そんな癒しがどこから来るのか分からずに久しぶりにカメラのファインダーで覗いてみた。すると何もなかった。戦場で見ていたモヤはもちろん。小さなモヤの影すら見えない。ただどこまでも透き通って青かった」

「その頃、ただ透き通った青をどこまでも追い求めて撮ったのがあの写真集じゃ」

「仁淀の青は弱った心には効果抜群じゃ、おそらく巧司の彼女も仁淀の青の写真から感じるものがあったのじゃろうて。。。」

「さて、これがわしの戦場カメラマンとしての履歴じゃ」

「このデスフラッグが巧司の彼女は死なんと言っておるのじゃ。だから安心しろ」

旗野はにっこりと笑って見せた。


旗野の笑顔に一同は少しほっとした。

何も状況は変わっていないはずなのになぜか安心した。


「わしは腹が減ったぞ、酒ばかり飲んでおるから回りが早くてかなわん。なんか食わせい」

「そうやな、巧司の送別会やったな。パアッてやらんとな」

巧司の顔にも笑みが戻る

「そうですね。大丈夫ですよね。僕も飲みたくなりました。もういっぱいください」

「あら、巧司君はもう駄目よ。こっちにしなさい。ハイボール薄く作っといたから」

美和子はジョッキをわたした。

『美和子さんはホンマに優しいな。タイミングも絶妙や。見習いたいところがいっぱいある』


「巧司君これ丁度食べちょきやき食べてみて」

勇夫があまごと鮎の塩焼きを差し出す。

「ここに来たらこりゃ絶対に食べちょかんといけんぞ」


「あれ?そういえばアユの塩焼き。今日はどこで仕入れたんや?」

「ごめん、クーちゃんのオトリ鮎を拝借した」

「えー?明日は養殖スタートやなぁ」

「大丈夫じゃ、末永を使えばそれくらいが丁度いいハンデじゃ」

「そうやな、まあ、巧司に食べてもらうためやしなぁ」

「ありがとうございます。クーさんの釣った鮎なんですね?いただきます」


「美味しい!え?これって?」

「美味いやろ、それは生きてる天然の鮎にそのまま串打って焼いたもんやからな、鮎釣り師しか食えん一品や」

「何を偉そうに言っておるか、嬢ちゃんも今回の旅で初めて食うたんじゃろうが!」

「はは、巧司の前でちょっと知った被って見たかったんや」

「ええー!?生きたままの魚に串を打つんですか?」

「そうや、そうせんとその味は出ん。アメゴも格別やき食べてみ」


「今日は特別、すぐ焼けるお肉も出すからね。巧司君美味しいものいっぱい食べてね」

美和子が言うと巧司は涙ぐんで

「ありがとうございます。たかだか2泊しただけなのにこんなに良くしてもらって」

「巧司、何泣いとるん?まだ早かろう」

「そうですね。。。」

「あかん、巧司は実は泣き上戸やな?」

「そうかもしれないです」

そう言ってより一層泣き出す巧司を見て他のみんなは笑ってしまう。


「ところで巧司よ、明日は何時ごろ出発するのじゃ?仁淀を撮りに行くんじゃろ?わしが案内してやろう」

「本当ですか?ありがとうございます。是非お願いします」

「うむ、実は今は仁淀ブルーはシーズンオフでのう、それほどキレイなブルーは見られんのじゃ」

「ええ?そうなんですか?」

「仁淀の青は秋から冬に掛けてがもっとも映えるでのう。梅雨時期の今は一番のシーズンオフと言っても過言ではないのじゃ、じゃが、わしに任せえ。オンシーズンの最高の青とは言えんがそれなりの深い青に連れて行ってやるでのう」

「ありがとうございます。何から何まで本当にありがとうございます」

「嬢ちゃんもどうじゃ?写真を撮るポイントは険しいで連れて行ってはやれんが、鮎釣りのポイントなら案内できるぞ」

「ホンマか?是非連れて行ってもらいたいわ」

「うむ、毎日毎日吉野川でばかり竿をだしても詰まらなかろう」

「やった、旗じい約束やぞ。何時に出発や?」

「朝の光加減がいいんでのう。ちいと早いが朝の5時に出発でどうじゃ?」

「オーケーや5時やな」

「巧司も起きれるか?」

「はい、頑張ります」

「よし、そしたら今日はわしもここに泊まる」と言ってその場で眠ってしまうと自然とお開きになった。

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