あたしの二十四節気【浦川 日歌里 二十四節気詩集】

真っ白くなったパパの車とあたしのおでかけ【霜降】

　フロントガラスが凍ると前が見えません。

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　冬も近づいた寒い朝 早く

　きょうはパパの車でおでかけに行く

　眠い目をこすって お着替えして

　朝ごはんをちゃんと食べたら

　踵(かかと)を踏まずに靴をはくよ

　おおきな声で いってきます

　駐車場にしてるお庭へ行こう

　そんでもって

　パパの自慢の真っ赤なかっこいい車に

　乗りこもうとしたけど

　真っ赤なはずのパパの車は

　凍りついたみたいに真っ白になってた

　あたしはママの白粉(おしろい)で こっそり遊んでたときに

　顔じゅう粉だらけになっちゃったことを思い出して

　笑っちゃったけど

　パパはあんまり面白そうじゃなかったな

　屋根のないお庭にそのまま駐車するんじゃなくて

　ここに秘密基地みたいなガレージがあったら

　こんなことにはならなかっただろうし

　なにより じぶんの秘密基地が欲しいんだろうね

　いつか お庭にガレージを建てるぞって

　パパはやたら はりきりはじめてさ

　パパ！　いいから とっとと おでかけしようよ

　あたしがせっついて ふたりで車に乗りこむと

　真っ白がとけるまでエンジンをかけながら

　カーステレオから流れるアニメの歌を

　しばらく パパといっしょに歌ってた

　真っ白がとけきって 白粉(おしろい)顔じゃなくなったら

　真っ赤な車をパパが走らせる

　あたしはアニメの歌のつづきを

　カーステレオと歌いながら

　こんどはもっとじょうずに ママの白粉(おしろい)で

　お化粧しようって ひそかにたくらんでたんだけど

　まずは きょうのおでかけを

　めいっぱい楽しむことがだいじだよね

　もう真っ白じゃなくなったパパの車で

　あたしのおでかけがはじまる

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　エンジンかけて、待機。