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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ただバトルシーンを話したいだけの話

連載作品のバトルシーンを書いてるときこんなシーンを思いついたのですがその作品には合わず、アイデアを捨てるのもあれなので短編に書きました。

いや寄り道しすぎるでしょう自分。

バトルシーンを書いただけなので設定もほどほどで結末も中途半端です。それでバトルのアクシオンを楽しんでもらえれば幸いです。

リジラークト王国では年に一度国に仕える騎士たちによる武道大会が開かれる。その大会は第1騎士団から第4騎士団までの副団長以下が参加し、団長たちが審査する。優勝者にだけが王国最強第1騎士団の団長に挑む権利が与えられる。

そして今回の優勝者、アッシュ・ライアシュラットは第1騎士団団長、レオン・マーシャルとの勝負は始めようとしていた。


「いよいよだな。どうだ、気分は?」

「緊張していますよ。自分の実力ではどれぐらい持つか。観客としてきてきた王族や貴族の方々が満足にアンタの強さを観れるよう精一杯頑張るつもりです」

「は。食えない男だな、お前も。あんな手まで使って俺に万全な状態に挑んでくるやつがただ頑張るとか俺が真に受けるわけないだろう」


第1騎士団団長との勝負はトーナメントが終わった後に30分の休憩を挟んだだけで同日に行われる。普通にトーナメントで戦っていたら団長との勝負の時点で消耗していただろう。だがアッシュはほぼ万全な状態で今レオンの前に立っている。

それは、アッシュが特別に強いから、ではなかった。そう、世間が言う汚い手を使ったのだった。だが、あくまでルールに反することはせず、いわゆるグレイな手段だった。

何故そこまでするのか。彼の本心を見抜くのは数人しかいなかった。


「さあて。見せてもらおうか。お前が俺に勝つための策とやらを」


そしてレオンはその一人であった。そう、アッシュは本気で彼に、歴代最強無敗と謳われる第1騎士団団長、レオン・マーシャルに勝つつもりでいた。レオンは挑発しながら自分の剣を抜いた。


「策とは人聞きが悪い。騎士の決闘です。騎士道に基づいて正々堂々戦いますよ」


アッシュはレオンの挑発をサラッと流して自分の剣を抜いて構えた。開始合図はもうすぐ。しかし、その直前にレオンはアッシュの行動に違和感を覚えた。そう思っているうちに合図は下った。瞬間、数メートル先にあったアッシュの剣の先が目の前に迫ってきた。ほぼ勘と条件反射でレオンはそれをアッシュの攻撃だと認識してふさいだ。

「嘘でしょ。ほぼ勘で今のを躱したのかよ」


アッシュは自分の攻撃の勢いでレオンの立っている場所を通り抜けてレオンの後ろにまで移動したが、その顔には信じられないものを見たばかりにでいて、同時に期待を裏切らない信用しているものを見たかのようにも見える。そして、戦闘モードに入ったからか、口調が本来の平民のしゃべり方に戻った。

一方レオンは驚いていながらも瞬時に何か起きたを理解しようとした。


(恐ろしく疾いというわけじゃなく初動を殺していたのか!それに殺意も最後のしか感じなかった。まるで暗殺の技だ)

「やはり面白いなお前!そしてお前に流れを握られるのがいけないと分かった。これからはずっと俺のターンにさせてもらう!」

「ちッ!」


レオンはすぐに最大の身体強化魔法を自分にかけアッシュに切りかかった。アッシュはぎりぎりで躱すが、息の暇もなくレオンはアッシュを追って次の攻撃を打った。アッシュは押されてながらもどうにか自分の剣でレオンの剣と打ち合った。

そう、アッシュが押されたながら打ち合っていた。観客からはそう見えていた。だが、実際に彼と打ち合っているレオンは違う感想をもっていた。


(まるで手応えがない。この感じは、やはりこいつも同じか!身体強化を眼だけに集中してやがる!)


そう。アッシュはレオンと違って身体強化をスピードとパワー、そういった基礎能力に回さず眼に効率的に集中している。おかげでアッシュはレオンの動きをよく視えるようになった。もちろんパワーとスピードもなくアッシュはレオンに押されていたのは間違いではなかったが、それでもレオンはアッシュに一撃も与えることができなかった。なぜなら実際は彼らは打ち合いなどしていなかった。

受け流し。敵の攻撃をまともに受けず自分の剣で軽く流して躱す。それがアッシュがやっていたことだ。それにはパワーとスピードも必要なかった。必要なのは敵の動きをよく視える目。そして、その攻撃をうまくあしらう技術。


(いわば剣技だ。もちろん他の騎士も、俺も含めて剣技を磨いている。しかし、身体強化魔法もあって魔力が高ければ高いほど力が強くなる。おかげで力で押し倒すような技ばかりが身に着く。全く、やはり嫌になるな。自分の至らない所を見せつけられようなこの感じは!)


そう思いながらもレオンは懐かしく思った。この戦い方を相手にするのはレオンにとって初めてではなかったからだ。だからこそ彼はわかる。アッシュを押さえているのがいまだに事実であることを。


「まだ鍛錬が足りないようだな!確かにお前は俺の剣をよく見えてうまく流せるが、まだまだ無駄な動きは多い!」

「ぐぅおっ!!」


レオンはアッシュの無駄な動きを見抜いてその瞬間に自分の攻撃に一押しを入れた。アッシュの流しきれずその力の勢いにぶっ飛ばされた。それも想定内なのか、アッシュまだ受け身を取ることができたすぐにまた立ち上がった。顔を上げた時にはレオンはもう目の前にいた。今度は完全に流すではなくアッシュはある程度レオンの太刀筋をそらした後に反対側に跳んでレオンとの距離を保った。

何かの攻撃を仕掛けるための考えがあるわけではなく、ただ一息が欲しかった。身体強化魔法を効率的に使っていても、あれだけの攻撃の嵐を受けては身体も精神も消耗しては当然だった。

アッシュとは反対に、レオンはあれだけ暴れても汗もかかずに平然でいた。余裕の笑みを見せた後に、第二の嵐の攻撃を仕掛けに行った。

しばらく試合はその繰り返しであった。アッシュはそのたびにあっちこっちに攻撃を避けているので最終的に土俵になっていた訓練場を一周回ることになった。

それを見て驚いたのはやはり観客たちだった。彼らが思ったよりアッシュはずっと強い男だった。今までの挑戦者よりよく戦っていた。実際彼の前の挑戦者たちはレオンと相手して1分も持つものはいなかった。それにアッシュは、一方的に攻撃されてもいまだに決められていなかった。

息が上がったアッシュ。いまだに汗一つもかいていないレオン。優劣は明確でほとんどはやはりアッシュが負けるのも時間の問題だと思っているが、少数、いわゆる勘のいい人たちはアッシュに実はまだ隠し玉があるんじゃないかと期待していた。

もちろん、レオンもその一人であった。


(ここまでは一方的だが焦りを感じない。ここは、そろそろ次の手を打つか)


レオンは今度は突撃せず別の手でアッシュを攻撃した。彼は左の手で魔法陣を展開し火の玉を撃った。それに対してアッシュも地面に自分の魔力を流し魔法式により土の壁を瞬時に作り上げた。火の玉はその土の壁で防ぐことはできたが、すぐその後にレオンは土の壁を自分の剣で真っ二つにして無防備のアッシュを仕留めようとしたが、壁の後ろに既にアッシュの姿がいなかった。


(壁を作った直後に横に移動したか!?)


そう思ったレオンをすぐに周囲に注意したが思いがけないものが目に見えた。


「なっ…何だこれは!?土の壁がっ…いつの間にこんなに現れたんだ!?」


数多の土の壁が試合場のあっちこっちに立っていた。そう、レオンの周囲への視界を妨害するほどで、結果としてレオンはアッシュの姿を見定めることができなかった。


(まさか今まで逃げ回ったのは試合場全体に土の壁の魔法陣を設置するためだというのか!?さっきの土の壁は目の前の壁だけではなくすべての土の壁の魔法陣を発動させるためだった!?クソっ…まんまとやられた!アッシュは!?奴はどこだ!?魔力察知しても土の壁が邪魔で特定できない!!)


魔法で作り出されたものには創造者の魔力が入っている。アッシュが作り出した数多の土の壁にももちろん彼の魔力はその壁一つ一つの中に存在する。レオンはアッシュの魔力を察知しようとしても彼の魔力は文字通り全方向にある。まさに木を森に隠すような状態だった。

レオンが目に見えて混乱状態になり、アッシュはもちろんその好機を見逃さなかった。レオンの後ろにある土の壁から気配も殺意も消しながらアッシュはレオンに攻撃をしかけた。

レオンはほぼ経験から生まれた勘でそれを防ぐもののアッシュもすぐに別の土の壁に逃げた。レオンが追いかけてもその土の壁に着くときにはアッシュの姿はもういなかった。と思いきや全く別の方向からまたアッシュが気配もなしに襲い掛かった。レオンがそれを防いでアッシュは深追いせず逃げるの繰り返しであった。最初とは真逆の状況でレオンが防御一方であった。


「くっ…!調子に乗るな!!」


レオンはその状況にうんざりして自分の剣に魔力を流して貯めさせ、やがって剣に刻んだ術式によりその魔力は炎になった。そして炎の爆力をもった一振りですべての土の壁を壊した。


「フルスイング・ブラスト!!」


そうレオンがその技を呼んだ。だが、それこそがアッシュの真の狙い。大振りの大技、それを放った直後にレオンには隙ができた。わずかな一瞬だがアッシュにとってはそれが十分。そのために今までの策を練ったのだから。

アッシュはレオンの位置から最も近い土の壁に身を伏せていた。爆撃に当たらないようにできるだけ身体を低くしていた。剣を腰あたりに構えるようにして、片手が剣の柄に、もう片手が鞘を握っていた。アッシュの奥の手、抜刀術。極めれば何もかも斬ることができる一撃必殺の技。元々はこの国の剣術ではなく遠くの国の剣術であったがアッシュは訳あってその術を習得することができた。

しかし、決勝で不覚にも使わせてしまってレオンに知られてしまった切り札。それでもアッシュはどうにかこの切り札を使える状況を作れるかずっと考えて、出来上がったのが今まで行った回りくどいな策。他人に言わせれば騎士らしくない卑怯な戦法。


(まあ、平民どころかスラム出身で親なしのオレの評判なんざ今更だな。ああ、それはどうでもいい。何も持たないオレにぁ鍛えてあげた剣の腕だけは誰にも負けたくねぇ!この最強の”獅子王の騎士“に勝てるさえあれば”溝鼠の騎士“の名も喜んで受け入れてやらぁ!)


想いを込めてアッシュはレオンに向けて渾身の一撃を仕掛けに行った。タイミングは完璧だった。大技を放った直後にレオンの懐に入ることができた。レオンの剣は大きく振りかぶられた状態で防御に到底間に合わなかった。そのはずなのに、アッシュの剣はレオンに届かなかった。


「残念だが俺は今回が抜刀術使いを相手するのは初めてではないんでね。ここだというタイミングをいやというほど身体に染み付いているんだ」


レオンはアッシュの策を見抜いた。右手で振ったはずの剣が、その手にいなかった。弾かれたのだ。集中強化されたレオンの左手に。これでレオンの両手が広がれて身体は文字通りがら空きだがアッシュに一撃を入れる術を失った。

そう、レオンが思った。

それなのに、アッシュはいまだに不敵な笑みを浮かべていた。


(この状況でまだあきれめていないというのか?いや、違う。はったりならともかくこいつはただ士気を保つために笑うタマじゃない!まさか!)


レオンはもう一度自分が弾き飛ばしたものを見た。


(あれは…剣じゃない…鞘、だと!?)


そう、剣を弾いたはずが視界に入ったのは鞘だった。ならば剣はどこにある?

そんなことは決まっている、とレオンはすぐに答えに簡単にたどり着いた。


「本命(剣)は左手か!!」

「アンタが抜刀術使いに慣れているこたぁ承知済みさ。こっちとらあほ師匠に何百回も自慢話聞かされてたんでなァ!!」


そしてアッシュは今度こそ、がら空きになったレオンに左手に逆手で持っていた剣で一撃を入れた。


「ハヅキイットゥ流抜刀術、(イチ)太刀(タチ)・裏型、木蔭(コカゲ)!!」


その一閃は見事にレオンの腹部に入った。試合場の魔法式が反応し、会場にある魔道具ボードにアッシュの名前の隣に線一本が現れた。アッシュが一本を取った証であった。その時に訓練場の観客たちがざわつい始めた。貴族たちも、


「これは何と…」

「まさかあの第1騎士団団長が先に一本取られたとは…」


そして騎士たちも。


「おい。レオン団長が他の団長以外に一本取られたのはいつだった…?」

「そんなこと…ないよ。レオン団長が団長レベル以外の騎士に一本取られたことなんていないんだ」


観客たちが戸惑い中、試合場ではレオンが一本取られながらもダメージを食らっていないようにすぐにアッシュをぶっ飛ばした。抜刀術は敵に叩くではなく斬るための技であったためすべてのダメージが魔法式により相殺された。そうではないと、レオンは今真っ二つになっていただろう。

アッシュももちろんそれを承知ですぐにレオンからの反撃が来ると想定して、完全に防ぐことができなくても一本を取られないように受け身を取りダメージを最小限にした。それでもさすがは最強騎士のレオン、その一撃でアッシュが今まで以上のダメージを負ってボロボロになった。まともに受けたら戦闘不能になってアッシュの負けになったのだろう。

だが、アッシュは立ち上がった。そして、不敵な笑みを浮かべながら彼は差し指だけを立てて手を高く上げた。


「まずはぁ…一本っ…」


そして彼は残りの二本も取ると宣言した。それ見て聞いた第4騎士団の団員達は一気に盛り上がった。


「よっしゃー!行け副団長!!」

「オレたちがただの芋騎士じゃないことをあいつらに見せつけてくだせぇ!!」

「斬れー!斬れー!ア・ッ・シュ!」

「第4騎士団は最強だ!!」


そのあまりにも熱い声援に他の観客たち、とくに貴族たちはぞっとした。彼らにとっては馴染まない光景だった。武道大会においても王家が主催行事にはマナーを守って静かに観察するのが普通だった。だけど、その者たちの気持ちも少し分かっていた。最強無敗と謳わられたレオンが今初めて一本を取られた。卑劣な策の結果であっても、それも自分の身体をボロボロにまで取った一本なのに、アッシュは今も立っていて不敵に笑っている。次の一本も取るまでと宣言した。

心の中ではだれでも見たいと思っているだろう。最強が覆される瞬間を。アッシュにはそれができると信じさせる何かを持っていた。彼と同じの所属の団員なら尚更。声援を送るがことができなくても貴族たちは試合が始める前と違う心持ちで勝負の行方を見ることになった。

その中で面白くないと思っていた者もいた。第1騎士団の団員達だった。最強騎士であったレオン団長は彼らの誇り。彼が負ける姿など見たくなかった。だかこそ貴族の出であっても彼らだけがその声援に対抗することができた。


「レオン団長!たかが一本です!まだ負けていない!」

「頑張ってください!あんな芋騎士団の溝鼠の騎士など蹴散らせ!」


こうして、初めたころとは違い会場中が盛り上がることになった。その状況の下で、レオンとアッシュは睨み合っていた。


「やれやれ。騒がしくなったんじゃないか。どうしてくれるんだ。王家の御前だぞ。あいつならもっと静かの方が好きだったのに」

「勘違いしているようだが、アンタの相手はあほ師匠じゃなくオレだァ。つまりアンタは一人じゃなく二人に負けることになるんだよ。それに、オレはこの方が萌えるぜ」

「フン。ぬかせ!」


レオンは試合を再開しようとアッシュに目掛けて突撃した。今度はアッシュはただ受けることだけではなくアッシュもまたレオンの方に突撃した。剣と剣の打ち合い。レオンは相変わらず力任せで攻撃を繰り返し圧倒的なパワーとスピードでねじ伏せようとしていて、一方アッシュは受け流ししながら小さな隙を突きようとしていた。


「うおおあああああ!!!」

「はあああああああ!!!」


お互いに負けまいと雄叫びを出し圧を掛け合った。観客たちは、第4騎士団はアッシュに、第1騎士団はレオンに声援を、そして他はただ目の前の勝負を息をのみながら見守って、いや、見惚れていた。最早誰もアッシュをただレオンの力を見せるための当て馬だと思っていなかった。むしろ、少数だが、もしやだと思っていた者もいた。

しばらく攻防を繰り返したレオンとアッシュ。やがてアッシュがレオンの圧倒的力に押されてバランスを崩した。レオンはそれを見逃さず止めの一撃を入れようとするがアッシュは地面に魔法陣を展開しようとした。


「また壁か!?だがもう遅い!!」


二人の間に壁が立つ前に確実に先に間合いに入る。そう確信したレオンは止めずにアッシュに向かっていった。その瞬間、アッシュはまた不敵な笑みを浮かべていた。


「その言葉、そのまま返すぜ」


レオンが間合いに入った途端、魔法陣が展開した。レオンの真下に。瞬時に土の壁が立ち上がり、その勢いでレオンの身体が宙を舞うことになった。これにはレオンだけではなく観客たちも驚いていた。土の壁を防御のためではなく敵を飛ばすために使うなんて異例すぎていたからだ。そのアッシュの発想力に誰もが言葉を失っていた。


(またしてもやられたか。だが所詮はただ止めを躱すための時間稼ぎ。このまま着陸すれば問題はなっ…!!)


空に身体が浮いている間は自由に動けないレオン、それでも視線はアッシュを見定めていた。そして彼は見た。これはただの時間稼ぎの策ではないと。ここまでは計算の内だと。なぜなら下にいるアッシュは()()()()()()()。そして、彼の剣が鞘に()()()()()()。それを見た瞬間レオンは次に何が来るか察知した。そしてすぐに自分の剣に魔力を流した。だが、もちろんアッシュはレオンの準備を待たずにとどめの技を放った。


「ハヅキイットウ流抜刀術、(ヨン)太刀(タチ)疾風(ハヤテ)


アッシュは抜刀の斬撃を放ち、空を切る。観客たちはアッシュがやったことをわからなかった。剣を振っても彼らの目には何も起こらなかったからだ。しかしレオンは知っている。だから彼は剣にたまった魔力をすぐには放った。


「エアヒート!!」


周囲の空気に熱を上げて何かに触れる瞬間に爆発させる技。何もないはずの空にその空気が爆発した。それはアッシュが放った、目に見えない風の刃による接触だった。もちろん、爆発の近くにいたレオンは無事に済むこともなく、爆破を受けて凄い速さで地面に落ちることになった。

これは本当にやられたのか。会場がしんと静かになった。アッシュもただその場で立って様子を見ていた。そして、煙から影が見えた。レオンが立っていた。傷一つもなく、などではなかったがその立ち姿はいまだに強圧を感じる。それを見た観客たちは再び声を上げた。アッシュはただ静かに笑っていた。


「それでこそだぁ。だからお前はぁ、全身全霊をもって倒す甲斐がある」

「俺も認識を改めよう。お前はあいつとは確かに違う。そしてあいつと同じで、負けたくない相手だ」


闘いを経て、お互いを尊敬しあう二人。お互いの強さを認めて今度こそ勝負に、真剣勝負に挑む二人。結果はもうどうだっていい。誰が勝つか誰が負けるかもう関係ない。ただこの瞬間を全力で、全身全霊をかけて、二人が挑み、観客たちが二人を応援しながら見届ける。どちらの魂が燃え尽きるまで、二人はまた剣を、魂をぶつかり合っていた。


その後、二人の勝負の行方がどうなるか、また次の機会に話そう。今はただ、あの勝負の結果という事実をあの会場にいる者たちに秘めておくことにしよう。もしまた縁があったら、その時でも話の続きをしよう。ではまた。


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