初恋の幼馴染を諦めたい
二番煎じすぎるとは思いますが。
碧と玲都のジレジレをどうぞお楽しみください!
私、木下碧の幼馴染、橘玲都はモテる。
成績は学年トップで運動神経も抜群。
女子にも優しいとくれば女子に大人気だろう。
幼い頃はイタズラ好きのわんぱく坊主だった。
だが、いつからか玲都は私を避け、勉強に運動と努力をし続けた。
それが私には寂しいと感じた時にはもうすでに、玲都に恋をしていたのだ。
それを知った時には胸を掻きむしられるようだった。
「どうしたの、碧?」
声を掛けてくれたのは親友である宮下麻里香。
名前に恥じない大和撫子だ。
玲都とお似合いと言われるほど。
二人とも双方に興味がないと言っているのを聞いた時にはホッとしたものだ。
「ん?何でもないよ」
「それならいいけど」
この親友は察しがいいので何か気づいたのかもしれない。
ただ、優しい性格なので何も突っ込んでこない。
その優しさが今はとても嬉しい。
「ねぇ碧、橘君がこっち見てるよ。やっぱり碧のこと好きなんじゃない?」
麻里香は何かと私と玲都をくっつけたがる。
私は玲都に嫌われてるのに。
そう言うと、
「えっ、何でそう思うの?」
と首を傾げられる。
だって、目が合うと玲都は私を親の敵でも見るように睨むからだ。
これで好かれていると言う麻里香はちょっとおかしい。
さて、終わった。ほぅと息をつく。
文化祭で私は大道具係になった。
ものづくりが好きな私にとってこれほど適した係はないだろう。
ちなみに、私のクラスではロミオとジュリエットをする。
ロミオは玲都、ジュリエットは麻里香でそれはそれはお似合いだったものだ。
二人の演技を見るととても悲しくなる。
もう吹っ切れたはずなんだけどな。
そういうことで、大道具を作ることで気を紛らわせようとしたんだけど終わってしまった…
いや、期限までに作り終えることは大切なんだけどね。
ボーっとしていると、
ガタッ
「えっ、何?」
今はもう誰も学校に残っていないはずだ。
かなり遅い時間だから。先生かな?
「碧?」
えっ、嘘!?
「まだ残っていたの?こんな遅い時間まで」
こちらに来たのは何と玲都だった。
「えっ、あっ、うん。
もう少しで終わるから全部終わらせてしまおうと思って」
「相変わらずだね」
玲都が苦笑する。
こんな笑顔を見たのはいつぶりだろう。
「あの、どうしてここに?」
「宮下に『碧がまだ残っているはずだから送ってけ』って言われたから。まさかまだ残っているなんて思わなかったんだけど」
そっか、麻里香が。
そう思っていたらハッとした。
玲都が怒っていると思って瞬時に謝る。
「ごめん、私のことは気にしなくていいから帰っていいよ」
「ああ、怒ってないから気にしないで。それにもう暗いし危ないから送ってくよ。ほら準備して」
「えっ、でも」
「いいからいいから」
なんだか押し切られた気もするが、玲都はこうと決めたら頑固だから引いてくれないだろうな。
しょうがない!
「分かった」
それにしてもそんなに顔に出ていたのかな?
気をつけないと!
き・ま・ず・い!!
送ってくれているのはいいんだけどね?
いやどうした?
何か喋ってよ~
アイコンタクトしても何も言わない。
むぅこうなったら、
「ねぇ玲都、今日はありがとう」
自分から話しかけるしかないだろう!
「ん?いや、どういたしまして」
いや、そっけなさすぎでしょ!
女子に優しい橘君はどこに行ったの?
そうこうしていると、私の家についた。
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日」
これでもう気まずくない、そう思ってホッとした。
「おはよう、碧」
麻里香に会った。
挨拶を返すと昨日のことが浮かぶ。
「ねぇ麻里香、私昨日玲都に送ってもらわなくても良かったと思うの。
玲都、忙しいのに送ってもらってちょっと申し訳なかったんだけど」
「橘君が了承したからいいと思ったのよ。
それに、申し訳ないと思ったのなら断れば良かったんじゃない?」
それはそうなのだが、玲都は変なところで頑固だからと言っていると、
「ほら、碧は橘君のことよく知ってるじゃない」
それは幼馴染だから、ね?
そして文化祭本番。麻里香にエールを送り、私は裏から見る予定。
ん?なんだか騒がしいな。
「宮下さん、コロナで休みだって」
「えっ、どうすんの!?」
えっ麻里香が休み?誰か代役は…
あぁ用意してない!
どうしよう!?
「ちょっといいかな、皆」
そこにいたのは玲都だった。
「提案なんだけど、ジュリエット役を木下さんにしたいと思っているんだ」
は?私?
他の人もそう思ったのか、
「何で木下さん?」
と言う声が多い。
玲都いわく、私ならジュリエット役の全てのセリフを覚えており、演技も上手だかららしい。
うっ、あの時のこと、今でも覚えているんだ。
やらないという選択肢はないよね…
「木下さん、どうして全てのセリフを覚えているの?」
うん、くると思ったこの質問!
実は中一でジュリエット役をしたのだ。
その時に紙がぐちゃぐちゃになるまで覚えたせいか今もなおセリフを覚えている。
そう話すと、さらに
「緊急事態だから」
と玲都が言うと皆が納得してくれた。
そしてドレスを私用に直してくれた。
本当に協力してくれてありがとう。
終わったらお礼を言おう。
「緊張してる?」
玲都にそう聞かれた。そりゃあね。
結果、劇は大成功だった。
「木下さん良かったよ〜」
と皆が口々に言ってくれて私もホッとしたものだ。
「碧、今日はありがとう。引き受けてくれて」
玲都が甘い笑みを浮かべる。
えっと、先日そっけなかった玲都はどこにいったの?
あ、皆の前だから『女子に優しい橘君』を演じているのかな?
頭がぐるぐるする~
そう思っていると、
「ねぇ碧、付き合って?」
と言われた。
は!?えっとどういうこと?
「碧、答えて?」
うわぁこれは答えるまで離してくれないやつだ。
しかも返事はYESのみ。しょうがない!
「うん、これからよろしく」
そう答えるとうぉー!と周りから声がする。
えっ待って、皆がいるの忘れてたよ!
しかもそこの雄叫びをあげている男子、どうしたの?
そう聞きたいけど、目の前の男に目が離せない。
「うんよろしくね、碧」
「あの、私のこと好きなの、玲都?」
「あれ、冗談だと思っている?」
うん、正直冗談にしか聞こえなかった。
「へえ」
壮絶な色気を垂れ流しつつ玲都が言う。
「俺、昔から碧のこと好きだったの。で、碧に見合う男になるためだけに努力し続けたんだけど」
そうだったんだ。じゃあ、
「何で私のこと睨んでいたの?嫌われてると思ってたんだよ?」
「まじかよ。本当は好きで好きでたまらなかっんだ」
えっ、う、嬉しい
「本当に俺と付き合ってくれる?」
そう言った玲都の耳は真っ赤で笑ってしまった。
「ふふっ」
「なんだよ!」
真っ赤な顔で玲都が言った。
その拗ねた表情に可愛らしいさと懐かしさを覚えた。
そういえば昔もこんな表情していたなと思い出す。
「うん!勿論付き合うよ」
「ありがとう!!」
玲都がここ数年で一番の笑顔を浮かべた、気がする。
その後、女子に大人気な玲都と平凡な私が付き合ったと皆が知れば反発が大きいと思ったのだが、結構皆には好意的に受け止められている。
それは、玲都の私を見る目が恋をしている男のそれにしか見えなかったらしいからと、
「橘君ってクラス中の男子に『木下さんは俺のもの』発言したらしいよ」
と噂が流れているからだ。周りの男子にそれとなく聞いてみるとどうやら本当らしい。
おい玲都、何やってんだ、君は?
好きとはいえ、恥ずかしいので後で玲都に一発入れておこう。
そう思った私だった。
麻里香「文化祭休んじゃったけど、二人が付きあえたの
なら良かった〜 二人とも両片想いで気づいて
いなかったのは面白かったけど、結果オーライ
だよね。劇も大盛況だったみたいだし」