芳山教授の日々道楽「青い鳥」
芳山教授の日々道楽「青い鳥」
天気がいい、
気持ちのいい朝だ。
秋の空が目に染みる。
そんな日は、
散歩だ!
最近、運動不足だった。研究室に閉じこもり、カップ麺やらレトルト食品やら、不健康な食品ばかり食べていた。
食っちゃ研究、食っちゃ研究の生活。
だいぶ身体がなまっている。
今日は、絶好の散歩日和!
散歩が趣味の私は、あちこち散歩する。たまに遠出もするが、最近、ほぼ近間ばかり。
今日は、冒険しよう!
疲れた時は、バスで帰ってくればいい。
今日は少し遠くまで行ってみよう、知らない町まで〜♫行ってみよう。
そんな気分だ。
歩く、
歩く、
歩く、
休む。
歩く、
調子が出てきたぞ、
腕を振る、胸を張る、脚を上げる。
軽快に足が進む。
心も弾む。
身体の歪みも取れてきた。
薄ら汗もかいてきた。そよ風が気持ちいい。
遠くで、鳥の鳴き声が聞こえた。
何の鳥だろう?
清々しい、充実した時間、
ああ、なんて健康的なんだ。人生の至福を感じる。
ちょっと休憩、深呼吸をする。
視界に何か見えた。
何だ?
見上げる。
とんがり帽子?
青い西洋瓦の円錐状の屋根が見えた。
変わった建物だ。
近くまで行ってみる。
アーチ型の窓、飛び出たエントツ、ウロコ状の壁、異国情緒たっぷりの建築物。
看板がある。
「純喫茶店 青い鳥」
喫茶店か、
最近、行ってないな。
ちょっと寄り道でもしていくか、
私は、散歩の疲れを癒すため、喫茶店のドアを開けた。
カラン、
「ようこそここへ 、クック クック、わたしの青い鳥〜♫」歌声。
何だ?
「恋をした〜心にとまります〜♫」
何だ?
「そよ風吹いて 、クック クック、♫」
店員が席に案内する。
「便りがとどけられ〜♫」メニュー表を渡される。
ああ!!そういう店なのか、
ここは、コンセプトカフェという、メイド喫茶のような、舞台が設定された喫茶店なんだ。秋葉原には、忍者喫茶やアニメ喫茶があるらしいが、なるほど、歌世界の喫茶店!
「誰よりも〜しあわせ感じます〜♫」
店員が、お冷とお絞りを持って来た。
「ありがとう」
水を一口飲む。
「美味い!」よく冷えている。しあわせを感じた。
一息して店内を見回した。意表を突かれたが、落ち着いた店だ。ごく普通のレトロな喫茶店。
もう一口、水を飲む。
「美味い!」
おっ、
突然、尿意をもようしてきた。
「すいません、ちょっとトイレをお借りします」カタ、
「どうぞ行かないで、このままずっと〜♫」
?
「わ〜たしのこの胸で、しあわせ歌っていてね〜♫」
しあわせ?トイレでしあわせ?
指を指している。左端がトイレなのか、
私は、不思議に思いつつもトイレに入った。
「クック クック クッククック、青い鳥〜♫」
トイレの中にも歌声が聞こえてきた。
「クック クック クッククック、青い鳥〜♫」
変わった喫茶店だ!
トイレから出る。
さて、何にするかな、メニュー表を見る。
コーヒー、紅茶、レモンティー…
「ようこそここへ クック クック、わたしの青い鳥〜♫」
?
店員が指を指している。
ああ、「セットメニュー青い鳥」というのがあるのか、店長お勧めと書いてある。
「夢のような〜心に、誘います〜♫」
夢のような、そんなに美味いのか。
「くちづけされた クック クック、木ノ実のなる下は、天国の花園の香りです〜♫」
紅茶+木の実ふんだんのシフォンケーキ。
そんなに言うなら、それにしよう。
「セットメニュー青い鳥、一つ下さい」
OKマーク、
店員は、手を羽ばたきながらカウンターに向かった。
「どうぞ飛ばないで、この手のひらで〜しあわせ抱きしめて〜♫」
紅茶を作りながらも歌っている。
不思議な雰囲気だ。私も、つい口ずさんでしまいそうだ。
「わたしを見つめていてね〜♫」
思わず店長を見つめてしまう。
「クック クック クッククック、青い鳥〜♫」
出来上がった。
「セットメニュー青い鳥!」
美味い、
紅茶も素晴らしいが、このシフォンケーキは絶品だ!
木の実の香りといい、しっとりとした食感、ブランデーが効いた生地の旨味、
素晴らしい、まさに天国の花園の香り!
店長お勧めのことはある。
完食、
「ごちそうさまでした」
「では、お勘定を」
レジに行く。
「どうぞ行かないで、このままずっと〜♫」
?
「わたしのこの胸で、しあわせ歌っていてね〜♫」(振り付け)
「いや、私は散歩の途中で、もう家にかえらなければ、」
「クッククック クック クック、青い鳥〜♫」
「また、来ますよ」汗。
「クッククック クック クック、青い鳥〜♫」
「必ず来ますよ」汗。
「クッククック クック クック、青い鳥〜♫」
「絶対、来ますよ」汗。
「クッククック クック クック、青い鳥〜♫」
「わかりました、来週来ます!」汗。
カラン、
私は喫茶店を後にした。
手を振る店長と店員。
不思議な店だった。
耳に残るあの歌。誰だっけ、歌手は?
振り返る。
店長と店員が指で上を指していた。
上?
青い屋根の上に鳥がいた。
その鳥も、
青い鳥だった…