あたしの二十四節気【浦川 日歌里 二十四節気詩集】

あたしの悪い虫【啓蟄】

　虫は嫌いだってば！

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　あたしはほんと懲(こ)りないやつだ

　悲惨なオチのあと 暗転するなか まるい枠で残されて

　とほほって表情がうつされるんだけど

　懲(こ)りずにまた すけべごころをだして

　よけいなことをしようとする

　きみこになって あやうきにちかよらずに

　御局(おつぼね)さまコースをたどれば

　こんな痛い目には もう会わずに済むことだろう

　だけど あたしのなかには悪い虫がいて

　そいつがうずうずしだす

　危険な恋や 怪しい誘い おいしい悪だくみに

　まきこまれるふりをして むしろ あたしのほうから

　標高3メートルの飛び込み台にのぼってくんだ

　なんだかんだで 痛い目を見て

　とほほって結末におわるのは

　わかりきっててもどうにもならないけど

　やっぱり お願いしたい

　だれか どうにかしてちょうだい！

　とはいえ スプレーをしゅしゅっとやって

　この虫を すっかり退治しちゃったら

　どのみち御局(おつぼね)さまコースだとしても

　あたしは絶望的につまんないやつになるはずだ

　それはきっと 痛い目を見て

　とほほって結末におわるより

　ずっと悲惨なオチのはずだから

　あたしはあたしの胸に

　深くて 暗くて あったかい穴を掘って

　ひとまず 悪い虫を眠らせておくことにしよう

　どうかこのまま目を覚さないでちょうだい

　あたしを無事に 御局(おつぼね)さまにならせてちょうだいって

　だれにともなく 祈りながら

　あたしはあたしの胸に

　深くて 暗くて あったかい穴を掘るんだ

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　私のなかにも悪い虫。