プロローグ 戦場カメラマン
女性鮎釣り師ブロガーKUUさんの自主製作映画「鮎、虹の空へ」の原作小説です。
199X年12月 中東某国
カシャ、ジー、カシャ、ジー、カシャ、ジー
高級カメラの単調なシャッターとフィルムを巻くリズムは三十数回繰り返されると少し長めのジーーーという音の後に静かになった。
その後、女性の泣き叫ぶ声を聴いたが、徐々に薄れて何も聞こえなくなった。
いや、何も感じなくなった。
意識が途切れて行くのをスローモーションのように認識しながらも何も出来ずに何も感じなくなった。
気が付いたときはベッドの上だった。
最初に見たものはただの白い天井。
ここはどこだろう?
なぜ、こんなところに寝かされていたのだろう?
ぼんやりと考えながら、無意識に体を起こそうとしたとき、体中から激痛が走った。
そうか
あの時。。。
身体の力を抜き起き上がるのをあきらめ頭の中を整理する。
最後の記憶は
「楽しい空間」「少女の誕生日を祝う人々」「突然の閃光」「轟音」「宙を舞う身体」「激痛」「目の前の悲劇」
悲劇?
悲劇は確かにそこにあった。
思い出せない。
何かとても悲しい事が起こっていた。
何か
とても悲しい悲劇だったはずなのに何も思い出せなかった。