【バレンタインSS】みんなだいすき!
バレンタイン滑り混みSS
八歳の頃のお話。
チョコレート。それは魅惑の甘味。
チョコレートは健康にいい。チョコレートに含まれる成分はたくさんあるけれど、中でも注目なのはカカオポリフェノール。血圧低下や老化防止などの効果が期待できる。
カカオポリフェノールはカカオ豆に含まれるポリフェノールのこと。
カカオポリフェノールを摂取することで血管が広がり、血圧を低下させることができる。
これには動脈硬化を防ぐ働きがある。
この働きは、老化も防ぐ。
カカオポリフェノールの抗酸化作用が活性酸素の働きを抑えてお肌のトラブルを防いでくれる。
ちなみのここで言うお肌のトラブルは「シミ・シワ」の事で、食べ過ぎるとニキビの元になる。高カロリーなので肥満にも繋がる。調整がとっても難しい。
身体にいいけど食べ過ぎてはいけない。
とっても美味しいけど食べ過ぎてはいけない。
食べ過ぎてはいけないけれど。
今日は許されると思うの!
「ん~! でりしゃすです~!!」
目を輝かせながら本日のおやつ、一粒サイズのチョコレートを摘まんだ。
まるで宝石箱のようなチョコレートの山。一粒一粒形が異なり、味も異なる。
ホワイトチョコレートにイチゴチョコレート。アーモンドやカシューナッツ。ピスタチオに抹茶味。
素晴らしい。前世日本で食べたチョコレートに近いまろやかさ。
脂っこくなく、すっと溶ける口溶け。
こんなのいくらでも食べてしまえる。
食べ過ぎてはいけないとわかっていても、ついつい数を食べてしまうのは中毒性を感じるほど美味しいからだ。
「とろける~」
「ノーチェが溶けてる…」
「思わず溶けるおいしさなの…」
遊びに来ていたベスティもチョコを摘まんでいるが、ノーチェほどの反応は見せない。彼はイチゴ味のチョコレートを中心に摘まんでは小さな口をもごもご動かしている。
「美味しいけど、なんで今日はこんなにチョコだらけなんだ?」
ベスティが遊びに来たとき、ノーチェは喜び勇んでおやつを選ぶ。だから出てくるおやつは凝りに凝った一皿になる。
フルーツましましなパンケーキだったり、巨大なプリンがどーんと出てきたり、層ごとにスポンジの味が違うケーキだったり。
一粒サイズのチョコは多種多様で彩り豊かだが、チョコだけがこんなに並んだことはない。
ベスティの言葉にノーチェはきょとんとしたが、成る程知らないのねと頷いた。
「あのね、今日はバレンタインなの」
「ばれんたいん?」
絶対この世界、グルメ無双が終わったあとの世界だと思うの。
映えが中途半端だから志半ばの可能性もあるけれど、無双したときと今で技術力が違った可能性もあるけど、前世でお菓子会社が商法に利用したバレンタインデーもしっかりあるわけだし。
「大切な人にありがとうのチョコを渡す日なの」
「たいせつなひと」
「ありがとうと大好きを込めてチョコを渡すのよ」
「う、あ、おれ、用意してない」
「絶対チョコを渡さないといけない日じゃないのよ?」
「でもおれ、ノーチェだいすきだから」
「わあい」
ベスティからの嬉しい言葉にノーチェはとびきりの笑顔になる。ベスティは頬を染めながら、手にしたチョコをどうしたものかと視線をうろつかせている。
よしきた。ならこうしよう。
ノーチェはしゅぴっと短い腕を伸ばし、主張した。
「いっしょにチョコをデコるのよ!」
ノーチェは不器用なので料理はできない。しかしデコレーションならできる。
チョコペンとデコレーション菓子とビスケットを用意して貰う。
小さな二人はお互いにチョコをプレゼントするために、急遽プチクッキング教室を開催した。
ビスケットをチョコペンでデコレーション。文字を書いたり絵を描いたり。生クリームで飾ってみたり、カットされた果物を乗せてみたり。
小さな二人は落書き帳に絵を描くように、きゃっきゃとチョコペンで思い思いのデコレーションをした。
ノーチェはチョコペンで「べすてぃ♡」と書いたのと、生クリームとカットされたイチゴでお花を作ったもの。それとチョコペンの中身を絞り出す勢いで今世では伝説の生き物であるペンギンを描いた。
ベスティは文字は書かず、イチゴチョコでたくさんハートを描いた。半分にカットした果物と組み合わせて、こっちでもたくさんハートを作る。とにかくたくさんハートを生み出しそれをノーチェに渡した。
二人とも大満足で、小動物のようにお互いの「大好き」を頬張った。
「ベスティ、だいすきっ!」
「ノーチェ、だいすきっ」
小さい二人がまろい頬を染めながら笑い合う様子は、見守る使用人達の心をかなり強烈に癒した。
「ノーチェがチョコで大好きって…! ありがとうって…!」
「よかったわねあなた。私にも大好きって書いてくれたの。嬉しいわぁ」
「自分でデコレーションしてプレゼント…!? ノーチェ、どうしてそのアイデアを事前に教えてくれなかったの…!」
「あれぇ?」
「来年は…そのアイデアを頂くわ! いい!?」
「いいのよー」
子爵家は相変わらずとっても平和だった。
駆け足で仕上げましたバレンタインのお話。
間に合った! (ノ´∀`)ノ




